米司法省、暗号資産取締チームを解散か=ロイター

米司法省が暗号資産取締チーム解散か

米司法省(DOJ)が、「国家暗号資産取締チーム(National Cryptocurrency Enforcement Team:NCET)」を解散し、検察官に対して暗号資産(仮想通貨)に関する捜査を麻薬カルテルやテロ組織に絞るよう指示した。「ロイター(Reuters)」が入手したメモで明らかになった。

トッド・ブランチ(Todd Blanche)司法副長官が4月7日深夜に職員に送ったメモでは、民主党のジョー・バイデン(Joe Biden)前政権が、デジタル資産分野に対して「訴追を通じた無謀な規制戦略」を行っていたと非難した。

「NCET」は、詐欺や不正金融に対処するため2022年2月に発足し、大手暗号資産取引所バイナンス(Binance)とその創業者チャンポン・ジャオ(Changpeng Zhao:CZ)氏に対するマネーロンダリング防止法違反事件など、多くの事件を調査し調整してきた。

しかし、暗号資産関連ビジネスを家族で展開するドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領の下で、米政府は暗号資産政策の方向転換を進めている。共和党のトランプ氏は、米国を「世界の暗号資産の中心地」にすることを公約としている。

ブランチ氏は今後、司法省は「デジタル資産投資家に被害をもたらす個人、またはテロの他、麻薬、人身売買、組織犯罪、ハッキング、カルテルやギャングの資金調達などの犯罪行為を助長するためにデジタル資産を利用する者」に対する捜査を優先すると述べた。

この新たな方針に「矛盾する」進行中の捜査は「終了すべきだ」とブランチ氏はメモに記している。

司法省の広報担当者からのコメントは、現時点では得られていない。

ブランチ氏は、今回の指示の根拠としてトランプ氏の大統領令を挙げている。この大統領令は、個人と民間企業が「迫害を受けることなくオープンなブロックチェーンネットワーク」にアクセスできるよう政府が支援することを求めている。

暗号資産に対する新方針とトランプ大統領の個人的な利害関係

2024年の大統領選で暗号資産業界の支持を得たトランプ氏は、暗号資産規制の緩和を呼びかけている。同氏が就任して以来、規制当局は業界への規制強化を急速に後退させている。

米市場の主要規制当局である証券取引委員会(SEC)は、暗号資産の取り締まりチームの焦点を変更し、多くの人が同機関の勝利すると考えていた注目事件を一時停止または完全に撤回している。また、米銀行規制当局は先月、一部の暗号資産活動を銀行が行うことを許可している。

司法副長官のメモでは、司法省は暗号資産取引所やオフラインウォレット、暗号資産取引を匿名化するミキサーやタンブラーなどのサービスを、「利用者の行為または意図しない規制違反」を理由に標的にするのを停止すると明記されている。

ブランチ氏はトランプ大統領の元刑事弁護人であり、司法省のナンバー2として就任が先月に承認された。

また同氏はメモの中で、企業や個人が故意にライセンスや登録要件に違反したことを示す証拠がない限り、連邦銀行法、証券法、商品法に基づく規制違反で起訴しないよう検察官に指示した。

トランプ氏とその家族は現在、暗号資産業界に利害関係を持っている。ロイターが以前報じたところによると、トランプ一家は暗号資産企業ワールド・リバティ・フィナンシャル(World Liberty Financial)によるトークン販売の純収益の75%を受け取る権利を有している。

トランプ氏は大統領就任に先立つ1月にも、暗号資産を立ち上げている。同氏のミームコインとなる「OFFICIAL TRUMP:オフィシャルトランプ(TRUMP)」と、メラニア・トランプ(Melania Trump)夫人の「Melania Meme:メラニアミーム(MELANIA)」を発行する企業は、これらは投資や証券ではなく、「トランプ氏とメラニア夫人への応援や賛同を示す目的のトークン」だとしている。

※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
US Justice Dept disbands crypto enforcement team, citing Trump order
(Reporting by Chris Prentice and Sarah N. Lynch; Editing by Andrew Cawthorne, Louise Heavens, Peter Graff)
翻訳:大津賀新也(あたらしい経済)
画像:Reuters

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大津賀新也

「あたらしい経済」編集部
記者・編集者
ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

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ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

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