(電縁取締役石原 玲一氏コメントあり)電縁と東大がブロックチェーンを活用した漁獲物トレーサビリティシステムの実証実験を水産庁から受託し開始

電縁と東大がブロックチェーンを活用した漁獲物トレーサビリティシステムの実証実験を水産庁から受託し開始

株式会社電縁が、ブロックチェーン活用の漁獲物トレーサビリティシステムの実展開に向け、国内漁場の流通実態調査及び実証実験を国立大学法人 東京大学大学院 農学生命科学研究科との共同提案により水産庁から受託し、作業開始したことを4月2日発表した。

漁獲物トレーサビリティシステムは、漁獲物に漁獲証明を与え、水揚、加工、流通等の過程を追跡を目的とする。

同実証実験は、2020年4月から2021年3月までの期間で、北海道、東北、西日本の3漁場を対象として行われる。

漁獲物トレーサビリティシステムの実展開に向けて、各漁場の水産物の流通の実態調査、漁獲物トレーサビリティシステムのプロトタイプ開発、プロトタイプシステムを各漁場の実業務に導入し、実証実験を実施するとのこと。

実証実験の実施にあたっては、電縁と東京大学のチームが現地を訪問し、各漁場の漁業協同組合、生産者、加工業者、流通業者などの協力を得て、現場状況の調査、関係者へのヒアリング、プロトタイプシステムを使った業務などを実施する。

流通実態調査では、水揚、加工、流通の各過程で水産物がどのように取引され、どのように扱われ、どのように情報が管理されているのかを確認、把握を行う。

システム実証実験では、プロトタイプシステムで実業務を実際に実施し、業務で使うことができるか、期待通りの改善効果を得られるかといったことについて検証を行う。

またブロックチェーンを同システムに使用することで、漁獲枠をトークン化することが容易になり、漁獲量管理の円滑化、密漁・産地偽装などの不正行為の検出の容易化を期待することができるとのことだ。

同実証実験にて構築するプロトタイプシステムの開発は、電縁が国内販売を手掛ける、タイAvalant社のローコード開発ツール「ONEWEB」が利用される。なお同システムへ採用するブロックチェーンプラットフォームに関しては、現在選定中とのことだ。

株式会社電縁の取締役である石原 玲一氏は、あたらしい経済編集部の取材に対し
『今回の実証実験で開発するシステムについて、私の頭の中の現時点のイメージは、「漁獲枠をトークン(漁獲許可証)化して、漁業者が予め必要量を取得し、実際の漁獲物を紐付けることで漁獲証明書になる」「そのトークンを利用して水揚→加工→流通→消費という過程をサンキーグラフのように可視化する」ということを考えています。

このシステムを実展開していく中で、必要機能を追加するなどすることで、「漁獲許可証を持たない業者/水揚は漁獲証明を受けられず、密漁、密輸、産地偽装など枠外の漁獲からの流通を防止できる」「漁獲許可証、漁獲証明の発行状況で現時点、未来の漁獲枠の使用状況をリアルタイム把握しやすい」「最終製品から遡って水揚からの流通経路を証明でき、消費者等に開示できるので食の安全、ブランド保護に役立つ」「流通過程の各事業者間の取引の電子化に役立てられる」「流通過程の各事業者の入荷量/出荷量が透明化され、不正な原材料(密漁品、密輸品、偽装品など)の混入の検出、脱税目的の出荷量の改竄等を防げる」といったことに役立てられると考えています。

単純に流通をトレース、追跡できることに留まらず、情報の活用、業務の組み換えによる踏み込んだ効果の発揮を目指していくにあたって、パートナー企業の固有技術の活用なども含めた電縁でないと構想、実現できない仕組み作りを行えると考えています。
また、同様の仕組は水産業に関わらず、様々な産業のサプライチェーン、流通に適用することができ、日本市場に限ったものでもないと思われるため、活用の場を拡大する取り組みも進めていきたいと考えています』とコメントをしてくれた。

編集部のコメント

食品トレーサビリティの目的としては、「食品の安全を確保すること」「情報の信頼性を高めること」「業務の効率を上げること」などが挙げられます。
しかしサプライチェーンには、生産から加工、販売までに数々の工程や事業者が多く関わることから、詳細な情報を正確に記録管理することは非常に困難な状況でした。しかしブロックチェーンやRFIDなどの登場により、流通経緯を追跡するシステム構築の実証実験や開発の事例は多くなってきています。
ブロックチェーンの特性がトレーサビリティに利用されることにより、輸出の際の産地証明やブランド価値の保護、またトークンを利用することでエンドユーザーから生産者へチップや感謝の気持ちを送ることもでき、サプライチェーンにおいて新たなつながりを生む取り組みもされています。

なお、同システムによっての漁業の産地証明やブランド価値の保護への取り組みはもちろんですが、漁業においては違法・無報告・無規制(IUU)漁業が国際的な問題になっており、国連のSDGsでもその対策実施は謳われています。IUU漁業によって限りある水産資源が無秩序に乱獲され、その数を大きく減らしています。IUU漁業を減らすためにも今回のような漁獲物に証明を与えるトレーサビリティシステムの構築は求められており、また同システムの構築は、水産資源を守ることにも繋がるのです。
食品トレーサビリティシステムが、畜産・漁業・農業などのすべてのサプライチェーンに当たり前のように導入されることで、食品や資源が無駄にならず、安全により良いものが流通される未来が訪れることを期待します。

コメント:大津賀新也(あたらしい経済)

(images:NatalyaBurova)

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あたらしい経済 編集部

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