高リスクを理由に
ブラジルの最高金融政策機関である国家通貨評議会(CMN)は、過度なリスクを理由に、一部の年金基金による暗号資産(仮想通貨)への投資を禁止する決議を承認した。国民補完的年金監督庁(PREVIC)が3月28日に発表した。
この決議は、年金基金の投資範囲を拡大するため、既存の規則4994を改正するものであり、証券取引委員会(CVM)の新たな投資ファンド枠組みに適応する形で採択された。
発表によると、閉鎖型補完的年金事業体(Entidades Fechadas de Previdência Complementar:EFPC)は、ビットコイン(BTC)などの暗号資産に対して、直接的または間接的に保証準備金を投資することが禁止される。
CMNは、暗号資産の「特定の投資特性とリスク特性」を考慮して今回の決定を下したとしている。
EFPCは、特定の企業、職業団体、公的機関などの従業員グループを対象とした、民間の年金基金を運営する非営利組織。
PREVICが、資産運用やガバナンスなどを監督・規制している。
なおPREVICによると、国内には約300以上のEFPCが存在し、総資産は約1兆レアル(約26兆円)に上るという。
これらの基金は、数百万人のブラジル人労働者の退職後の所得保障を担い、国の社会保障制度を補完している。
さらに、この決議では暗号資産以外の投資商品に関する新たな規定も盛り込まれた。
たとえば、プライベートエクイティ投資ファンド(FIP)への投資については、上限が15%から10%に引き下げられ、同一FIPの持分は年金基金全体で40%を超えてはならないとされた。また、年金基金の責任は出資者としての立場に限定され、FIPはCVMの規定に基づき、投資事業体として分類される必要がある。
加えて、不動産関連投資の規制は一部緩和された。年金基金による直接的な不動産購入は禁止されたままだが、既存の不動産資産を2030年までに売却する義務は撤廃された。これにより、市場価格を下回る価格での強制売却リスクが軽減されるとされている。
暗号資産をハイリスク資産として年金基金から排除する動きがある一方で、積極的に導入する動きも見られる。
英国の年金サービス企業カートライト(Cartwright)は、2024年11月4日、同社が運用する年金制度の投資ポートフォリオにビットコインを導入したと発表した。
2024年7月には、米ニュージャージー州ジャージーシティのスティーブン・フロップ(Steven Fulop)市長が、同市の年金基金の一部資金をビットコイン現物ETFに投資する方針を表明。同年8月には、韓国の国民年金公団(NPS)が、ビットコイン関連株であるコインベース(Coinbase)に続き、マイクロストラテジー(MicroStrategy)を投資ポートフォリオに追加した。
参考:発表
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