Hyperliquidがミームコイン「JELLYJELLY」上場廃止、巨額取引の価格操作騒動で

巨額取引による価格操作騒動で

DEX(分散型取引所)「ハイパーリキッド(Hyperliquid)」が、不審な取引を検知したため、ソラナ(Solana)上のミームコイン「JELLYJELLY」の無期限(永久)先物取引を3月26日上場廃止した。

これにあたっては、同日に発生した次に説明する出来事が関係している。

オンチェーン分析のLookonchainによれば、ウォレットアドレス「0xde95~」は「JELLYJELLY」のショートポジションを開設する一方で、大口投資家がDEXで「JELLYJELLY」を投げ売りし、トークン価格が暴落。これによりハイパーリキッドの流動性共有メカニズムHLP(Hyperliquidity Provider)の保管庫が、清算された450万ドル(約6.7億円)相当のショートポジションを引き継ぐことになった。

HLPは、トレーダーに流動性を提供する代わりに手数料収入を得る仕組みだ。しかし、市場価格が急変すると、強制清算されたポジションを引き継ぐ役割を担う。

その後、新たに作成されたウォレット「0x20e8~」がトークンのロングポジションを取ったことで、トークン価格は高騰。これらの大幅な価格変動により、HLPの含み損は24時間で約1,200万ドル(約18億円)にまで拡大した。

「ハイパーリキッド」はこの状況を受け、「JELLYJELLY」の取引を停止し、契約を凍結した。

「疑わしい市場活動の証拠が確認された後、バリデータ会議が招集され、『JELLYJELLY』の取引停止が投票で可決された」と「ハイパーリキッド」はXにて報告。

また、「ハイパーリキッド」の成長を支援するハイパー財団(Hyper Foundation)が、操作に関連するアドレスを除外したオンチェーンデータに基づき、対象となるトレーダーに補償を行う予定だという。補償の詳細は後日発表されるとのことだ。

なお、警告を受けたユーザーへの払い戻しは行われない。一連の対応をめぐり、DeFi(分散型金融)における分散化の是非がX上で議論されている。

批判派は、ハイパーリキッドのバリデータによる行動は中央集権的な管理に似ているとし、分散化の理念を損なうと主張している。

CEXへの上場タイミングで憶測飛び交う

この事件から約2時間後、大手暗号資産(仮想通貨)取引所のバイナンス(Binance)とOKXが相次いで「JELLYJELLY」の永久先物取引を上場した。

これを受け、X上では、「中央集権型取引所が『JELLYJELLY』を上場させ、急成長中のDEXであるハイパーリキッドを潰そうとしている」との声が上がった。

この意見に反応し、オンチェーン分析で知られるZachXBT氏は3月26日、「JELLYJELLY」の価格操作に関与した疑いがある複数のウォレットアドレスを公開。「『JELLYJELLY』を操る0x20e8と0x67fの2人がバイナンスを経由してアービトラムに入金したばかりだから、もしこのような結果になったとしたら、なおさら笑える」と投稿した。

また、今回の対応が「ハイパーリキッド」のユーザーの信頼を失う要因になったとの指摘もある。

ビットゲット(Bitget)のCEOであるグレイシー・チェン(Gracy Chen)氏はXにて「ハイパーリキッドは、FTX 2.0になりそうだ」とし、「今回の対応は未熟で非倫理的、プロらしくなく、ユーザーの損失を招き、誠実さに深刻な疑念を抱かせた」と指摘。

「ハイパーリキッドは、大胆なビジョンを持つ革新的な分散型取引所であるにもかかわらず、KYC/AMLのないオフショアCEXのように運営されており、不正行為を助長している」と述べた。

さらに同氏は「『JELLYJELLY』のマーケットを閉鎖し、有利な価格でポジションを強制決済するという決定は、危険な前例になる」とし、「CEXもDEXも、取引所の基盤は資本ではなく信頼であり、一度失われた信頼の回復は困難だ」と述べた。

加えてチェン氏は、ハイパーリキッドの商品設計には、ユーザーをシステミック・リスクにさらす混合保管庫や、操作への扉を開く無制限のポジション・サイズなど、憂慮すべき欠陥があると指摘。これらの問題が解決されない限り、事件再発の可能性があり、暗号資産業界の次の大惨事につながる危険性があると指摘している。

「JELLYJELLY」は、モバイル決済アプリ「ベンモ(Venmo)」の共同創設者であるイクラム・マグドン・イスマイル(Iqram Magdon-Ismail)氏と、初期のベンモ投資家であるサム・レッシン(Sam Lessin)氏によって作成されたミームコインだ。

「ハイパーリキッド」は、昨年11月末の独自トークン「HYPE」ローンチ以降、1,500億円以上相当になるUSDC流入を記録し話題を集めていた。

画像:iStock/Aleksei_Derin

関連ニュース

この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

合わせて読みたい記事

【3/28話題】イーサリアムPectraのメインネット実装が仮決定、ゲームストップ株急落、Seiが23andMe買収検討など(音声ニュース)

ブロックチェーン・仮想通貨(暗号資産)・フィンテックについてのニュース解説を「あたらしい経済」編集部が、平日毎日ポッドキャストでお届けします。Apple Podcast、Spotify、Voicyなどで配信中。ぜひとも各サービスでチャンネルをフォロー(購読登録)して、日々の情報収集にお役立てください。

Sponsored

バイナンスが「Vote to List」の第1弾選出、「MUBARAK」・「BROCCOLI714」・「TUT」・「BANANAS31」を取扱

海外大手暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンス(Binance)で、ミームコインであるムバラク:Mubarak(MUBARAK)、CZ'Sドッグ:CZ'S Dog(BROCCOLI714)、チュートリアル:Tutorial(TUT)、バナナフォースケール:Banana For Scale(BANANAS31)の4銘柄の現物取引が開始された。バイナンスが3月27日に発表した