米最高裁が「シェブロン法理」無効化、政府の規制権限を制限で暗号資産業界には追い風か

政府の規制権限制限へ

米連邦最高裁判所が、「規制を巡る法律が曖昧な場合に政府機関へ解釈を委ねるという判例」を無効とする判断を6月28日下した。

これは1984年から続いてきた「シェブロン法理」と呼ばれるルールだ。

「シェブロン法理」は、1984年の「シェブロンU.S.A.対天然資源防衛協議会事件」という最高裁判例に由来している。同事件で最高裁は、法律があいまいな場合、裁判所は連邦政府機関の解釈に従うべきだという法的テストを提示した。

今回最高裁判事らは、6対3でこの原則を覆すに至った。なおこの議論はジョン・ロバーツ(John Roberts)最高裁長官が率いた。

ロバーツ氏は自身の意見の中で「経験上、シェブロンは実行不可能」だとし「シェブロンの枠組みの決定的な特徴は、法定の曖昧さを特定することである。しかし、曖昧さの概念は常に意味のある定義から逃れてきた」と述べている。

一方でエレナ・ケイゲン(Elena Kagen)判事はこの意見に反論。英新聞ガーディアン紙によれば、「今日、裁判所は台本をひっくり返した。連邦議会が解釈の裁量を残した場合、権力を行使するのは『(当局ではなく)裁判所』である。司法の謙遜は、司法の傲慢に取って代わられる」と反対意見を述べたという。

また、暗号資産(仮想通貨)に批判的な姿勢で知られるエリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren)上院議員はXにて、この結果を「裕福でコネのある人々を儲けさせるための、極右による権力掌握だ」とし、「企業の利害関係者は、消費者、労働者、安全、環境を犠牲にして、過激派裁判官にルールを書かせたがっている」と非難している。

なおシェブロン法理は、選挙で選ばれたわけでもない連邦規制当局にあまりにも大きな権限を与え、より明確な法律を制定する責任を議会に問わないとして、しばし保守派の人々から批判されてきた。

暗号資産業界では肯定的な向きも

しかしシェブロン法理の無効化は、規制の透明性が欠如した中で米証券取引委員会(SEC)による強制執行が行われている暗号資産業界にとっては追い風になる可能性もあるようだ。

暗号資産に好意的である人物として知られる共和党のトム・エマー(Tom Emmer)下院議員はXにて、「シェブロン法理を覆す最高裁の決定は、ゲイリー・ゲンスラー(Gary Gensler)をはじめとする、選挙で選ばれたわけでもない官僚による規制の乱用にとどめを刺すものだ」と述べている。

米最高裁は6月27日、SECの重要な強制執行プロセスのひとつを剥奪する判決を下した。また、連邦政府機関による内部裁判官の起用は陪審裁判を受ける憲法上の権利に違反するとの判断を6対3の賛成多数で下している。

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参考:ガーディアン最高裁シラバス(シェブロン法理)最高裁シラバス(SEC)
image:iStocks/gorodenkoff

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髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
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