ブロックチェーン・暗号資産(仮想通貨)業界を牽引する35人の「2021年の展望」

インフォバーン CVO小林弘人

昨年はコロナ禍の状況下にも関わらず、海外のWeb3関連スタートアップが順調に出資を集めていました。この分野はDeFiだけではなく、HRテックやコンプライアンス管理ツールなども含まれます。また、分散型技術の社会実装に追い風が吹いています。

昨年3月にEUが発表した新サーキュラー・エコノミー(循環型経済)行動計画は、2030年までに、EU域内のほぼ全業種に持続可能な産業への転換を求めています。

そこでは、エシカル・サプライチェーンにおける希少金属や紛争鉱物の追跡と記録や、自然エネルギーの自動売買での活用が見込まれます。加えて、ID発行・運用や投票などの仕組みを管理するガヴテック/シビテック領域も注目しています。

株式会社インフォバーン 

クリプタクト 代表取締役 斎藤岳

仮想通貨の本質的価値の議論にユースケースは重要だが、ビットコインに関してはまるで金のように、様々な背景から明確なユースケースとは切り離して1つの資産として受け入れられつつある。

逆にアルトコインはユースケースを示すことでビットコインとは異なる価値を提示し受け入れられる可能性があるのが2021年だろう。

今年注目しているのは以下2点。

・ビットコインが、年金・保険などの伝統的機関投資家から、オルタナティブ資産として受け入れられるかどうか。従来のビットコイン投資家とは財布の大きさがはるかに異なる彼らが、資産として組み入れるか否かは重要。

・既存の金融から脱却した様々な取引形態や創造性のあるプロダクト、例えば2020年に拡大したDeFiなど、アルトコインを中心にこれらがさらに発展し、どう既存の金融システムに受け入れられるか。

株式会社クリプタクト

慶應義塾大学経済学部教授  坂井豊貴

昨年ビットコインは「価値の保存」(store of value)をするデジタルゴールドとして、その地位を相当確立しました。今年はその地位がより広く世間に認められると予想しています。

いま時価総額はリアルゴールドが1,200兆円ほどで、デジタルゴールドは65兆円ほどです。伸びしろはどれほどでしょうか。 「価値の保存」として重要なのは腐らないことと、ブランドとして広い認知を得ることです。ビットコインは腐りようがなく、また誰もが知るスーパーブランドとしてその名が通っています。

私は買い煽るつもりは全くないし、価格の話ばかりするのは下品かもしれないとは思います。でも、もっと世間の多くの人が、この話を分かってくれてもよいのにと思っています。

坂井豊貴

スタートバーン 代表取締役/現代美術家 施井泰平

2020年はDeFiの可能性が花開いた反面、ガス代の高騰というマイナス面、まさにコインの表裏を体験するような年でした。時にはパブリックチェーンを使うことの是非にも向き合いましたが、2021年は改めてパブリックチェーンの可能性を追求する年にしたいと気持ちを新たにしております。

一方、ブロックチェーン普及のための「リテラシーの壁」を超えるべく、今年は方方で有名コンテンツホルダーとの提携が加速することが予想されます。次に繋がるよう弊社としてもあの手この手で工夫をこらしながら、今年が「ブロックチェーンのリテラシーが高まった元年」になるよう尽力していく所存です。どうぞよろしくお願いいたします。

スタートバーン株式会社

コンセンサス・ベイス 代表取締役 志茂 博

【注目の動き】アメリカで銀行業とステーブルコインを使ったビジネスが動き始める。 
【エンタープライズ】日本でも2020年から実運用が始まり、企業間プロジェクトでの本番稼働が今年も増える。 
【DeFi】DeFiは、今年も新しいアイディアが多く試され激動の状況変化をする。
【NFT】新しいNFT発行や発行支援企業が出てくる。全体流通も増える。
【STO】活用の模索が行わるが、大規模実用化には時間がかかりそう。
【少し進展】 L2スケーラビリティ、クロスチェーン。
【実用化までまだ時間がかかりそう】 CBDC、DID/SSI、Lightning Network。

コンセンサス・ベイス株式会社

chaintope 代表取締役社長 正田英樹

昨年はコロナ禍で苦しい中でもブロックチェーン企業各社は研究開発を重ね実装可能なレベルに技術基盤を高めて来ました。本年はブロックチェーンの実証、そして実装が加速して行きます。

特に政府も力を入れている「グリーンとデジタル」の領域で新たに活用が進んで行くと思われます。chaintopeもCO2削減の見える化と共に環境価値として証書化、また行政のデジタル化において、住民票などの行政証書の電子発行の認証局としてブロックチェーン活用をして参ります。

また世界的話題になっております大手プラットフォーマーの個人情報囲い込みに対してブロックチェーンが個人のデータ管理権限に新たな流れを作る可能性が高まって来ます。

株式会社chaintope

Payward Asia 代表取締役社長 千野剛司

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、医療機関をはじめ、仕事で日夜奮闘されている方々に敬意と感謝の意を表します。人々は今、テクノロジーによってコロナ禍を乗り越えようとしています。

従来「目に見えるモノ」にしか信頼を置けなかった分野でも「デジタル」が急速に広まっています。最近のビットコインの高騰もデジタル化の流れと無縁ではないでしょう。

2021年は、人々が目に見えない仮想通貨に更なる価値を見出す年になりそうです。

ただ、仮想通貨の目新しさと値上がりにだけ関心が集まった2017年のバブルから環境は変わり、今後は、仮想通貨の本質的価値を理解し、目利き能力に長けた取引所の役割がより一層重要になるのではないでしょうか。

Payward Asia株式会社

ディーカレット 代表取締役社長 時田一広

昨年末から暗号資産市場は大きく盛り上がっていますが、機関投資家が投資を続けるためには米国ペイパル社の暗号資産決済参入のような実需で使える機会を増やすユーティリティ性の拡大が重要と考えられ、暗号資産のユーティリティ性の拡大と法定通貨建てのトークンや金融資産のトークン化による需要の拡大も市場の動きに大きく影響するでしょう。

当社では、昨年よりデジタル通貨の実現に向け、各業界を代表する企業約40社と共にデジタル通貨フォーラムを設立し、各業界の民間発行デジタル通貨のユースケースを実証する準備に入っています。

2021年はブロックチェーン技術で実現するトークンというイノベーションが世間に認知される年になると思います。

株式会社ディーカレット

アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー 長瀨 威志

2020年に引き続き「規制」が鍵となるが、海外の規制動向がより重要な一年になる。海外もAML/CFTを中心に厳格化は避けられないが、米国を中心に機関投資家が参入しやすい規制枠組みを目指しているように思われる。

一方で日本は信託銀行等による暗号資産カストディを禁止するなど、国際的な動向からするとむしろ規制後進国に後退しており、税制を含め規制の見直しに向けた議論が必要。

他方、金融規制に抵触しづらいNFT関係は大きく成長する可能性がある。ICO/IEOも会計ルールが整備されれば年内に実施案件が出てくるだろう。

デジタル証券(STO)は私法上の整理や流通市場の整備など課題もあるが、着実に案件が積み重なっていくと思われる。

アンダーソン・毛利・友常法律事務所

ToyCash 代表取締役 日置玲於奈

2020年は、イーサリアムがスケーリング技術・アプリケーション・ビジネス・証券規制におけるポジション、どれにおいても識者の予想を遥かに上回る進展をすることになった。また、Bitcoinも価格や価値の点で世界的に認められた。2021年はトレンドの継続になるだろうと考えられる。

しかしながら、コロナ禍や政治情勢の下、自由主義的な価値が大きく毀損されていく中、イーサリアムのアプリケーションレイヤーがどれほど自由な空間であり続けられるか注意を払うべきだと考える。

故に2021年の新しいトレンドとしてDIDや暗号学的KYCに注目しており、技術的にはTEE/TPM、ゼロ知識証明、FIDO2を追っている。

株式会社ToyCash

ビットコイナー反省会主宰 東晃慈

ビットコインに関しては機関投資家の本格的な参入が去年から始まり、今年も継続する。これはもはや明らかだが、今年の年始からいよいよ一般投資家も遅れて入ってきて、17年のような大きな相場が来ると見ている。

同時に主役は機関投資家になってきているのは規制強化などの文脈にもつながり、水面下で業界の分裂や意見の食い違いが始まるのも予想出来る。 市場的にはビットコイン中心の相場になると思うが、それ以外ではあまり注目されていないが大きな影響力を持つ可能性があるのはDiem(旧Libra)だと思っている。

1年半ほど前に構想が発表された時に騒いでいた人たちはなぜか逆に静かになってしまった気がするが、Diemのユーザー規模や政治力なども考えると、本当にローンチした時のビットコインやイーサリアムなどへの影響は小さくはないと思う。

特にDiemが外部開発者に比較的オープンなプラットフォームとしてローンチした場合、ビットコインの送金ユースケースやイーサリアムのNFTやゲームの利用などは一部こちらに吸い取られるし、規制の動きもDiemやCBDC次第の部分もあるので、実は自分は案外Diemに注目している。

市場が盛り上がる以外では、規制がどんどん強化されるだけで新しい意外な展開は特にない、退屈な年になるかもしれない。

ビットコイナー反省会

HashHub CEO 平野淳也

2021年は引き続きDeFiの年になりますが、DeFiの成熟度も次のレベルへと向かうはずです。 現在、DeFIはインフラストラクチャーは凄まじい早さで成熟していますが、そこでやり取りされている資金の多くは投機マネーです。

しかし投機マネーでインフラストラクチャーが成熟しているのです。 ネクストステップはその成熟したインフラストラクチャーに一般的な企業や金融機関が注目するフェーズです。

DeFiと従来金融が少しずつ交わり始めます。 同時にエンタープライズがパブリックブロックチェーンに関心を向けることになるでしょう。パブリックブロックチェーンは人類の新しい公共であり前提になるはずで、そういった未来へさらに一歩進むはずです。

HashHub

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この記事の著者・インタビューイ

あたらしい経済 編集部

「あたらしい経済」 はブロックチェーン、暗号通貨などweb3特化した、幻冬舎が運営する2018年創刊のメディアです。出版社だからこその取材力と編集クオリティで、ニュースやインタビュー・コラムなどのテキスト記事に加え、ポッドキャストやYouTube、イベント、書籍出版など様々な情報発信をしています。また企業向けにWeb3に関するコンサルティングや、社内研修、コンテンツ制作サポートなども提供。さらに企業向けコミュニティ「Web3 Business Hub」の運営(Kudasaiと共同運営)しています。

これから「あたらしい経済」時代を迎える すべての個人 に、新時代をサバイバルするための武器を提供する、全くあたらしいWEBメディア・プロジェクトです。

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