香港でも調査へ
香港の個人情報保護委員会(PCPD)が、暗号資産(仮想通貨)プロジェクト「ワールドコイン(Worldcoin)」の香港事務所6つに立ち入り調査を行ったと1月31日発表した。
PCPDは、ワールドコインによる機密個人データの収集と処理が、個人データ(プライバシー)条例(PDPO)の要件に違反している可能性があると考えており、一般市民の個人データプライバシーを保護する観点から調査を開始したとのことだ。
PCPDのエイダ・チョン・ライリン(Ada CHUNG Lai-ling)氏は、一般市民へワールドコインへの参加を避けるべきと忠告。「虹彩情報はバイオメトリクス・データの一種。一般的に、バイオメトリクス・データは一意であり、改ざんすることができないため、センシティブな個人データとみなされる。個人データの収集、保有、処理、利用を管理する香港のデータ利用者としての個人または組織は、PDPOおよび関連するデータ保護原則(DPPs)の要件を遵守しなければならない」と述べている。
また同氏は、ワールドコインのバイオメトリックス・データを収集する正当性やその範囲・目的、使用目的、保持期間や開示先の詳細、同データ保護のための安全予防措置などを考慮すべきと指摘している。
「ワールドコイン」は、AIチャットボットサービス「ChatGPT」などの人工知能で知られるOpenAIの創業者サム・アルトマン氏が、物理学者のアレックス・ブラニア(Alex Blania)氏と共に開発を進めるプロジェクト。
「ワールドコイン」は「オーブ(Orb)」と呼ばれるボール状のデバイスで網膜をスキャンし、各人それぞれの虹彩の特徴をデジタルコードに変換することで個人を識別する「World ID」を発行する。現在このスキャンは無料ででき、スキャンしたユーザーは現在無料の暗号資産「Worldcoin(WLD)」を受け取れる。この「WLD」の配布により、ベーシックインカム実現も計画されているという。
規制当局による調査対象に
ワールドコインの情報収集については香港以外の国々の規制当局からも調査対象となっている。
昨年7月25日には、英国のデータ規制機関の情報コミッショナーズ・オフィス(ICO)が「ワールドコイン」を調査すると発表。
同年7月28日には、フランスのデータ保護機関(CNIL)がワールドコインのデータ収集の合法性を疑わしいとして、調査していることが各報道機関によって報じられた。なお同調査は、ドイツのバイエルン州のプライバシー規制当局が監督権をもつという。
同年10月にはケニア政府の合同特別調査委員会が、同国規制当局に対し、ケニアでの「ワールドコイン」の事業停止を勧告している。
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参考:PCPD
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