日本通運がブロックチェーン基盤の医薬品グローバルサプライチェーンネットワークを開発中と発表
日本通運が医薬品の適正流通基準(GDP/Good Distribution Practices)の要求事項をハードウェア、ソフトウェア両面で準拠した形のブロックチェーン基盤、医薬品グローバルサプライチェーンネットワークを開発中であることを発表した。さらに日本通運は国内の核となる4拠点(東日本、西日本、九州、富山)を順次稼働させ、日本通運独自で開発した医薬品専用車両も導入するとのこと。
この医薬品グローバルサプライチェーンネットワークを開発するに至ったのは、医薬品が輸送や保管の際に厳密な温度管理やセキュリティ管理が求められる一方で、医薬品市場のグローバル化に伴い医薬品の偽造や盗難が大きな問題として浮上してきているという背景があるとのことだ。
このグローバルサプライチェーンネットワークは物理レイヤーと情報レイヤーの2レイヤーに分かれているとのこと。ブロックチェーン技術は情報レイヤーの商流プラットフォームに活かされるようだ。具体的にはトラックマッチング、契約・決済、在庫管理、品質トレーサビリティに活用される。また情報レイヤーにはもう1つロジスティクスプラットフォームがあり、物流や商品品質のトレーサビリティーを確保するためにインテル社とIoTデバイスを開発中とのことだ。
追記:9月2日16時30分
あたらしい経済編集部は、日本通運執行役員デジタルプラットフォーム戦略室長の戸田晴康氏へ取材を行った。
日本通運執行役員デジタルプラットフォーム戦略室長の戸田晴康氏へ取材
ーなぜ日本通運社は医薬品の流通プラットフォームの要素技術としてブロックチェーンを選ばれたのでしょうか。
医薬品の流通プロセスでは、製薬会社様、医薬卸様、医療機関等、多くのプレーヤーが存在し、複雑なバリューチェーンを形成しています。
このプレーヤー間で温度逸脱管理や偽薬混入抑止といったトレーサビリティを担保しなければなりません。こういったトレーサビリティ情報を各プレーヤー間で共有してゆく仕掛けが必要です。
また、この仕組みは業界および患者様に広く資するものでなければなりません。そのため、オープンなプラットフォームとして実現するやりかたとしてブロックチェーン技術が向いていると考えました。
ー商流プラットフォームでのアセットの共有化機能とは、どのようなものでしょうか。
アセットの共有化機能というのは、流通プロセスに関係するプレーヤーが、トラックや倉庫の空きスペースをシームレスに確認し、発注することができる機会を生み出す機能です。
この際、当然プレーヤーが混在しますし、また運ばれるモノも混載となるかもしれません。
その際の要件として、前述の質問と同じく、複数のプレーヤー間でトレーサビリティを見える形で担保する必要があり、ここでもブロックチェーン技術で具現化してゆく考えです。
ブロックチェーンでトレーサビリティを担保した上で、それに紐づく在庫情報や納品実績、注文情報、リードタイムといった情報を活用することによって、在庫最適化やひいては、各プレーヤーの適切な発注時期と発注量の策定に役立つのではと考えております。
編集部のコメント
日本通運のプレスリリースによると、医薬品産業は世界の市場が2014~18年の5年間で年平均6.3%の成長率を遂げ、2018年の世界市場規模は約100兆円に上っており、19~23年も同3~6%で推移するとみられているとのことです。日本の医薬品市場についても、市場規模は約10兆円で世界3位となっています。
コメント:竹田匡宏(あたらしい経済編集部)
(images:iStock/NatalyaBurova・Who_I_am・RRice1981)