独マインスパイダー(Minspider)がGoogleとルワンダの錫業者と提携しブロックチェーンを活用した鉱物のトレーサビリティシステムを試験運用へ
独ブロックチェーン企業マインスパイダー(Minspider)が、同社開発のブロックチェーンを活用した鉱物のトレーサビリティシステム「オレソース(OreSource)」の実装に向け、ルワンダ共和国の錫(すず)生産業者ルナ・スメルター(LuNa Smelter)と提携したことを11月24日レジャーインサイトが報じた。
「オレソース」は、鉱山および製錬所向けのデューデリジェンス(リスク調査)ツールであり、2021年1月に施行される「EU紛争鉱物規制」に準拠するために必要な情報を取得するのに役立つとのこと。
EUでは長らく、原産国で強制労働や人権侵害の原因、紛争の資金源になっている紛争鉱物資源の域内への輸入などに関する規制について検討されてきた。「EU紛争鉱物規制」は紛争鉱物資源の鉱石や金属を「紛争地域および高リスク地域」から調達するEUの精錬事業者や輸入事業者に対し、調達する鉱物資源が紛争や人権侵害を助長していないことを確認する事前調査(デューデリジェンス)の実施を義務付けるものとなる。
製錬業者は「オレソース」を利用してブロックチェーン証明書に関連データをアップロードできる。証明書の情報へのアクセスを可能にするQRコードは、鉱物の出荷または請求書に添付され、輸入業者はこのQRコードを使って、EU規制に準拠するために必要なすべてのデータを確認できるとのことだ。
なお「オレソース」は早ければ今月中にルナ・スメルターが試験運用を行うとのことだ。
また今回の取り組みにはグーグル(Google)も参加しており、「オレソース」が輸入業者および製造業者の要件に準拠することを保証するために、業界の専門知識の提供を行うという。グーグルの参加は自社の持続可能な社会へ向けた取り組みの一環となるとのこと。
なおマインスパイダーとグーグルは2019年にフォルクスワーゲンやペルーの鉱山会社Minsurらとともに、鉱山からエンドユーザーまで錫(すず)を追跡するトレーサビリティプロジェクトを実施しており、このプロジェクトは、Googleの2019 Responsible Supply ChainReportで言及されている。
編集部のコメント
「紛争鉱物」とはコンゴ民主共和国および周辺9か国から輸出される3TGと呼ばれるスズ、タンタル、タングステン、金の4種の鉱物です。この「紛争鉱物」は原産国で強制労働や人権侵害の原因、紛争の資金源になっています。
「紛争鉱物規制」とは、紛争地域の武装勢力に対して武器などの購入資金となる活動資金の供給を断つことを目的とする規制です。紛争鉱物の産地であるコンゴ民主共和国は長く内乱状態にあり、政府と対立する武装勢力が地域住民に対して組織的暴力を加えているといわれています。また住民を強制的に鉱山で働かせて得た鉱物を輸出し資金を得て新たな武器を購入し、さらに暴力を繰り返すという悪循環が発生しているともいわれています。この資金を断つのが「紛争鉱物規制」の目的です。
「紛争鉱物規制」は3TGのみを対象としていますが21年1月に施行される「EU紛争鉱物規制」では95%の金属鉱物が対象となります。 なお歯科医や宝石商など小規模事業者に対しては、デューデリジェンス義務が免除されるとのことです。
なおブロックチェーンを活用した鉱物のトレーサビリティシステムの他の例として、自動車メーカーボルボが2020年初めから、サーキュラー社とともに電気自動車のバッテリーに使用する「コバルト」のサプライチェーンの透明化に取り組んでいます。
また日本においても、みんな電力株式会社が「コバルト」のサプライチェーンをブロックチェーントレーサビリティシステムによって見える化し、人権と環境に配慮したエシカルなリチウムイオン電池の開発・普及を目指す取り組みを行っています。
コメント:大津賀新也(あたらしい経済)
(images:iStock/dalebor・La_Corivo)