ブロックチェーンがあれば米大統領選挙の混乱は防げた?電子投票の実現を目指すLayerX福島氏、xID日下氏、石川県加賀市宮元市長の見解

LayerX、xID(クロスアイディー)および加賀市が「市の政策に関する電子投票実現に向けた連携協定を締結」に関する記者会見を12月3日に行った。

あたらしい経済編集部はその記者会見の内容を【取材レポ】電子投票の「ファーストペンギン」を目指す。石川県加賀市がxID、LayerXと市政デジタル化を目指し連携協定 でまとめている。

そして記者会見のあと、あたらしい経済編集部は会見に参加したLayerX福島氏、xID日下氏、石川県加賀市宮元市長に「米大統領選挙に関する意見およびブロックチェーン適用可能性」について話を訊いた。

LayerXのCEO福島良典氏へ取材

今回の米大統領選挙は何が問題だったとお考えでしょうか?

そもそも今回の米大統領選挙の投票数は郵便の割合がすごく高かった。確か6,500万票くらいが郵便投票になっていたと思います。おそらく史上初めてのことですよね。

今までの選挙では人が集まって投票して、開票作業もみんなが見てる中でやってその正当性を担保していたわけですけど、今回はコロナ禍で非対面の郵便投票が多い中で、その選挙結果にケチがついた。

ここは技術で幾分か改善出来るところがあるだろうなと感じました。今まで私たちは電子投票について研究してきたんですが、今回の大統領選で実際こういう疑いがかけられているということへの驚きと、だからこそ選挙、投票にブロックチェーン技術を使っていく意義を感じました。

ー大統領選挙にブロックチェーン技術をどのように活用していれば、公正な選挙が行われたと考えますか。

ブロックチェーンの持っている性質である「システムに一回書かれた結果は変えることができない」そして「それが仮に書き変わったら誰かに検知されてしまう、検証性がある」というのが最大の特徴だと考えてます。このようなブロックチェーンの仕組みが、選挙にすごく役立つと感じました。

人々の投票が正しく選挙の結果に加えられるという信頼に基づいて選挙は成り立つわけですが、今回はそこが怪しいんじゃないかという話になっているので、そこの正当性を示すシステムはすごく価値があり、まさにブロックチェーンが活用できる部分だと今回改めて感じましたね。

xID代表取締役CEO日下光氏へ取材

ー今回の米大統領選挙は何が問題だったとお考えでしょうか?

米大統領選挙でも起きている問題で大切なのは、信用コストが高すぎた点だと思うんです。

今回の大統領選挙のような事態が起きていることが、信用コストを削減する為の技術を導入していない、あるいは担保されてないという事実を表しています。

例えばエストニアではテクノロジーによって信用コストを下げています。旧ソ連から脱却したエストニアは、民主主義を追求していく上で、選挙において本当にロシアからの影響を受けていないのかを気にするわけです。

だからオンライン投票を行う時でさえも、投票者がコントロールされていないことを担保するための秘密投票やブロックチェーン技術を使ったり、あるいはデジタルIDを使って一人一票の原則を担保しています。

そして例えば誰かに銃を突きつけられて投票が操作されていないかを担保するために、締切日前までであれば投票が何度でも上書きできる仕組みなどもあります。

エストニアのように他の政治的影響を受けやすい地域でさえも政治家やガバナンスを信じるのではなく、テクノロジーで信用コストを削減して担保するということが起きている。

米国もそうであれば今回の大統領選挙みたいなハレーションとかが起きてないと思います。しかしあれだけ民主主義を追求してきたアメリカで今回このようなことが起きたというのは、ある意味シンボリック的な出来事だなと思いますね。

ー大統領選挙で仮にxIDの仕組みを使えていればどうなっていたと考えますか? 

まず郵便投票も含めて投票の手法という点に関して言えば、デジタルIDを使うということで投票所に行かずににオンラインで完結できるので、そのプロセス、あるいは手法の中で検証しなければならないポイントは大きく削れると思います。

選挙プロセスが技術で担保されてるのは前提で、オンライン投票に一元化できたならば、検証しなければならない範囲が明確になります。

あとはそもそも論として、投票行為が自宅からスマホで完結できるようになるので、投票に参加することも簡単になります。

ちなみにエストニアでは「投票の10分休憩」があるんですよ。国民全員、投票期間は会社が「投票の10分休憩」をさせなければいけない。

この10分って衝撃ですよね。たった10分で投票ができるわけです。日本だと投票所に行かなくてはいけないので10分では全然足りないはず。

このようにオンライン投票を実現できるとそれに向けて国や社会の制度設計も変わってくるということが欧州では起こっています。そしてそういったところにデジタルIDを使った投票というのは貢献できるんです。

そしてアメリカは基本的に投票のプロセスは選挙管理委員会を含め、運営にものすごい人手がかかっています。やはり関わる人が多くなると、それだけ様々なステークホルダーが色んな恣意性を持ち選挙プロセスに関わるので、透明性が失われていきます。

これは小さい数人規模の会社で透明性を担保するのと、大企業で透明性を担保するののどちらがコストが高いか、低いかという話と同じだと思うんですよ。

オンライン投票にすることで相互監視しなければいけない領域は一定に絞られるはずです。xIDを含めてブロックチェーン技術を選挙プロセスに活用することで、そのコストを下げられると思います。

加賀市宮元陸市長へ取材

ー今回の米大統領選挙は何が問題だったとお考えでしょうか?

民主主義が最も先駆的な役割を果たしているアメリカで投票用紙が改ざんされたり、結果がコンピューター上で不正に扱われたりしたかもしれないと報道されていることに驚いています。

もちろんその報道の内容が事実かどうかはまだわかりません。ただもしそれが事実だとすれば大変なことです、投票結果そのものが全部無効になるわけですから。

仮にそんなことになるとまさに民主主義そのものが瓦解してしまう。だからそうならないための技術のイノベーションが必要だと思います。選挙はまさに民主主義の原理原則、民主主義を支える大前提です。

だからそれが揺らぐようなことがあってはいけない。だからこのブロックチェーンなどを活用したイノベーションを進め、みんなが安心して投票して、その内容も全て検証できるようなシステムを早く作らなければいけないと思っています。

取材:竹田匡宏(あたらしい経済)

(images:iStock/Pict Rider)

 

 

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あたらしい経済 編集部

「あたらしい経済」 はブロックチェーン、暗号通貨などweb3特化した、幻冬舎が運営する2018年創刊のメディアです。出版社だからこその取材力と編集クオリティで、ニュースやインタビュー・コラムなどのテキスト記事に加え、ポッドキャストやYouTube、イベント、書籍出版など様々な情報発信をしています。また企業向けにWeb3に関するコンサルティングや、社内研修、コンテンツ制作サポートなども提供。さらに企業向けコミュニティ「Web3 Business Hub」の運営(Kudasaiと共同運営)しています。

これから「あたらしい経済」時代を迎える すべての個人 に、新時代をサバイバルするための武器を提供する、全くあたらしいWEBメディア・プロジェクトです。

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