周南公立大学がDiamond Handsとデジタル学生証の実証へ
山口県の周南公立大学が、DID(分散型アイデンティティ:Decentralized ID)技術を利用したデジタル学生証システムの開発と実証を行うと2月28日発表した。
なお同システムの開発および実証に伴い、周南公立大学はDiamond Hands(ダイヤモンドハンズ)と業務委託契約を締結したという。なおダイヤモンドハンズは、ビットコインとライトニングネットワークに関する日本最大のコミュニティや事業を運営する企業だ。
なお同プロジェクトでは、大学に留まらないデジタル証明書としての発展を展望し、周南市とも連携するという。
また発表によると周南公立大学とDiamond Handsが共同で開発するデジタル学生証システムでは、米Block(ブロック)支援のTBDが主導するWeb5プロトコルを採用するとのこと。
Web5は、DIDとVC(検証可能な証明書)を1つのフレームワークで統合し、分散型のアプリケーションの開発を容易にするプロトコル。データの改竄を防ぐために記録のハッシュをブロックチェーンに刻むことが可能で、ブロックチェーン関連技術との親和性もWeb5の特徴の1つである。なお同プロトコルは、世界の標準化技術の管理団体W3Cが策定したDID標準およびVC標準に準拠している。
このように今回のプロジェクトは単なる学生証のデジタル化ではなく、Web5を用いたDIDとVCとして開発・実証が行われるとのこと。同学生証システムにより在籍の事実、氏名、生年月日、成績を含む履修履歴などの個人情報を学生自身が管理したまま、第三者が検証することを可能にすることで、利便性、安全性、プライバシーの3つの同時向上が期待されるとのことだ。
周南公立大学によると同プロジェクトで開発されるデジタル学生証システムは、実証実験を経て早ければ2026年にも実運用することが展望されているとのこと。同大学によると、DIDを利用したこのような取り組みは世界的に見ても先進的な事例であるという。
さらにこのDIDを利用した学生証のシステムは、ライトニングと組み合わせることで、将来的には証明可能な個人の活動履歴と財産的価値の移転を関係づけることも想定しているとのこと。
何かの目標を達成した時に自動で金銭的な褒賞が獲得できるなど、分散処理技術と自動化を融合させたインセンティブスキームを設計することや、学生証アプリからの実店舗への直接の支払いなど証明証の可能性がライトニングと組み合わせることで広がるとのことだ。
なおライトニングは、ビットコインブロックチェーンのオフチェーン・スケーリングソリューション。ブロックチェーンの外で取引を行うオフチェーン取引により、BTCの決済速度の向上や少額決済(マイクロペイメント)、安価な送金手数料を実現する技術である。
周南公立大学は同プロジェクトの成果を国内だけでなく、海外にも向けて発信していく予定であるとのこと。
ちなみに同プロジェクトに関する費用の一部は、西京銀行地域DX共同研究講座から資金協力を受けているとのことだ。
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