コインベースの仮抗告の申し立て却下を要請
米証券取引委員会(SEC)が、米大手暗号資産(仮想通貨)取引所のコインベース(Coinbase)との裁判で、コインベースによる仮抗告の申し立てを却下するよう5月10日裁判所に求めた。
SECは昨年6月、コインベースが未登録の取引所を運営し、同社提供のステーキング・プログラムが証券取引法に違反しているとしてコインベースを提訴した。
コインベースは、SECの主張に反発し訴訟を棄却するよう申し立てたが、キャサリン・ポーク・ファイラ(Katherine Polk Failla)判事は3月、この申し立てを却下。
その後コインベースは4月に行った仮抗告にて、SECが度々引用する「ハウィーテスト」をめぐり各所で意見の相違がある点を指摘しながら、SECが暗号資産取引を「投資契約」として規制できるかという点について裁判所の意見を仰いでいた。
コインベースは、裁判所がデジタル資産に関する事件への現行法の適用に苦慮していると述べていた。
なお「ハウィーテスト」は、米国において特定の取引が、証券取引の定義の一つである「投資契約」に該当するかどうかを判定するテストである。
提出資料にてSECは、新たな規制ルールの策定を求めるコインベースの請願について、「コインベースが求める規則制定は現在のところ不要であるという委員会の判断は、合理的に説明がつくものである」と主張。
またSECは「コインベースがハウィーテストと現在の証券規制の枠組みを嫌っていることは明らかであり、既存の法律を遵守するためにコストがかかる可能性のある方法で業務を整理することを決定した」と指摘。
「しかし、コインベースがそうすることを決定し、数十年前に確立された判例を自らの政策目標やビジネスニーズに合うように書き換えることを望んでいることは、この訴訟で仮抗告を早々に認定する説得力のある理由にはならない」とSECは主張している。
コインベースの最高法務責任者のポール・グレワル(Paul Grewal)氏はXにて5月11日、SECの対応に反発した。
グレワル氏は「SECは リップル社における同様の不服申し立てについて、自身の主張と明らかに矛盾している」と指摘。
SECがリップル裁判にて述べた「SECの主張を司る法的枠組みの重要な側面に関する裁判区内の分裂が、控訴審での解決の必要性を高めている現在、判決の控訴審での再検討を得ることにはさらなる利点がある。これらの疑問に対する最終的な回答は、(中略)多くの係争中のケースに影響を与える可能性がある」という発言を引用し、首尾一貫しないSECの姿勢を非難した。
なお裁判所は3月、SEC対コインベース訴訟において、SECの主張には説得力があるとしコインベースの申し立てを却下し、SECのほとんどの請求を続行させると決定したが、コインベースウォレットに対する請求については根拠がないとして棄却している。
SECは、コインベースがウォレットサービスを提供することで、未登録のブローカーとして第三者のために有価証券取引を行う事業を運営していたと申し立てていた。
Today @SECGov filed its response to our request to file an interlocutory appeal with the 2nd Cir. The Commission couldn’t help contradicting its own arguments for the same kind of appeal in Ripple. Here’s just example–compare what they said before to what they say now. 1/3 pic.twitter.com/LkbXefV07N
— paulgrewal.eth (@iampaulgrewal) May 10, 2024
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参考:提出書類
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