バイナンス共同創業者、「Web3が身近な社会実現目指す」と語る。伝統的金融や規制当局と協力の姿勢も=BBW

バイナンスのビジョンを語る

バイナンスの共同創業者で最高顧客サービス責任者のイ・ヘ(Yi He)氏が、バイナンスのビジョンや業界を取り巻く環境について考えを述べた。バイナンスブロックチェーンウィークの初日である10月30日の講演にて同氏が語った。

イ氏は「DRIVING MOMENTUM:HE YI ON BINANCE’S VISION」と題した講演に登壇。

なおインタビュアーはコインマーケットキャップのリサーチリードのアリス・リュー(Alice Liu)氏が務めた。

同講演にてイ氏は、「バイナンスはユーザーのためによりシンプルなネットワーク構築を心がけており、お金を得る自由を簡単に手に入れられるようにしたい」と述べた。

またバイナンスの使命として、同社を産業インフラとして構築することを掲げた。

CZの辞任。困難な時期を乗り越えて

昨年はバイナンスにとって困難な年であったとイ氏。 バイナンス創業者であり前CEOのチャンポン・ジャオ(Changpeng Zhao:CZ)氏は昨年11月にバイナンスのCEOを辞任。同氏と取引所は銀行秘密法に基づくマネーロンダリング防止要件を回避したとして、銀行秘密法違反の1件の罪を認めている。またバイナンスは、43.2億ドル(当時約6,714億円)の刑事罰に同意した。

イ氏は、スタートアップや創業者が退くとなると、それはグループにとって本当に大きな挑戦となると話す。今後、ただのスタートアップとしてではなく、お互いに協力し合う強力なチームをもつ成熟した組織として会社を築きたいと述べた。

「若いスタートアップ企業の創業者や共同創業者には、業界の競争を打ち破るための独自スキルが求められる。それは非常に大きな強みであり、成功につながるが、成熟した企業を築く場合、求められるのは組織力であり、若い才能も必要」とし、創業者や共同創業者がいなくても会社が成長を続けられるよう、バイナンスは組織的な方針と環境を整えるフェーズにあると述べた。

またバイナンスは現在内部組織の課題を学びながら克服しつつあるとし、外的な環境である規制にもアプローチをしていることを示唆した。

Web3を直接利用できる未来目指す

さらにイ氏は現在の暗号資産を取り巻く環境についても言及した。

10年前には、誰にも関心を示されなかった暗号資産やビットコインは今や、多くの人々を惹きつけているとし、この状況を踏まえると規制当局からの注目を集めることはうなずけるし、暗号資産業界が伝統的な金融業界の一員であると認められた良い兆候だとした。

しかし、より多くの課題があることも事実とし、規制当局によって、業界に対する理解に差があると指摘。バイナンスとしては伝統的な規制当局や伝統的な金融業界との協力関係を深めていくと述べた。

またイ氏は、規制当局や伝統的金融との協力を深めるバイナンスの姿勢に対し暗号資産業界の仲間から、バイナンスはもう暗号資産コミュニティの仲間ではないのかと聞かれることもあると述べた。

これに対し同氏は、「世界中のより多くの人々をサポートしたいのであれば、生き残って100億人のユーザーに暗号資産を使ってもらいたいのであれば、彼らと協力し、お互いを理解すべき」だとし、この点がとても重要だと述べた。

イ氏はインターネットの黎明期を例に挙げ、「もしGoogleやAmazonが何かをして規制当局に嫌わたら、たとえ非常に素晴らしい技術的才能を持っていたとしても、それはダークウェブで終わってしまう。バイナンスはそうなりたくないし、ユーザーが直接Web3を利用できる未来を実現させたい」と述べた。

暗号資産業界の今後

イ氏は暗号資産業界の今後の成長についても言及した。

イ氏は、暗号資産業界にまだ多くのビルダーがいると信じており、彼らはいくつかのスタートアップを立ち上げ、世界をより良くしようと努力していると評価した。

「謙虚さ」と「協力」が成す力

またイ氏は「謙虚さ」と「協力」が成す力にも言及。同氏は「謙虚さ」はこの世界で知っておくべき最も重要な部分だと考えており、謙虚でなければ、あっという間に落ちぶれると述べた。

またオンライン中心で仕事をするバイナンスでは、チームメンバーとの「協力」に重点を置いているとし、「もしあなたが親切でなく、他の人々と協力したいと思わないのであれば、目標を達成するのは難しいでしょう」と続けた。

今年を振り返って

今年は現物ビットコインETF・現物イーサリアムETFの承認や、規制関連の動き等、暗号資産業界にとって画期的な進歩の年だった。イ氏は今年を振り返る。

規制当局やETFに関してイ氏は、暗号資産業界はまだ小さいけれど、すでに金融業界の一部であると認められたとし、とてもポジティブな情報だと評価した。

また、ここ数日でビットコインの価格が再び上昇している状況に触れ、「私はこの業界に10年いて、多くの瞬間を見てきた」とし、「ビットコインは何度も失敗を繰り返したが、私は常に上昇スパイラルを信じている。そして業界では誰もが成長を信じている」と述べた。

「常にポジティブな面とネガティブな面があるが、自分自身をうまく扱うことが非常に重要であり、目標を理解し、一歩一歩進むことが必要。来年は良い年になると確信している」と続けた。

イ氏は10年前と比較して、状況は何も変わっていないと言われているが、それは事実ではないと述べた。

「私は、この瞬間において、多くの競争(エミュレーション)が起こっていると言える。そして、暗号資産が多くの国の人々の生活を向上させるのに本当に役立っているとも言える」とし、国名は伏せたが、某国では、少なくとも毎月25%以上のユーザーがバイナンスの口座を開設していることを明かした。

この数字はすべての家庭に少なくとも1つのバイナンスアカウントがあることを示すものであり、暗号資産が生活に根付いた使われ方(取引だけでなく、支払手段や友人への送金など)に使われているいう。

またイ氏は、暗号資産が時には、取引だけでなく、「利益」を得るために使われるとし、これはただの取引(トレード)の話ではなく、世界をどう変えるか、より大きな世界をどう築くかという話だとした。

「もしあなたがそれを見ず、信じなければ、目撃することはできません。ステーブルコインでさえ、それは単純なユーティリティです。しかし、それは起こります。革新はすでに始まっている。夢物語ではなく、現実に。私はただ、みんなに知ってほしい。未来はやってきます。ただ待っているだけではなく。今がその時だ」。

画像:あたらしい経済編集部

関連ニュース

関連するキーワード

この記事の著者・インタビューイ

あたらしい経済 編集部

「あたらしい経済」 はブロックチェーン、暗号通貨などweb3特化した、幻冬舎が運営する2018年創刊のメディアです。出版社だからこその取材力と編集クオリティで、ニュースやインタビュー・コラムなどのテキスト記事に加え、ポッドキャストやYouTube、イベント、書籍出版など様々な情報発信をしています。また企業向けにWeb3に関するコンサルティングや、社内研修、コンテンツ制作サポートなども提供。さらに企業向けコミュニティ「Web3 Business Hub」の運営(Kudasaiと共同運営)しています。

これから「あたらしい経済」時代を迎える すべての個人 に、新時代をサバイバルするための武器を提供する、全くあたらしいWEBメディア・プロジェクトです。

「あたらしい経済」 はブロックチェーン、暗号通貨などweb3特化した、幻冬舎が運営する2018年創刊のメディアです。出版社だからこその取材力と編集クオリティで、ニュースやインタビュー・コラムなどのテキスト記事に加え、ポッドキャストやYouTube、イベント、書籍出版など様々な情報発信をしています。また企業向けにWeb3に関するコンサルティングや、社内研修、コンテンツ制作サポートなども提供。さらに企業向けコミュニティ「Web3 Business Hub」の運営(Kudasaiと共同運営)しています。

これから「あたらしい経済」時代を迎える すべての個人 に、新時代をサバイバルするための武器を提供する、全くあたらしいWEBメディア・プロジェクトです。

合わせて読みたい記事

【11/22話題】SECゲンスラー委員長が退任へ、金融庁が暗号資産・ステーブルコイン仲介業の新設検討など(音声ニュース)

米SECゲンスラー委員長が来年1月に退任へ、功績評価の一方で反発や批判も、金融庁、暗号資産・ステーブルコイン仲介業の新設検討=報道、国民・玉木代表が税制改正要望を与党に提出、暗号資産への申告分離課税導入など提案、米裁判所、SECの「ディーラー」定義めぐる訴訟で関連規則を破棄するよう命じる、リミックスポイントが5億円でBTC・DOGE・XRP購入、投資総額30億円に、マスターカードとJPモルガン、ブロックチェーン決済ソリューションを連携 、コインベースが「WBTC」取扱い廃止へ、背景にジャスティン・サンの影響か、2019年のアップビットのハッキングは北朝鮮ハッカー関与か、韓国警察が特定、米ドルステーブルコイン「FDUSD」、スイに対応開始、Injective、オンチェーンAIエージェントSDK「iAgent」リリース

Sponsored

ビットワイズ、「ソラナ現物ETF」を上場申請

米暗号資産(仮想通貨)運用会社ビットワイズ(Bitwise)が、ソラナ(Solana)を基盤とするETF(上場投資信託)の上場申請を、米国証券取引委員会(SEC)に提出したと11月21日発表した。なおこの申請は、株式取引所シーボーBZX取引所(Cboe BZX exchange)を通じて行われたとのこと。またビットワイズは発表上で同商品についてETP(上場取引型金融商品)と記載している

マスターカードとJPモルガン、ブロックチェーン決済ソリューションを連携

米決済大手マスターカード(Mastercard)のマルチトークン・ネットワーク(MTN)が、米銀行大手JPモルガン(JP Morgan)のブロックチェーン基盤決済システム「キネクシスデジタルペイメント(Kinexys Digital Payments)※旧オニキス(Onyx)」と連携したと11月21日発表した