司法省、MEVエクスプロイトで2500万ドル相当の暗号資産盗んだ兄弟を起訴

MEVボットトレーダーを標的に

米司法省(DOJ)が、MEVボットに攻撃を仕掛け、2500万ドル(約38.4億円)相当の暗号資産(仮想通貨)を盗んだ兄弟への起訴状を5月15日公開した。

なおMEV(最大抽出可能価値)は、ブロックチェーンのマイナーまたはバリデーターがブロックを生成する過程で、トランザクションの組み込み・除外・順序の変更を行うことで、通常のブロック報酬やガス報酬とは別で得られる利益のこと。MEVボットは、このMEVを得るために動作するボットのことだ。

起訴されたのはボストン在住で24歳のアントン・ペレール・ブエノ(Anton Peraire-Bueno)とニューヨーク在住で28歳のジェームス・ペレール・ブエノ(James Peraire-Bueno)だ。両名は電信詐欺、マネーロンダリングの共謀で起訴された。5月14日に逮捕され、それぞれマサチューセッツ州とニューヨーク州の法廷に出廷したとみられる。

起訴状によれば、彼らは名門大学で数学とコンピューターサイエンスを学んだ兄弟であり、それにより培われた専門技術と暗号資産取引の専門知識を駆使して、イーサリアム(Ethereum)ブロックチェーンの完全性を悪用し、被害者である暗号資産トレーダーから約2500万ドル相当の暗号資産を不正入手したという。

司法省によれば、兄弟はMEVボットを使用するトレーダーを標的にし、「MEV-Boostリレーコードの脆弱性を悪用」し、入ってくる取引を先取りしていたという。

兄弟はボットを使って裁定(アービトラージ)取引の機会を特定し、ネットワーク上で処理される前に取引をプレビューし、実質的に偽の取引をコピーして作成し、被害者の暗号資産を盗み出したとのことだ。

また兄弟は暗号資産を盗んだ後、これら暗号資産の返却要求を拒否し、不正に得た利益を隠すために多くの手段を講じたという。

また彼らは数カ月にわたるエクスプロイトの綿密な計画の中で、ペーパーカンパニーを設立し、複数のプライベートな暗号資産アドレスと海外の暗号資産取引所を使用するなどして、身元を隠し、盗んだ収益を隠すための土台を築いていたという。

また彼らは、エクスプロイトの実行方法や関与を隠す方法、犯罪資金の洗浄に使用できるKYC(本人確認)が限定的な暗号資産取引所、暗号資産事件の専門知識を持つ弁護士、身柄引き渡し手続き、最終的に起訴される可能性がある犯罪に関する情報をオンラインでリサーチしていたという。

リサ・モナコ(Lisa Monaco)副司法長官は、「兄弟は、技術的に洗練された最先端のスキームによって、イーサリアムの暗号資産で2500万ドルを盗んだ。彼らは何カ月も計画し、数秒で実行した」と述べている。

もし兄弟が有罪判決を受けた場合、両者はそれぞれ、各訴因で最高懲役20年の刑に処される可能性がある。

関連ニュース

参考:司法省
images:iStocks/gorodenkoff

関連するキーワード

この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

合わせて読みたい記事

【12/20話題】NTTドコモのERC6551搭載ゲームβ版、「暗号資産を国民経済に資する資産とするための緊急提言」正式承認など(音声ニュース)

ブロックチェーン・仮想通貨(暗号資産)・フィンテックについてのニュース解説を「あたらしい経済」編集部が、平日毎日ポッドキャストでお届けします。Apple Podcast、Spotify、Voicyなどで配信中。ぜひとも各サービスでチャンネルをフォロー(購読登録)して、日々の情報収集にお役立てください。

Sponsored