【取材】LayerXが元DMM CTO松本勇気氏を代表取締役CTOに選任
株式会社LayerXが2021年3月1日開催の株主総会及び取締役会において、代表取締役CTOとして松本勇気氏の選任を決議したことを発表した。 これによりLayerXの代表取締役については福島良典と松本勇気の共同代表体制で、経営をリードしていくことになる。
LayerXは現在「(1)LayerX NVOICEを代表とするDX事業、(2)三井物産デジタル・アセットマネジメント株式会社の事業運営を行うMDM事業、(3)ブロックチェーンや秘匿化技術の研究開発組織LayerX Labs」の3つを推進している。松本氏はMDM事業部及びLayerX Labsを管掌する。
そしてこれまでCTOを務めていた榎本悠介氏は取締役としてDX事業部を管掌する。
あたらしい経済編集部は、LayerX取締役 榎本悠介氏とLayerX代表取締役CTO 松本勇気氏へ取材を行った。
LayerX取締役 榎本 悠介氏へ取材
ーLayerX CTOとしての振り返り、そして改めてDX事業部管轄としての抱負を教えてください。
榎本悠介:元を辿ればLayerXの前進となるGunosy新規事業開発室としてチームを立上げ、LayerX CTOとしては、複数の事業の立上げと、採用や広報、組織作りなど幅広い動きをしていました。
様々な活動をしてきましたが、今回松本さんにCTOをお渡しすることで、最も自分自身バリューを発揮できる事業立上げ、特にプロダクト開発のところにコミットすることにしました。
DX事業部として、LayerX INVOICE(SaaS)を提供し、経理業務を足がかりとして日本のデジタル化を加速させていきます。松本さんの盤石なサポートのもと、これまで以上にプロダクトに集中し、最高のサービスを作っていきます!
LayerX代表取締役CTO松本勇気氏へ取材
ーDMM.com CTOとして在籍されていた約3年間の間に、ブロックチェーン業界はどのように変化したとお考えでしょうか。
松本勇気(以下:松本):エンタープライズ領域の進展は大きく、具体的に使えること、使えないことが明確に見えつつある状況かと思います。既存DBと並べて比較するミドルウェアとして扱える程度になりつつあるのかなと思います。
ただ、逆に言えば、これ一つで何もかも解決する、の世界ではなくなっており、ソフトウェアアーキテクチャの一部としてどう組み込むことが可能である開発組織が必要となっています。
さらに、複数のプレーヤーを巻き込んで作ることが重要なシステムとなるため、技術よりもその外側のコンソーシアム立ち上げなどアライアンスの推進能力が重要ですね。
一方で、Blockchainへの熱狂を生んだBitcoinやDecentralized周辺については当初考えていた夢の非中央集権から現在はDe−Fiを始めとした現実的な金融ユースケースにフォーカスして物事が進んでいるように思います。
より広く適用するには、DecentralizedなBlockchainにより性能・ユーザービリティ・セキュリティなどの改善が必要だという状況はいまだ変わりません。
それに向けてEthereum2.0のスタートやRollup技術などの進化は非常にポジティブなのですが、まだまだ実験的であり、実運用に向けては更に何年もの年月が必要なのだろうなと考えています。
ー私は公共性と秘匿性のうまく融合する社会が重要だと考えていますが、松本さんが理想とする社会はどのような社会でしょうか。
松本:公共領域もますますソフトウェア化・データ化が進む社会において、これからの5年でプライバシーが非常に重要なトピックになっていきます。
自然と情報を預け、それが様々な組織間で適切な管理をもって運用される上で秘匿化技術とBlockchainが重要なピースとなります。計算機として原理的に安心・安全に頼れる公共領域のシステムを作り上げていくことでデジタル庁の目指すところの「誰一人取り残さないデジタル社会」が生み出されていくのではないかと思います。
最終的には、秘匿化技術やBlockchain、その他ソフトウェア技術を通じて多くの行政的仕組みを滑らかにつなげ効率化し、人がより幸福を追求しやすい社会を目指すためにエネルギーを使えるようになることが、超少子高齢化社会を迎える日本にとって重要だと考えています。
(images:iStocks/4×6・pgraphis)