カストディ業務開始へ前進か
米大手銀行バンク・オブ・ニューヨーク・メロン(BNY Mellon)が、顧客保有のビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)のカストディサービス提供へ向け一歩前進したようだ。この動きは米証券取引委員会(SEC)の暗号資産(仮想通貨)カストディに関する方針「SAB 121(Special Accounting Bulletin 121)」遵守に関する姿勢が軟化したことを受けてのことだ。ブルームバーグが9月25日報じた。
なお「SAB 121」は2022年3月にSECが発表した指針だ。このガイドラインは、暗号資産のカストディを行う機関に対し、暗号資産の保有額を貸借対照表上の負債として記録するよう求めており、各所で物議を醸していた。
BNYメロンの声明をもとにした報道によれば、SECのチーフ・アカウンタント室が今年初めに行った審査において、BNYメロンが規制対象の取引所取引商品(ETP)顧客の暗号資産のカストディをBNYの貸借対照表に計上すべきではないと判断したことについて、SECから異議は唱えられなかったという。
なおBNYメロンは、この異議なしという判断が「銀行によるデジタル資産のカストディを効果的に制限するSAB 121の問題を十分に解決するものではない」とし、「必要に応じて、会計主任室(Office of the Chief Accountant:OCA)の『事実と状況』プロセスを通じて、OCAと追加のユースケースについても同様に協議する」と付け加えた。
ちなみにOCAは、SECのオフィスの1つで、会計・監査・統制に関連する基準や規則、投資家保護を目的とした公的財務報告に関する規制関連のアドバイスを行っている組織だ。
なおBNYメロンは、暗号資産ETPの顧客にカストディサービスを提供するために、銀行規制当局と引き続き協議を行っていく予定だという。
BNYメロンは2022年、デジタル資産カストディインフラの技術的な準備が整ったと発表したが、「SAB 121」によりサービスの提供が阻まれていた。米大統領ジョー・バイデン(Joe Biden)氏は5月、「SAB 121」を覆そうとする議員らの新法案に拒否権を発動。
バイデン氏は拒否権発動の声明にて、「SAB121」を「暗号資産を保護する特定の企業の会計義務に関するSECスタッフの技術的な見解を反映したもの」だとし、「共和党が主導するこの決議は、SECが適切なガードレールを定めて将来の問題に対処する能力を不適切に制約するもの。 このようにSECスタッフの思慮深い判断を覆すことは、会計慣行に関するSECの広範な権限を弱体化させる危険性がある。 わが政権は、消費者と投資家の福利を危うくするような施策を支持するつもりはない」と説明していた。
参考:報道
画像:Reuters