電通国際情報サービス(ISID)と旭化成が都内スーパーにてブロックチェーンを活用した農業データ流通基盤の実証実験開始
株式会社電通国際情報サービス(ISID)と旭化成株式会社が東京都内大手小売りスーパーにて、ブロックチェーンを活用した農業データ流通基盤の実証実験を開始したことを11月27日発表した。
この実証実験はISIDのブロックチェーン技術を活用した農業データ流通基盤 「SMAGt(スマッグ)」と旭化成が展開するクラウド型生鮮品物流システム 「Fresh Logi™(フレッシュロジ)システム」を連携させ行われるとのこと。
「SMAGt」は農産品の生産履歴から出荷、流通、販売までをブロックチェーン技術を用いて記録する農業データ流通基盤で、現在まで複数の自治体・企業の協力を得ながら社会実装の検証を進めており、今回の効果検証もその一環であるとのこと。
旭化成の「Fresh Logi™システム」はクラウド型の生鮮品物流システムだ。専用ボックス内の環境(青果物の輸送・保管温度・湿度・ガス組成など)をセンシングすることで輸送・保管環境を可視化するとのこと。さらに旭化成のインフォマティクス技術を活用して青果物の鮮度を推定・予測するとのことだ。
今回ISIDは、旭化成が展開する「Fresh Logi™システム」でセンシングする輸送環境データを「SMAGt」に自動連携する仕組みを開発したとのこと。商品に張り付けられたQRコードを読み取るだけで「SMAGt」が管理する産地・農産品のトレーサビリティや、流通・物流における経路情報に加え、「Fresh Logi™」が管理する輸送品質情報までの取得が可能となる。これにより農産品のブランド価値発信、トレーサビリティによる食の安心・安全、さらには流通経路における輸送品質の可視化により、農産品の販路開拓や小売事業者の産地開拓、さらには輸出拡大への貢献が期待できるとのことだ。
今回の実証実験は、スーパーを利用する一般消費者を対象に11月21日~22日、11月28日~29日、12月5日~6日の期間で計6回行われるとのこと。
検証の流れとして、農薬や化学肥料を可能な限り使用せずに町ぐるみで土づくりに取り組んでいる宮崎県綾町のこだわり農産品を、集荷業者による予冷後に専用ボックスを利用して都内のスーパーまで配送。店頭ではPOPやディスプレイでの商品訴求に加え、商品に張り付けられたQRコードを消費者がスマートフォン等から読み取り、生産者のプロフィールや個々の生産履歴等の情報とボックスにて測定された輸送環境データ及びそのデータに基づく輸送品質評価を確認し、購入を検討できるようにする。
ISIDは以上の検証によって、商品を提供する一連の情報が消費者理解の向上や新しい購買行動につながるか等の効果を検証し、この取り組みの事業化を目指すとのことだ。
編集部のコメント
ISIDの提供する「SMAGt」は、農産品の生産履歴から出荷、流通、販売までをブロックチェーン技術を用いて記録するデータ流通基盤です。以前あたらしい経済がISIDへ問合せをしたところ、「SMAGt」はハイパーレジャーファブリック(Hyperledger Fabric)を基盤に自社にて構築を行ったとのことです。
なお「SMAGt」を活用した社会実装の検証の一例として、2019年10月5日に福島県広野町振興公社が特産品の国産バナナを販売、2019年10月25日、11月8日に鳥取県鳥取市によるブランド梨を販売、2019年11月29日から12月8日までの期間に地域商社とっとりがマレーシアで梨の販売を実施しています。
また都内にて食品のトレーサビリティを行った一例として、株式会社chaintope(チェーントープ)が、同社開発のブロックチェーントレーサビリティサービス「Paradium(パラディウム)」を利用して、池袋の宮城ふるさとプラザで販売された「朝獲れホヤ」の産地と鮮度を証明する実証実験を行っています。
なおホヤを追跡の対象とした理由として、ホヤは貝毒が生じる場合があり、検査を受けて間違いなく問題ない産地で獲れた海産物であることを証明することが、安心・安全の点でもトレーサビリティの向上が期待される商材のひとつと考え選定したとのことです。
コメント:大津賀新也(あたらしい経済)
(images:iStock/Olga-Obolenskaya)