業界有識者が語る「イーサリアム2.0」始動への見解(ハドソン・ジェイムソン/平野淳也/鈴木雄大/中村龍矢)

「イーサリアム2.0」始動

イーサリアム(Ethereum)2.0ネットワークの0フェーズであるビーコンチェーン(Beacon Chain)が12月1日12時00分(UTC)にジェネシスブロックが生成されローンチした。

このビーコンチェーンのローンチにより、今後イーサリアム(ETH)保有者はステーキングすることで、ステーキング報酬を得ることが可能となる。また、事前にデポジットコントラクトへ約522億円(5億ドル)以上のETHをロックしていた初期入金者も報酬を得られるようになった。

イーサリアム2.0の始動という歴史的な局面に際して、「あたらしい経済」はイーサリアム財団のコミュニティーマネージャーを務めるハドソン・ジェイムソン(Hudson Jameson)、HashHub CEOの平野淳也氏、Defiリサーチャーの鈴木雄大氏、LayerX執行役員兼LayerX Labs所長の中村龍矢氏を取材した。

イーサリアム財団 ハドソン・ジェイムソン氏への取材

−簡単にイーサリアム2.0とは何かを説明していただけますか?

イーサリアム2.0は、イーサリアム1.0のチェーンを、プルーフ・オブ・ステーク・コンセンサス(誰もが自分のETHを「ステーク」に置き、仮想マイナーを作成し、交代でトランザクションの検証を行う)とシャーディング(ブロックチェーンをスケーリングし、毎秒多くのトランザクションを生成する能力を持つ独自の方法)を使用したプラットフォームにアップグレードするための複数年のプロセスです。

これは新しいチェーンではなく、元々のチェーンに改良を重ねたもので、採用に大きく貢献します。

−ETH所有者はどのようなことを期待してコミュニティへ関わるべきでしょうか?

イーサリアム2.0のビーコンチェーンの立ち上げは、「フェーズ0」の始まりを表しています。イーサリアム2.0はいくつかのフェーズで構成されており、最初のフェーズ(フェーズ0)では、現在のイーサリアムの利用方法にほとんど変化はありません。

今後のフェーズでは、ブロックチェーンのシャーディングのようなものが導入され、ユーザーにとってより良い意味での顕著な変化となるでしょう。

HashHub CEO 平野淳也氏への取材

−イーサリアム2.0へ移行したことで、ETH所有者はどのようなことを期待してコミュニティへ関わるべきだと考えていますか?

イーサリアムはワールドコンピュータです。 誰もがリアルタイムで共有出来るプログラム実行環境がある世界観では様々な新しいサービスを事業者や開発者が作ることができ、イーサリアム2.0のBeacon Chainの公開はその世界観を実現するための重要なマイルストーンです。

そして、その基盤を支えるのはETHを保有する世界各地のステークホルダーであり、ETHをステークするだけでそのネットワークに貢献できます。

誰もが、新しい経済圏や新しい時代のソフトウェア基盤を支える参加者になれます。

DeFiリサーチャー鈴木雄大氏への取材

−イーサリアム2.0へ移行したことで、ETH所有者はどのようなことを期待してコミュニティへ関わるべきだと考えていますか?

ETHホルダーは今後コミュニティにより深く自発的に関わっていくことが何より重要になってくると感じています。コミュニティは概念的なものと解釈されがちですが、実際にはそこに多くのヒトがいます。

先に開発をリードしてくれたエンジニア、良い基礎研究をしてくれたリサーチャー、またそれらのバランスを取って使いやすくプロダクトに落とした企業、後続の人が続くように資料をまとめてくれたヒト。誰でもコミュニティに入って各々の貢献の仕方で参加していくことができ、意見を言うことができます。

それは裏を返せば、まだ決まりきっていないETH2.0の開発計画を一緒に乗り越えていけるということになります。そうして多くの方がより身近に参加するようになると、よりイーサリアムのコミュニティは強固になっていくと感じています。

LayerX執行役員兼LayerX Labs所長 中村龍矢氏への取材

−イーサリアム2.0への移行は、ブロックチェーン企業や開発者にとって、具体的にどのような影響があるとお考えでしょうか?

今回ローンチされたのはBeacon chainだけで、これが直ちにユースケース・アプリケーションに影響を与えることはありません。

Beacon chainは将来的にシャーディングが導入された時に全体を管理するような役割で、まずはこのBeacon chainのPoSのセキュリティの検証がポイントです。

一方、今後シャーディングが導入され、一般ユーザーが使えるようになれば、セキュリティ、スケーラビリティの面でEth1だとできなかったアプリケーションが実現できると思います。

パブリックチェーン上のアプリケーションは強い相互運用性があるため、より多くのアプリケーションが乗ることで強いネットワーク効果が生まれるので、数十倍、数百倍のスケーラビリティの改善が、ユーザー視点では数千倍数万倍のインパクトになりうると思います。

−LayerX社の中村氏として、イーサリアム2.0にどのように関わっていく予定でしょうか。また何を期待していますでしょうか?

弊社の研究開発組織LayerX Labsでは、研究テーマのうち一つとしてイーサリアム2.0に取り組んでいます。

具体的には、最初に導入されるシャーディングは、データシャーディングと呼ばれる形で、EVMのような実行環境のない、単にデータを載せるだけのシャードとなり(Rollupと組み合わせて使う、元々Phase 1と呼ばれていたもの)、アプリケーションの作り方が大きく変わるのですが、その時のセキュリティ、ユーザービリティを向上させる仕組みを研究開発しています。

また、私はIPAの未踏人材発掘事業でも、Shargri-Laと言うプロジェクトに取り組んでおり、ここでもシャーディングにおけるユーザー行動の変化などを研究しています。

取材:竹田匡宏(あたらしい経済)

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あたらしい経済 編集部

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