シンガポール金融管理局が5社にデジタル銀行ライセンスを
シンガポール金融管理局(MAS)がシンガポールでのデジタル銀行ライセンス申請を認可した企業を12月4日に発表した。デジタル銀行運営のためのライセンス認可されるためには、希望企業がシンガポール金融管理局へ申請をしてドキュメントを通して審査を受け、認可を与えられるプロセスを経る必要がある。
その審査基準は「顧客のニーズに応え、十分なサービスを受けていないセグメントにリーチするための技術の革新的な使用を取り入れたビジネスモデルの価値提案かどうか、慎重かつ持続可能なデジタル・バンキング・ビジネスを管理する能力がどれほどあるか、成長の見通しとシンガポールの金融センターへのその他の貢献の度合い」とリリースに記載されている。
また今回シンガポール金融管理局によるライセンスは、デジタル・フル・バンク・ライセンスとデジタル・ホールセール・バンク・ライセンスの2種類がある。
デジタル・フル・バンクライセンスは個人の預金を預かり、包括的な金融サービスを提供できる資格を与えるもの。デジタル・ホールセール・バンクライセンスは、法人向けにデジタルバンクを運営できる資格を与えるものだ。
デジタル・フル・バンク・ライセンスはライドシェア企業グラブ(Grab)とシンガポール・テレコミュニケーションが運営するコンソーシアムとニューヨーク証券市場へ上場をしているシンガポールのゲーム・eコマース企業シー・グループ(Sea Group)へ認可された。
デジタル・ホールセール・バンク・ライセンスは、グリーンランド・ファイナンシャル・ホールディングス・グループ、リンクロジス香港および北京協商株式投資基金管理有限公司の3社で組成されているコンソーシアムと、アントグループ(Ant Group)の100%子会社へ認可された。
ライセンスが認可された企業は、シンガポール金融管理局がそれぞれの銀行免許を交付する前に関連する要件と許認可の前提条件をすべて満たしていなければならない。
シンガポール金融管理局のマネージング・ディレクターであるラヴィ・メノン( Ravi Menon)氏は「シンガポール金融管理局は厳格なプロセスを経て、強力なデジタル・バンクを選定しました。これらの銀行が既存の銀行と並んで成功し、特に現在十分なサービスを受けていない企業や個人を対象に質の高い金融サービスを提供するという点で、業界の水準を高めてくれることを期待しています。これらの銀行は将来のデジタル経済に向けてシンガポールの金融セクターをさらに強化するでしょう」とコメントしている。
シンガポール金融管理局は、デジタル銀行が2022年初頭から営業を開始すると予想しているとリリースに記載している。
編集部のコメント
日本貿易進行機構(ジェトロ)の記事によれば、シンガポールにおける個人の預金預かりに関するデジタル・ライセンスは2段階で交付される仕組みとなっているようです。当初1~2年は限定的なライセンス(限定デジタル・フルバンク・ライセンス)で、預かることができる銀行預金を1人当たり最大7万5,000シンガポール・ドル(約600万円、Sドル、1Sドル=約80円)と上限が課され、提供できるサービスを制限する一方、交付の条件となる申請企業の払込資本を1,500万シンガーポールドルと設定されます。
その後審査の上、認められて「フルバンク」へと昇格すれば、預金額の上限が撤廃され、全ての金融サービスの提供が認められるようです。ただフルバンクになれば、払込資本額は15億シンガポールドルへと引き上げられるようです。今回シンガポール金融管理局はデジタル・フル・バンクライセンスを付与しているので、認可された2社は上記の条件をクリアしたのでしょう。
コメント:竹田匡宏(あたらしい経済)
(images:iStock/Guzaliia-Filimonova・MasterLu)