FTXの破産計画が承認。顧客への返済資金で最大165億ドル充当可能に

FTXの破産計画が承認される

破産した暗号資産(仮想通貨)取引所FTXは10月7日、破産計画について裁判所の承認を受けた。これによりFTXは破綻以来、回収された資産最大165億ドルを顧客への返済に充てることが可能となった。

米破産裁判官のジョン・ドーシー(John Dorsey)氏は、デラウェア州ウィルミントンでの公聴会で、FTXの成功は「非常に複雑な連邦破産法第11章(チャプター11)に基づく破産手続きへの対処方法を示す模範的な事例」であるとして、事業縮小計画を承認した。

同破産計画は、FTXの顧客および債権者、米国政府機関、および米国以外のFTXの事業を縮小するために任命された清算人との一連の和解に基づいて構築されている。

これらの和解により、FTXは政府規制当局から提起される可能性のある請求を支払う前に、まず自社の暗号資産取引所の顧客に資産を返済することが可能になる。FTXは、まだ確定されていない破産計画の発効日から60日以内に、顧客の98%(5万ドル以下の資産をFTXで保有していた人々)に返済する予定だ。

かつては世界トップクラスの暗号資産取引所であったFTXは、創設者のサム・バンクマン・フリード(Samuel Bankman-Fried:SBF)氏が、顧客の資金を、自身のヘッジファンド、アラメダ・リサーチ(Alameda Research)による危険な投機に充てたことが明るみに出て、経営破綻した。SBF氏は3月、FTXの顧客から資金を盗んだ罪で禁固25年の判決を受け、同氏は有罪判決を不服として控訴している。

FTXは、SBF氏の刑事訴追中に政府が差し押さえた10億ドルをめぐり、米国司法省(DOJ)と協議を続けている。裁判資料によると、通常は破産手続きでは何も受け取れないFTXの株主は、DOJが差し押さえた資金から最大2億3000万ドルを受け取れる可能性があるという。

FTXは、債権者への返済に147億ドルから165億ドルが充当可能と見積もっており、これは同社が破産申請を行った2022年11月時点での顧客口座価値の少なくとも118%を顧客に支払うのに十分な額である。

商品先物取引委員会(CFTC)や内国歳入庁を含む米国政府機関は、FTXが罰金や税金の負債よりも顧客への返済を優先することを認め、バハマで任命された清算人は、以前は米国での破産申請権限に異議を唱えていたものの、FTXと協力することに同意した。

FTXは、この結果は債権者にとって勝利であり、同社のカオスな崩壊の際に消えた現金および暗号資産をFTXが回収できたからこそ叶ったと述べた。また、同社は、人工知能スタートアップ企業Anthropicなどのテクノロジー企業への投資を含むその他の資産を売却することで、追加の資金を調達した。

FTXのCEOジョン・レイ(John Ray)氏は声明にて、「今日の成果は、この案件をサポートするプロフェッショナルチームの経験とたゆまぬ努力があったからこそ可能となったものです。彼らは、FTXの帳簿を一から作り直すことで数十億ドルを回収し、そこから世界中の資産を整理しました」と述べている。

顧客の反応は様々で、FTXの破綻により、2022年に市場が底を打ってから暗号資産価格が力強く回復するのを逃したことに失望感を表明する人も多くみられる一方、一部の顧客は、最近の暗号資産価値の上昇を反映したより高い返済を要求し、この計画に反対していた。

4人の反対債権者を代表する弁護士のデビッド・アドラー(David Adler)氏は、例えばビットコインの価格は2022年11月の1万6000ドルから6万3000ドル以上に上昇していると述べた。FTXの取引所にビットコインを預けていた顧客は、2年前のそれより低い価格に基づいて100%の回収を受け取っているというFTXの主張を受け入れるのは難しいとアドラー氏は主張している。

FTXは、顧客の資産はSBF氏によって横領されたため、顧客が預けた暗号資産を単純に返却することは不可能だと述べている。

同社によると、破産申請の時点で、FTX.comが保有していたビットコインは、顧客が取引所に預けたと思っていたビットコインのわずか0.1%にすぎなかった。FTXの財務アドバイザーの一人であるスティーブ・カバニック(Steve Coverick)氏は10月7日、破産前に顧客が保有していたのと同じ種類の暗号資産で顧客に返済するためには、公開市場で数十億ドル分の暗号資産を購入するのは「法外なほど高額になる」と証言した。

※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
FTX cleared to repay billions to customers after bankruptcy plan approval (Reporting by Dietrich Knauth in New YorkEditing by Alexia Garamfalvi and Matthew Lewis)
翻訳:荘日明(あたらしい経済)

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「あたらしい経済」 はブロックチェーン、暗号通貨などweb3特化した、幻冬舎が運営する2018年創刊のメディアです。出版社だからこその取材力と編集クオリティで、ニュースやインタビュー・コラムなどのテキスト記事に加え、ポッドキャストやYouTube、イベント、書籍出版など様々な情報発信をしています。また企業向けにWeb3に関するコンサルティングや、社内研修、コンテンツ制作サポートなども提供。さらに企業向けコミュニティ「Web3 Business Hub」の運営(Kudasaiと共同運営)しています。

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