FRBとOCC、バイナンスの巨額流出受け米銀行に照会=報道

米銀行規制当局、バイナンス事件受け銀行に照会

米連邦準備制度理事会(FRB)と米通貨監督庁(OCC)が、大手暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンス(Binance)で発生した巨額の資産不正流出事件を受け、監督下の米銀行に不審な動きやサービス中断の有無を照会していると、ロイター(Reuters)が11月5日に複数の関係者の話として報じた。両当局の監督担当者は、11月2日朝から銀行への連絡を開始したという。

報道によると、照会を受けた銀行の関係者の1人は、同行ではサービスの中断は発生していないと説明した。また、一部の銀行は同様の攻撃に備え、自社システムの点検を進めているとのことだ。

米大手銀行のサイバーセキュリティチームの1つは、攻撃発生から数時間以内にバイナンス側と連絡を取ったという。同行では内部報告書の作成を進めており、今後、システムの見直しやセキュリティ対策の更新につながる可能性があるとされる。

FRBとOCCは、ロイターへのコメントを控えた。

一方、バイナンスの広報担当者はコインテレグラフ(Cointelegraph)に対し、公開済みの初期調査報告書をすべての銀行取引先に共有したと説明。また、銀行取引先に影響する脆弱性は把握していないとした。

米銀行当局は2025年に暗号資産関連業務の規制を緩和

米国では2025年以降、銀行の暗号資産関連業務に関する規制上の要件が一部緩和されている。

OCCは2025年3月、銀行が一定の暗号資産関連業務を開始する際に必要としていた、監督当局による事前の不異議確認要件を撤廃した。

またFRBも同年4月、州加盟銀行に対して暗号資産関連業務の事前通知を求めていたガイダンスを撤回した。なおFRBは、こうした業務について通常の監督プロセスを通じて監視を継続するとしている。

ブロックチェーンセキュリティ企業サーティック(CertiK)で米国政府渉外を率いるステファン・ミュールバウアー(Stefan Muehlbauer)氏は、コインテレグラフの取材に対し、今回の照会に続き、銀行の暗号資産カストディ(保管・管理)業務や取引相手へのエクスポージャー(取引相手を通じて負うリスクの大きさ)、事故対応体制などに対する監督上の関心が高まる可能性を指摘した。

また同氏は、今回の照会について、規制当局が暗号資産業界への関与を後退させる兆候ではないとの見方を示している。

サイバーセキュリティ企業ブラックフォグ(BlackFog)の創業者兼CEOであるダレン・ウィリアムズ(Darren Williams)氏も、今回の攻撃手法は、暗号資産のカストディや決済サービスを提供する従来の銀行にとってもリスクになり得ると指摘した。

同氏によると、攻撃者は資金移動の権限を持つ従業員やシステムを侵害することで、警告を発生させずに不正送金を実行する可能性があるという。また、金融業務で自律型AI(エージェンティックAI)の利用が広がることで、こうしたリスクがさらに高まる可能性にも言及した。

バイナンス事件では約63億4,000万ドル相当の資産に影響

バイナンスが11月3日に公表した初期調査報告書によると、10月29日(日本時間30日)に発生した不正流出事件では、約63億4,000万ドル相当の暗号資産が影響を受けた。このうち約28億5,000万ドル相当については、報告時点で凍結または移転を阻止したという。

同社の調査によると、攻撃者は少なくとも6月から従業員の業務用PCを標的としており、偽の採用面接や認証情報の窃取、社内AIツールの悪用などを通じてウォレット関連システムに侵入したとのことだ。 

米連邦捜査局(FBI)は10月31日、北朝鮮が今回の資産窃取を実行したと発表し、この攻撃活動を「トレーダートレイター(TraderTraitor)」と呼んでいる。

バイナンスは11月1日から出金サービスを段階的に再開した。また同社は11月4日、影響を受けたトークン資産の約98%を自社資金で補充したと発表。11月5日には、出金再開の対象となる暗号資産を追加すると発表している。

なお、今回の事件の詳しい侵入経路や不正送金の仕組みについては、11月4日付の「あたらしい経済」の記事で報じている。

参考:Reuters・Cointelegraph・FBI・OCC・FRB
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

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