アジア開発銀行(ADB)が貿易金融の信用保証取引の実証実験を完了

アジア開発銀行(ADB)が貿易金融の信用保証取引の実証実験を完了

アジア開発投資銀行(The Asian Development Bank’s / ADB)のトレード・サプライチェーン・ファイナンス・プログラム(Trade and Supply Chain Finance Program)が、タイの銀行であるスタンダード・チャータード・バンク・タイ(Standard Chartered Bank Thailand )とベトナム投資開発銀行(The Bank for Investment and Development of Vietnam/BIDC)との提携により、分散型台帳技術(DLT)を利用し信用保証取引の実証実験を完了させたことを発表した。

この実証実験にはシンガポールを拠点に貿易金融のデジタル化を促進するコントゥアー(Contour)社が開発を進めるコントゥアー・レターオブクレジットブロックチェーン(Contour Letter of Credit Blockchain)が利用された。このブロックチェーンプラットフォームは、8月にタイからベトナムへのプラスチックの5万ドルの出荷に関する信用保証取引に利用された。

ADBのトレード・サプライチェーンファイナンス部門の部長であるスティーブン・ベック(Steven Beck)氏は「コロナウイルスのパンデミックは、貿易金融業界が業務をデジタル化する必要性を強調しています。このイノベーションは、貿易をより効率的にし、リスクを軽減し、発展途上国のアジアの中小企業の参入障壁を低くします」とコメントしている。

ADBの情報技術部のデジタルイノベーション・サンドボックス兼アーキテクチャ担当ディレクターのオゼイル・カーン(Ozzeir Khan)氏は「貿易金融業界は、DLTをいち早く採用している業界の一つです。貿易ネットワークがこの技術を使用して貿易量を増やし、複雑さを軽減しているのを目の当たりにしています」とコメントしている。

コントゥアーのCEOであるカール・ウェグナー(Carl Wegner)氏は「この取引の促進に貢献できたことを嬉しく思います。我々は、アクセス可能で、デジタルで、安全な世界貿易のための分散型ネットワークを構築するために、貿易エコシステムを支援し続けます」とコメントしている。

編集部のコメント

ADBは極度の貧困撲滅に向けた取り組みを継続しながら、繁栄、包摂的、弾力性、持続可能なアジア太平洋地域の実現に向けて尽力している国際開発金融機関です。1966年に設立されたADBは、アジア太平洋地域の49カ国を含む68カ国の加盟国によって所有されています。最大の出資国は日本とアメリカでともに出資比率15.7%を占めています。

またADBの貿易・サプライチェーン・ファイナンス・プログラムは、アジア太平洋地域の貿易を後押しするための保証と融資を提供しています。コロナウイルスのパンデミックの間、ADBの支援のための柔軟かつ革新的な手段となっていて、2020年上半期には、2019年の同時期の2,363件から28億ドル相当の3,960件の取引を支援したとADBのリリース文章で伝えられています。

2020年の取引には、医療用品に関連した145件、食品・農業関連製品に関連した450件以上が含まれているようです。そして9月8日には貿易金融のデジタル化を目的に、国際商業会議所(ICC)がデジタルスタンダードイニシアチブ(DSI)の運用開始を発表しています。今後とも貿易金融のデジタル化に不可欠な技術であろうブロックチェーン技術の利活用に注目が集まるでしょう。

コメント:竹田匡宏(あたらしい経済)

イメージ:your_photo・Igor-Korchak

この記事の著者・インタビューイ

あたらしい経済 編集部

「あたらしい経済」 はブロックチェーン、暗号通貨などweb3特化した、幻冬舎が運営する2018年創刊のメディアです。出版社だからこその取材力と編集クオリティで、ニュースやインタビュー・コラムなどのテキスト記事に加え、ポッドキャストやYouTube、イベント、書籍出版など様々な情報発信をしています。また企業向けにWeb3に関するコンサルティングや、社内研修、コンテンツ制作サポートなども提供。さらに企業向けコミュニティ「Web3 Business Hub」の運営(Kudasaiと共同運営)しています。

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