JCBとKeychainがブロックチェーンを活用したIoT向け決済の実証実験を開始
株式会社ジェーシービー(JCB)が合同会社Keychainと、Machine to Machine(M2M)領域におけるマイクロペイメント向け決済インフラに関するソリューションを開発し、実証実験を開始したことを1月19日発表した。
なおこのソリューションにはKeychainが提供する、ブロックチェーン上でデータセキュリティとアイデンティティ基盤を実装できるアプリケーション開発フレームワーク「Keychain Core」を使用しているとのこと。
リリースによると、5G普及やモノのインターネットであるInternet of Things(IoT)技術の進展により、今後モノとモノがヒトを介さず自動的に契約執行や決済をおこなうMachine to Machine (M2M)の世界が到来することが予見されているという。JCBとKeychainは円滑な決済機能の提供により、M2M領域でビジネス化を検討する様々な事業者が自身のサービスに対して課金しマネタイズできるソリューションを実現することで、M2Mサービス拡大への貢献を目指すとのことだ。
なおこのソリューションは両社共同で特許の出願(特願2021-000571)を行っており、今後は技術検証ならびに具体的なユースケースの検討を進めたうえで、2021年中にプロトタイプモデルによる本番検証の実施、2022年以降の実用化を目指すとのことだ。
決済インフラソリューションに取り入れた3つの考え
今回開発したマイクロペイメント向け決済インフラに関するソリューションは、以下3つの考えを取り入れ開発したとのことです。
1.デバイスのアイデンティティと帰責者のアイデンティティの紐づけ
・ヒトが意志表示を行う従来の決済モデルの場合、そのヒトを識別することで取引承認をおこないます。一方でデバイスの場合、そのデバイスに責任を有するもの(帰責者)を特定し、デバイスと帰責者の関係性を把握したうえで、デバイスによる取引を許容することが重要な社会課題になると考えます。
・デバイスのアイデンティティと帰責者のアイデンティティとをそれぞれ特定し、適切な確認のうえで紐づけを行っていくことを実現します。
2.取引をオフライン環境含めエッジ(ネットワーク端末)側で行うインフラの構築
・ヒトが意志表示を行う従来からの決済モデルの場合、取引を起動するための手段(例えばクレジットカードや各種ID情報)はその数量が限定されていますが、デバイスは1人のヒトや1つの企業に対して、膨大な数となります。一方、デバイス数が膨大となるなかで、個人や企業の取引に使える金額(たとえば可処分所得)は大きくは変わらないことが想定されます。その場合、取引件数が膨大になる一方で、取引単価は低額になっていくことが想定されます。
・また、ヒトが行う決済に比べて、デバイスが行うM2Mでの取引はより即時性が求められる可能性が高くなります(たとえば自動運転車やドローンなどが移動しながら自動契約を行っていく場合)。
・高頻度・超低額かつ即時性を求められる決済インフラとして、センターサーバーやクラウド層での取引承認処理を行うのではなく、デバイス間での処理やフォグ(クラウドと物理デバイスの間を取り持つシステム)層での取引承認処理を実現します。
3.取引履歴を把握し、従来環境での決済に流し込むインフラの構築
・M2M領域では、デバイスの喪失や通信環境からの断絶といった制約が一定程度発生することが想定されます。分散台帳技術を活用し、取引を適宜分散台帳上に記録していくことにより、取引履歴を安全に維持するインフラの構築を行います。
・また、M2M取引履歴を項番1で構築される帰責者のアイデンティティに含まれる決済情報に連携させることで、M2Mに関わる決済を従来環境での決済インフラに流し込むことを想定しています。
(images:iStock/m_pavlov・dalebor)