中国江蘇省蘇州市で「デジタル人民元」の非接触決済の実証実験開始

中国江蘇省蘇州市で「デジタル人民元」の非接触決済の実証実験開始

中国東部の江蘇省蘇州市で、住民1万人以上が積極的にデジタル人民元の大規模な実証実験に参加したとGlobal Timesが12月12日に報じた。なおこの大規模な実証実験に参加しているのは、テンセントグループの中国第2位のECサイトを運営している「JD.com」や実店舗1万以上だ。

「JD.com」によれば12月12日の北京時間午後8時以降、24時間以内に2万件近くの取引がデジタル元で支払われたとのことだ。「JD.com」ではデジタル人民元利用者は画面をタップするだけで買い物ができるようだ。

12月11日午前8時に蘇州市政府は民間支出を奨励するために、抽選で当たった地元住民に総額約3億1,800万円(2000万元)のデジタル人民元の赤い郵便物を10万枚配っていたとこのこと。配られたデジタル人民元は2020年12月27日まで利用可能で、1人あたり約3,200円分のデジタル人民元が配られたようだ。

「JD.com」のフィンテック部門である「JD Digits」が公開した情報によると、プラットフォーム上での最初のデジタル人民元取引は、12月12日の午後8時過ぎに蘇州市の90年代生まれの顧客によって行われたとのことだ。この顧客がデジタル人民元での支払いを完了するまでに要した時間はわずか約0.5秒だったとのこと。

上海に拠点を置くデジタル・ルネッサンス財団の常務理事である曹殷(チャオ・イン)氏は「中央銀行である中国人民銀行(PBC)がデジタル通貨のプロモーションをソーシャル・ネットワーキングに頼っていることから、WeChatの赤いパケットの後にデジタル元のプロモーションをモデル化しようとした可能性があります。私の知る限り中国人民銀行は、またデジタル通貨を開発するために多くの民間デジタル通貨企業やインターネット企業から人材を採用しています。市場指向の手段を使ってデジタル人民元を実現したいと考えています」とGlobal timesに語った。

さらに曹殷氏は「2021 年、中国はデジタル元をテストするためのより多くのシナリオを探し続けると思いますが、大規模な立ち上げはまだ可能性が低いでしょう。なぜなら通貨が立ち上げられると問題が発生した場合、ユーザーから元を回収したり使用を禁止したりすることが非常に困難になるからです。また一部の敵対的な組織や国からの攻撃の引き金になるかもしれません。そのため政府はこの通貨が安全に発行できるように、厳しく繰り返しテストを行っていくでしょう」と答えている。

編集部のコメント

蘇州市での実証実験ではデジタル人民元のオフライン決済機能が新たに追加され、近距離無線通信技術(Near-field communication)を介してオフライン環境でスマートフォンに触れるだけで取引ができることが大きなポイントとなっています。現在のところ高齢者の方々も「デジタル人民元」で容易に決済できていることから、実証実験では良い結果が得られるかもしれません。

コメント:竹田匡宏(あたらしい経済)

(images:iStock/Nerthuz・bakhtiar_zein・Tuadesk)

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あたらしい経済 編集部

「あたらしい経済」 はブロックチェーン、暗号通貨などweb3特化した、幻冬舎が運営する2018年創刊のメディアです。出版社だからこその取材力と編集クオリティで、ニュースやインタビュー・コラムなどのテキスト記事に加え、ポッドキャストやYouTube、イベント、書籍出版など様々な情報発信をしています。また企業向けにWeb3に関するコンサルティングや、社内研修、コンテンツ制作サポートなども提供。さらに企業向けコミュニティ「Web3 Business Hub」の運営(Kudasaiと共同運営)しています。

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