AIモデルの民主化をWeb3で目指す 日本人起業家の挑戦
AI(人工知能)モデルの民主化を暗号資産とブロックチェーンを活用し目指すプロジェクトがある。日本人起業家らが立ち上げたUAE拠点のbitgrit(ビットグリット)だ。bitgritは、データサイエンスコンペティションやAIマーケットプレイス機能などを備えたAI×Web3のプラットフォームだ。
今回の記事ではBitgritのプラットフォームの様々な機能や、トークンやブロックチェーンなどWeb3技術をどのように活用していくのかなどについて、ご紹介する。
bitgrit(ビットグリット)とは?
・コミュニティ
bitgritのプラットフォームはコミュニティ、コンペティション、マーケットプレイスなど、いくつかのコンポーネントで構成されている。まず現在も稼働中で、プロジェクトの基盤となるのがコミュニティだ。
bitgritのコミュニティには現在3万5千人超のデータサイエンティストやアナリスト、AIエンジニア、その他データ分野に従事する、もしくは興味を持つ人々らが世界中から参加している(その内訳は業界のプロフェッショナルと学生がほぼ同じ割合)。
なお現在も公式サイトより対象者であれば無料でコミュニティに参加が可能だ。
そしてすでにコミュニティでは、複数のコンペティションが開催されている。このコンペティションがもう一つのコンポーネントとなる。
・コンペティション
コンペティションでは企業がコミュニティに対してカスタムAIモデルをクラウドソーシングすることが可能だ。コミュニティページを確認すると4年前から開催された複数のコンペティションの内容が確認できる。
過去に開催されてものとしては、NASAトーナメントラボの一環としてNCATS(国立先進トランスレーショナル科学センター)による「論文検索アルゴリズムの改善」をテーマにしたものや、ソフトバンクによるFXアルゴリズムに関するコンペティション、JAXAの地表温度、地面の湿度、降水量などのオープンデータを用いた地域気候変動に関するコンペティションなどがあり、現在はNASA主催の空港の混雑予測についてのコンペも開催中だ。
データサイエンティストらはbitgritのコミュニティに参加することで、これらの賞金付きのコンペティションに参加できる。テーマに沿ったAIモデルをサイト上で提出することでエントリーとなる。そして審査を経て優秀なモデルを投稿したユーザーに賞金が付与される。例えば前述のNASAのコンペティションでは、1等賞30,000ドル、2等賞22,000ドル、3等賞15,000ドルが付与される予定だ。
そして次に、現在開発中の重要なコンポーネントがAIマーケットプレイスだ。マーケットプレイス機能ではデータサイエンティストらがbitgritのデプロイインフラを通じ、自分たちの作成したAIモデルを個人や企業向に提供可能となる。現在はコンペティションによって企業が優秀なAIモデルを入手できる仕組みだが、それをさらに拡張し、多くの企業やデータサイエンティストをマッチングする仕組みと言えるだろう。
なおAIマーケットプレイスはAIが活用するアルゴリズムライブラリでもあり、例えばChatGPTやAppleインテリジェンスのような、ヒューマンインターフェースとなるAIがAIを活用するためにアクセスし、暗号資産によって支払いを行うとのこと。
・ジョブボード
またもう一つのコンポーネントとしてジョブボードがある。文字通り企業向けの採用機会の提供だ。企業向けにコミュニティへのヘッドハンティング機能などが提供される予定だ。なお非公開のコンペなどを通じ候補者のAIスキルをチェックすることもできるようになるようだ。
・BGRトークン
そしてそれらのプラットフォーム機能と並行して準備中のコンポーネントが、bitgritの独自トークン「BGR」だ。ブロックチェーン上で発行されるBGRトークンが、ユーティリティトークンとしてこれまで紹介してきたbitgritのコミュニティやAIマーケットプレイスなどに活用されていく。
bitgritコミュニティにおいてBGRトークンは、ユーザーの活動や貢献に応じて配布され、さらなるプラットフォームの活性化に活用される。
またBGRトークンは、bitgritのコンペティションを推進する役割も担う。具体的にはコンペティションに参加するデータサイエンティストが参加時にステーキングしたり、スポンサーが受賞者に支払う賞金として活用される予定だ。スポンサーが賞金をBGRプールし、コンペティションで受賞した参加者がプラットフォーム手数料を差し引いたBGRトークンを獲得できる仕組みが予定されている。
またbitgritのAIモデルのマーケットプレイスでもBGRトークンが活用される予定だ。ただしAIモデルの利用の支払いはBGRトークンはもちろんだが、企業などが利用しやすいようにフィアット(現金)でも可能となっている。
ここまで紹介したようなbitgritのプラットフォームにおけるトークンの配布やユーザー認証、支払いなどに、ブロックチェーン上に構築されたスマートコントラクトが活用され、エコシステムが築かれていく。
なおBGRトークンの発行元やスマートコントラクトが置かれるチェーンは、Avalancheとのこと。bitgritは現在、アブダビの国際金融センターであるアブダビ・グローバル・マーケット(ADGM)にて合法的なトークン発行のフレームワークであるDLT Foundationの設立を完了している。
bitgritのこれまで、これから
bitgritはキヤノンの知的財産法務に従事していた向縄嘉律哉氏と、ネット広告代理店コスモロジーを立ち上げDSP・SSP広告などに携わってきた益永哲朗氏が2017年に日本で共同創業したスタートアップ企業だ。
bitgritについて調べると、数年前からブロックチェーン関連の事業を計画していたことが分かる。
実は当初bitgritは日本国内の株式会社としてトークン発行を準備していた。ただ規制等の関係と、また2012年にアブダビ・グローバル・マーケット(ADGM)などが支援する「Hub71」のインセインティブプラグラムに採択されたことをきっかけに、アブダビ法人となった。
そこからADGMのFSRA(アブダビの規制当局)との意見交換や、前述したDLT Foundationの登録が完了しておりFoundationにおいてBGRトークンを発行した。これはADGMのレギュレーションのもとで正式にユーティリティトークンを発行する初の事例となる。
なおトークン発行についてはADGMの規制当局とのやりとりは決してスムーズではなかったようだ。現在公開されている最新のホワイトペーパーは「v0.5」であるが、過去のバージョンと規制準拠のための様々な試行錯誤が伺える。
ただそれらの調整も整ってきたようで、すでにFSRAからもトークン発行許可を得ておりトークン上場を12月予定で取引所と調整中とのこと。さらに2025年第一四半期にこれまで紹介してきたコンペティションの Web3化や、AIマーケットプレイスのローンチなども予定されている。
いよいよ規制準拠の準備が整い、随時詳しい情報が公開される予定とのこと。ぜひとも今後の展開に注目いただきたい。
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※この記事は一般的な情報の提供のみを目的として配信しているものであり、いかなる暗号資産、有価証券等の取得を勧誘するものではありません。また、当社及びbitgritによる投資助言を目的としたものではありません。暗号資産投資にはリスクが伴います。投資を行う際はリスクを了承の上、ご自身の判断で行っていただくよう、お願い申し上げます。