自称ビットコイン開発者クレイグライト、知的財産訴訟の和解を提案

ライト氏が和解案を提出

自称ビットコイン発明者のクレイグ・ライト(Craig Wright)氏が、業界団体クリプト・オープン・パテント・アライアンス(Crypto Open Patent Alliance:COPA)とその他すべての関係者に対し、和解案を提示した。同氏はこれについて1月24日に声明を出している。

この和解案は、ライト氏がビットコインの生みの親であるサトシ・ナカモトと同一人物であることを証明しなくてはならない法的圧力と、ビットコインの知的財産権をめぐる裁判を回避するためと見られている。

英国高等法院のジェームズ・メラー(James Mellor)判事は昨年12月、2007年までさかのぼる95の文書について、ライト氏がサトシ・ナカモトであることを証明する印刷された証拠を提出しなければならないとの判決を下した。またこの判決の際に、裁判の開始日は2月5日に再設定された。(裁判は当初、1月15日に開始予定であった)

ライト氏の提案

今回の声明でライト氏は、「2月、私はロンドンの高等法院で個人と法人のグループと対決することになっており、そこで私はビットコインの作成者としてビットコインに関する私の知的財産権を堅持するつもりである」としたうえで、長引く裁判の「無用な出費を制限するため」、和解を申し立てている。

ライト氏は、長引く裁判は自身のみならず、自身の法的対立者を含む「誠実な競争相手」の進歩から集中的団結力を削ぐことになると述べている。

またライト氏は、今までの様々な訴訟の焦点は「ビットコインが中心的原理に忠実であり続けることを義務付けるためのものであった」とし、同氏が「ビットコイン開発者」に著作権を主張したのは、こうした原則の継続性を守るためだったと主張した。

ライト氏は和解案として「BTC、BCH、ABCデータベースに関する(ライト氏が保有すると主張する)データベース権と著作権を放棄し、知的財産権が尊重され利用される、競争的で公正な市場における技術のオープンな商業化を促進するために、これらのデータベースを集団的に管理、運営、もしくは所有する法的対立者に、永久に撤回不可能なライセンスを提供することに同意する」ことを提示した。

ライト氏はこの和解案により「彼らがビットコインSV(BSV)と同等に公正な競争を行えるようなるだろう」と述べている。

ちなみにBSVはビットコインのハードフォークによって誕生したビットコインキャッシュ(BCH:Bitcoin Cash)が、その後ハードフォークしたことによって2018年11月に誕生した暗号資産だ。自らをサトシ・ナカモトであると主張するクレイグ・ライト(Craig Wright)氏らが開発し、ハードフォークを行った。

またライト氏はこの申し出の中で、訴訟におけるすべての法的請求を終結させ、訴訟費用は各当事者が負担することを提案。同訴訟の参加者に対し、有利な裁定を得られるまで費やしたと予想される金額を、シングルマザーを支援するオーストラリアの慈善団体のバーンサイド(Burnside)、または合意した別の慈善団体に寄付することを奨励した。

なおライト氏は、同裁判で金銭的な利益を得ないこと約束し、受け取る可能性のある資金はすべて慈善団体に寄付することを約束している。

またライト氏の提案には複数の項目も盛り込まれた。具体的には、すべての当事者が、新しいビットコインデータベースを作成、コピー、フォークするために、BTC、BCH、ABC、BSVのデータベースを使用しないこと、またはその関連会社に使用させないことに同意すること、反対派がライト氏に対するメディアキャンペーンを中止することに同意することなどだ。

ライト氏による提案は1月末まで有効とのこと。なおすべての当事者は、この和解案に合意するか、裁判に移行するか、この申し出の日から7日以内に決断する必要があるという。

「私は、これらの条件が広く議論の余地のないものであり、業界全体にとって有益なものであり、どのような形であれその成功を保証するためにビットコインの歴史に新たなスタートを描くことを意図したものであると信じています。ご連絡をお待ちしております」とライト氏は提案を締めくくっている。

ライト氏は、2008年にサトシ・ナカモトというペンネームでビットコインのホワイトペーパーを書いたと主張しているが、この主張には多くの人が異論を唱えている。

2021年、ジャック・ドーシー氏が支援するCOPAは、ビットコイン・ブロックチェーンの創設文書を著作権で保護しようとしたライトに対して訴訟を起こしている。

ドーシー氏は昨年1月、ビットコイン開発者を訴訟から守るためのファンド「ビットコイン・リーガル・ディフェンス・ファンド(Bitcoin Legal Defense Fund)」を立ち上げようとしていた。

関連ニュース

参考:ライト氏の声明判決文
images:iStock/4×6・alphaspirit

この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

合わせて読みたい記事

【11/1話題】イミュータブルがSECからウェルズ通知、アルゼンチンLABITCONFがサトシの正体明かすと告知など(音声ニュース)

イミュータブルが米SECからウェルズ通知受ける、「IMX」証券性の疑いか、アルゼンチンのカンファレンス「LABITCONF」、サトシ・ナカモトが正体明かすと告知、フランクリン・テンプルトン、「オンチェーン米国政府マネーファンド」をイーサL2「Base」に展開、Crypto[.]comがSEC登録ブローカーディーラー買収、米国ユーザーに株式取引機会提供へ、セキュリタイズ、トークン化資産の管理機能統合の「Securitize Fund Services」立ち上げ、米マイクロストラテジー、「21/21プラン」で420億ドル調達を計画、ビットコイン購入資金で、BIS、中国主導の「中銀デジタル通貨」プロジェクトから離脱、Sui対応の携帯型ゲーム機「SuiPlay0X1」、格闘ゲーム『サムライスピリッツR』リリースへ、ヴィタリック、イーサリアム最後のチェックポイント「ザ・スプラージ」解説、バイナンス共同創業者、「Web3が身近な社会実現目指す」と語る。伝統的金融や規制当局と協力の姿勢も=BBW

Sponsored

アルゼンチンのカンファレンス「LABITCONF」、サトシ・ナカモトが正体明かすと告知(有識者コメントあり)

アルゼンチンで11月1日から開催されるビットコイン(Bitcoin)のカンファレンス「LABITCONF(Latin American Bitcoin & Blockchain Conference)」にて、ビットコインの考案者であるサトシ・ナカモトが自身の正体を明らかにすると、同カンファレンスの公式Xよりプレスリリースが出された

フランクリン・テンプルトン、「オンチェーン米国政府マネーファンド」をイーサL2「Base」に展開

米大手資産運用企業フランクリン・テンプルトン(Franklin Templeton)が、「オンチェーン米国政府マネーファンド(OnChain U.S. Government Money Fund:FOBXX)」をイーサリアム(Ethereum)のレイヤー2(L2)ブロックチェーン「ベース(Base)」上でローンチした。フランクリン・テンプルトンが公式Xにて10月31日発表した