慶応大や伊藤忠テクノらが卒業見込証明書などをスマートフォンアプリへ発行する次世代デジタルアイデンティティ基盤の実証実験開始

慶応大や伊藤忠テクノらが卒業見込証明書などをスマートフォンアプリへ発行する次世代デジタルアイデンティティ基盤の実証実験開始

慶應義塾インフォメーションテクノロジーセンターと慶應義塾大学SFC研究所ブロックチェーン・ラボが、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(CTC)、MUFGの子会社であるJapan Digital Design株式会社、株式会社ジェーシービー、西日本電信電話株式会社(NTT西日本)、ブロックチェーン開発企業BlockBase株式会社の5社と共同で、慶應義塾大学の学生を対象に在学証明書や卒業見込証明書などをスマートフォンアプリへ発行する、次世代デジタルアイデンティティ基盤の実証実験を10月から開始することを10月26日に発表した。なおこの実証実験は上記5社とマイクロソフトコーポレーションが連携して行うとのことだ。

この実証実験では大学の教務窓口で身分証明書の提示や書面による諸手続きを行わずに、オンラインで各種証明書の入手を可能にするデジタルアイデンティティ基盤について機能や標準化などの検証を行うとのこと。

現在各大学では新型コロナウイルス感染症拡大を受け、授業や各種窓口での手続きのオンライン化が進んでおり、在学生および卒業生への各種証明書等の発行手続をオンラインで完結するための仕組み作りが必要となっていることから、この実証実験が行われるとのことだ。

この実証実験では就職活動を行う学生に対してスマートフォンアプリでの卒業見込証明を発行し、採用企業に成績証明書や卒業見込証明書を提供するといった民間企業との連携や、転校や編入に伴う地域・国をまたいだ大学間の情報連携も考慮するとのこと。また国際的な標準仕様への適合と相互運用を実現することでオンライン授業で受講生の本人確認が円滑になるだけでなく、学生の取得単位についての大学間の情報連携といった手間を削減できるとのこと。そして将来的にはオンラインショッピング等における決済システムや通学定期などの商用システムとの連携による学生割引の適用など、学生の利便性向上も目指していくとのことだ。

なお次世代デジタルアイデンティティ基盤には、現在標準化が進んでいる汎用化されたデジタル証明書技術Verifiable Credentials(VC)、および特定の企業・組織に依存しない分散型モデルで永続性のある識別子を表現するDecentralized Identifiers(DID)を活用するとのこと。

慶応義塾大学らは、10月から2021年2月までに実証実験に向けたID基盤の開発をし、2021年3月には一部シナリオでの実証実験の開始をする予定とのこと。

また慶応義塾大学らは、大学より発行された永続性のあるデジタルアイデンティティが一般的に検証可能となることで、信用情報や迅速な本人確認を必要とする金融やヘルスケア、政府サービスなどの分野でもビジネスの広がりが期待できるとプレスリリースに記載している。

編集部のコメント

慶應義塾大学では、ブロックチェーンを活用して就活生の個人情報を守るマッチングプラットフォームの開発プロジェクトも今年8月から行っています

このプロジェクトは「STAR(Secure Transmission And Recording)プロジェクト」と呼ばれ、慶應義塾大学経済学部附属経済研究所FinTEKセンターとInstitution for a Global Society株式会社(IGS)が「学生の個人情報を、学生自身の手に戻す」をテーマとして、ブロックチェーン技術を用いた個人情報の管理・活用を実現するシステム開発に関する共同研究として行っています。

なお「STARプロジェクト」の開始時点では株式会社三菱UFJ銀行、SOMPOホールディングス株式会社、住友生命保険相互会社が参画しており、今後は一業種一社に限定し 20社以上の参画を目指すとのことです。

今回のニュースも含め、慶應義塾大学は企業と共にブロックチェーン技術によるDXへの取り組みを積極的に行っている印象です。

コメント:大津賀新也(あたらしい経済)

(images:iStock/antoniokhr・Igor-Korchak)

この記事の著者・インタビューイ

あたらしい経済 編集部

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