世界有数の金融インフラ機構DTCCがブロックチェーン技術を活用した2つのプロジェクトを発表

世界有数の金融インフラ機構DTCCがブロックチェーン技術を活用した2つのプロジェクトを発表

世界の金融インフラを構築する米国の預金信託クリアリング機構のDTCC(Depository Trust&Clearing Corporation)が、分散型台帳(DLT)と資本市場の統合を目的とした2つのプロジェクトを稼働させていることを発表した。

今回発表されたプロジェクトは、公開株の代替決済サービス「Ion(イオン)」と、私募証券の発行・取引所のセキュリティ・トークンプラットフォーム「Whitney(ホイットニー)」だ。

IonとWhiteneyの具体的な目的は公開市場と民間市場におけるデジタル化のメリットを探り、新しいテクノロジーが取引後のプロセスを強化し、リスクとコストを削減できるかどうかを検討すること。

2つのプロジェクトの役割分担として、Ion(イオン)は、公開市場における決済プロセスをさらに最適化するための過去数年間のDTCCの成功した取り組みを基に基盤の構築を進めていて、Whitenny(ホイットニー)は民間市場の資産ライフサイクル全体を通じて、デジタル化への適用レベルを高める機会を検討して、基盤の構築を進めているとのこと。

DTCCの社長兼CEOであるMike Bodson(マイク・ボドソン)氏は「DTCCは創業以来、金融市場のデジタルトランスフォーメーションをリードしてきましたが、その革新の遺産をベースに、取引後のプロセスを強化するプロジェクトを展開しています。これらのケーススタディは、プライベートマーケットのライフサイクルとパブリックマーケットの決済プロセスを再考するものであり、将来的には取引活動の処理方法を大幅に近代化し、強化する可能性があります。さらに私たちは、クライアント、規制当局、その他の主要なステークホルダーと協力し、業界と協力してこれらのコンセプトを推進していくことを楽しみにしています」とコメントしている。

編集部のコメント

Ion(イオン)に関して、DTCCの清算機関サービスのグローバルオペレーションおよびクライアントサービスの責任者であるMurray Pozmanter(マレー・ポズマンター)氏は「金融サービス業界は技術革命の真っ只中にあり、ポストトレードの将来に備えて新しい技術とサービスモデルを適応させ、受け入れる絶好の機会を提供しています。Ion(イオン)は、DLTやトークン化証券などの新機能を活用した決済の高速化に関する価値提案をさらに進め、DTCCがこれらの技術をどのように展開して顧客と業界に付加価値を提供できるかを学ぶために業界と協力することを目的としています」とコメントしています。

Whitney(ウィットニー)に関して、DTCCのビジネスイノベーション担当マネージングディレクターのJennifer Peve(ジェニファー・ペーブ)氏は「私募を含めた民間市場は、自動化のレベルを高めるのに適していますが、まだ何十年にもわたって公的市場をサポートしてきたインフラの多くが不足しています。Whiteny(ホイットニー)は、新興技術を活用し、全く新しいソリューションを一から開発するエキサイティングな機会を提供します」とコメントしています。

さらにペーブ氏はIonとWhitenyに関して「どちらのプロジェクトもまだ実験段階にあり、プロジェクトを進めるかどうかの決定は業界からの更なる分析とフィードバックを受けて決定されます。しかしどちらのプロジェクトにも自信をもって言えることが、取引後のプロセスを強化し業界に弾力性があり安全で効率的な取引後のインフラを提供するために設計された革新的な技術とビジネスコンセプトを取り入れた実践的な実験の一例となっているということです」とコメントしています。

DTCCは50年近く世界の金融インフラを構築し、運用してきております。世界15ヶ国に施設、データセンター、オフィスなどを展開しています。2019年にDTCCの子会社はアメリカで2兆1500億ドル以上と評価された証券取引を処理した実績があります。そしてDTCCの子会社の預託証券会社は170の国と地域の証券銘柄のカストディと資産サービスを提供していて、その価値は63兆ドルに及ぶとのことです。

このように世界有数の金融インフラであるDTCCがブロックチェーン技術を活用し金融インフラを提供するインパクトは計り知れないのではないでしょうか。5年以内に現在の金融システムの多くがブロックチェーンベースの金融システムに変わる可能性もあるかもしれません。

そして日本では野村証券が未公開株式の市場に着手していくというニュースが先日ありました。Whitenyのようにブロックチェーン技術は、未公開株市場の透明性を担保し、運用していく役割も担っていくだろうと考えられます。

コメント:竹田匡宏(あたらしい経済)

(images:Aleksei_Derin,-dalebor,antoniokhr)

この記事の著者・インタビューイ

あたらしい経済 編集部

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