慶應大学がブロックチェーンを活用して就活生の個人情報を守るマッチングプラットフォームの開発プロジェクトを発表
慶應義塾大学経済学部附属経済研究所FinTEKセンターとInstitution for a Global Society株式会社(IGS)が、ブロックチェーン技術を用いた個人情報の管理・活用を実現するシステム開発に関する共同研究「STAR(Secure Transmission And Recording)プロジェクト」を開始したことを8月11日発表した。
この「STARプロジェクト」は「学生の個人情報を、学生自身の手に戻す」をテーマとする3年間の実証研究で、「学生の個人情報提供における安全性と透明性の確保」「学生と企業双方を利する個人情報活用戦略の研究」「学生と企業のマッチング精度向上」を行い、FinTEKセンターとIGS、参画企業の三者による実証実験を通じて、学生と企業を繋ぐプラットフォームの社会実装を目指すとのこと。
「STARプロジェクト」の開始時点での参画企業は株式会社三菱UFJ銀行、SOMPOホールディングス株式会社、住友生命保険相互会社である。今後は一業種一社に限定し 20社以上の参画を目指すとのことだ。
今回開発を予定しているシステムは、ブロックチェーンのトレーサビリティ機能に、暗号技術などを組み合わせて個人情報を保護することで、学生によるパーソナルデータの開示先、開示範囲、開示期限の自由かつ完全なコントロールを実現するとのこと。また学生自身が入力する情報に加えて教員や先輩、友人など第三者からの評価情報も入力可能にすることで、情報の信頼性や客観性の向上が期待されるとのことだ。さらに学生が開示したパーソナルデータの消去も可能にすることで、学生と企業が安心して利用できる環境を提供するとのこと。
実証実験参画企業は、このシステムを利用し個人情報保護に留意した上で、企業と学生のコミュニケーションを促進するシステム運営方法について実証研究を行うとのこと。具体的には「これまで学生から得られなかった学内外での評価や授業内での発言などのパーソナルデータを活用し、潜在的な優良人材を発見し、アプローチすることができる」「オンライン面接など学生との接点が制限される環境において、学生のパーソナルデータを活用することで、学生の能力や特徴を深く知ることができる」「個人情報の許諾作業や管理、廃棄が不要となる」などのメリットを想定しているとのこと。
今後このシステムは実証3年目までに大半の慶應大生の利用と他大学10校以上の学生20,000名による利用を想定し開発を行い、実証実験終了後の4年目以降は実証研究参画企業以外の企業や他大学生が利用するプラットフォームを目指すとのことだ。
編集部のコメント
Institution for a Global Society株式会社(IGS)は企業の採用活動をIT技術で支援するスタートアップです。同社は教育サービスとしてSTEAM教育コンテンツなどを提供する「GROW Academy」AIと計量心理学を利用した企業向けの人材評価サービス「GROW360」学校・教育機関向けの教育効果を可視化する評価ツール「Ai GROW」を展開しています。
コメント:大津賀新也(あたらしい経済)
(images:iStock/Panuwat-Sikham)