BitfinexがTetherをOMG Networkに統合することを発表
暗号資産(仮想通貨)取引所Bitfinex(ビットフィネックス)が、USドルペッグのステーブルコイン「テザー(Tether:USDT)」をOMG Network(旧OmiseGO)に統合することを6月1日発表した。
今回の統合はビットフィネックスがテザーの発行をイーサリアム(Ethereum)で行う際に発生する、イーサリアムの処理混雑時におけるトランザクション詰まりとガスの高騰を解消することを目的としている。ビットフィネックスは今回の統合によってUSDTトランザクションのコンファメーションにかかる時間と費用が削減できると推測しているとのことだ。
OMG Networkとはイーサリアムネットワークをスケーリングし、リアルタイムでのトランザクションのやりとりを可能にするレイヤー2ソリューションである。6月1日に「OMG Network V1 Mainnet Beta」のリリースが発表され、それに伴ってプロダクト名もOmiseGOからOMG Networkに変更された。
「OMG Network V1 Mainnet Beta」はMore Viable Plasmaという仕様を採用しており、これによってイーサリアムと同等の安全性を保ちつつ従来よりもトランザクションにかかるコストが66%ほどカットできるようになったとのことだ。
なおイーサリアムのトランザクション処理の混雑に対する弱さは初期から問題となっており、特にテザーは2020年4月時点でイーサリアムでのガス使用量の約20%を占めるほどの存在となっていたとのこと。
ビットフィネックスのCTOであるPaolo Ardoino(パオロ・アードイノ)氏は「USDTの入出金をOMG Network上で行うことで、我々はコストを下げ、パフォーマンスを向上させ、ルートチェーン(イーサリアム)への圧力を緩和することができる。これはビットフィネックスにとっても顧客にとってもイーサリアムエコシステムにとっても良いことだ」とコメントしている。
編集部のコメント
今回のニュースはOmiseGOがOMG Networkへリブランディングを行い、OMG Networkが新たなレイヤー2スケーリングソリューションとしてOMG Network V1 Mainnet Betaをリリース。そしてイーサリアムのブロックチェーンを利用してテザーを発行するBitfinexによってそのOMG Network V1 Mainnet Betaを導入し、そのメインネット上でテザーの発行が行われることが発表されたという内容になっています。
レイヤー2スケーリングソリューションとは、通常1つずつ処理されるトランザクションをいくつかまとめて1つのトランザクションとして扱うことでブロックチェーンの処理スピードを上げることを目指しているプロダクト全般を指します。このときトランザクションをただまとめるだけでは安全性が確保されないため、技術的な工夫が必要になります。
イーサリアムの創業者であるヴィタリック・ブテリン氏は今回のOMG Networkのリリースに関して「注目されていない間に、イーサリアムのレイヤー2ソリューションの初期展開は成功している。あとは改良とデプロイだ」とツイートし、続けてレイヤー2ソリューションの満たすべき要件や今後の展望などを述べています。
なおUSDTは、その発行量とTether Limitedが保有するドルの量を同じにすることによりドルに固定されます。またUSDTはテザープラットフォームで入手することができます。イーサリアムの他にOmni、Tron、EOS、Liquid Network、Algorandのブロックチェーンでも発行がされています。2019年には全ブロックチェーンで合計およそ2,120億ドル(約23兆円)相当の資金がUSDTとして送金されています。
また現在ではイーサリアムが最もUSDTの発行に利用がされており、イーサリアムのブロックチェーン上で行われたUSDTの取引数は2020年3月に全体の90%以上にまで上昇しています。
コメント:小俣淳平(あたらしい経済)
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