コインハイブ事件が控訴審にて逆転有罪に
仮想通貨マイニングプログラム「Coinhive」に関する一連の事件に対し、東京高等裁判所が2月7日、控訴審にて罰金10万円の有罪判決を下したことを、日経新聞など複数のメディアが同日に報じた。
「Coinhive」はウェブサイトに設置するプログラムで、サイトを閲覧した人のパソコン端末の処理能力を使用し仮想通貨「モネロ」をマイニングする仕組みだ。判決文などによると、被告は17年10~11月、自身のウェブサイト上に閲覧者の許可を得ずにコインハイブを設置したとされている。
また同プログラムは、17年9月~19年3月にかけてインターネット上で提供され、誰でも利用できたが、それまでに利用者21人が検挙された。
同事件は、「Coinhive」が不正指令電磁的記録(コンピューターウイルス)の共用や保管の罪に当たるとし、神奈川県警が摘発、被告は18年3月に横浜簡裁から罰金10万円の略式命令を受けた。被告は無罪を主張して正式裁判に移行、その後19年3月に横浜地裁が無罪の判決を下していた。
検察側は無罪の判決を不服とし19年4月10日付けで東京高裁に控訴、東京高裁は一審の横浜地裁判決を破棄し、2月7日に有罪判決を下した。
編集部のコメント
同事件については、専門家からは「Coinhive」がユーザーに無断でCPUに負荷を与えるならば、ウェブサイトの広告も同様ではないかという声も出ていました。そして一審判決で同プログラムが「閲覧者の意図に反するプログラムに該当する」と認定をしたものの、「採掘による消費電力の増加や処理速度の低下などの影響は軽微だった」といった理由から不正なウイルスとするには「合理的な疑いが残る」とし、被告に無罪判決を言い渡していました。また、捜査当局に対し「事前の注意喚起や警告などもない中でいきなり責任を問うのは行き過ぎの感を免れない」と指摘されていました。控訴審で検察側はコインハイブについて「閲覧者の意図に反する動作を指令しており、PCの使用権や管理権が侵害されている」としてウイルスに当たると改めて主張。被告側は「不正なウイルスには当たらない」と訴えていました。
同プログラムの閲覧者は、自らのPCでマイニングが行われていることが、広告と違って目には見えないものの、同プログラムがCPUに負荷を与えるならばその影響は類似したものだという意見があります。しかし、一方でサイト閲覧者に対して許諾を求める作りに何故しなかったのかという疑問の声も挙がっています。 また業界関係者の中では、同プログラムが閲覧者に対し、どこまで精神的負担や金銭的被害がであったのかが報道を見る限り焦点が当たっていないので、被害のないプログラムであるならば、一審の無罪判決は妥当ではないかというような意見も出ています。
コメント:大津賀 新也(あたらしい経済)
(images:antoniokhr)