法務大臣が非公開に語る
バルカン半島に位置するモンテネグロで逮捕された暗号資産(仮想通貨)起業家のド・クオン(Do Kwon)氏は韓国ではなく米国に送致され、刑事責任を問われることになりそうだ。関係者の話としてウォールストリートジャーナルが12月7日報じた。
今年3月にモンテネグロで逮捕され、収監されている韓国籍のクオン氏は現在、米国と韓国から身柄の引き渡しを求められている。
報道によれば、モンテネグロの裁判所は11月、クオン氏の身柄引き渡しを承認したが、どちらの国の当局へ送致するかはモンテネグロ法務大臣のアンドレイ・ミロヴィッチ(Andrej Milovic)氏に一任したという。
なおミロヴィッチ法務大臣は、まだその決定を発表していない。また、クオン氏が裁判命令に不服申し立てを行えば、最終判決が下るまで送致に関する発表は行わないとみられている。
しかしミロヴィッチ法務大臣は、他の政府高官との非公開の話し合いの中で、クオン氏を米国へ送るつもりだと語ったという。また、その話し合いには11月に行われたジュディ・ライジング・ラインケ(Judy Rising Reinke)駐モンテネグロ米国大使との会談も含まれているという。
ミロヴィッチ法務大臣はこの協議に関するコメントを控えているが、声明にて国民には速やかに決定を知らせると伝えている。
クオン氏のモンテネグロでの弁護士は、ミロヴィッチ法務大臣の決定について確認できないとしながらも、米国へ送致される可能性は否定できないとの考えを示したとのことだ。
テラの騒動
韓国籍のクオン氏は、2022年5月に暗号資産市場を揺るがせたステーブルコイン「テラUSD:TerraUSD(UST)」を運営する韓国拠点のテラフォームラボ(Terraform Labs)の元CEOである。
法定通貨の価格に連動する「ステーブルコイン」としてかつては世界の暗号資産上位10位内に入っていたテラUSDは、昨年5月に破綻。USTやLUNAなどの暗号資産が無価値となった。これにより世界の投資家の間で総額420億ドルの損失が発生したとの試算もあり、投資家らからクオン氏は詐欺で訴えられている。その後インターポールの手配リストにも掲載された。
昨年6月には、韓国捜査当局がテラプロジェクトの関係者に出国禁止令を出し、同年9月には、韓国の裁判所がド・クオン氏を含む6人に逮捕状を発布。今年2月20日には米証券取引委員会(SEC)が、クオン氏とテラフォームラボを証券詐欺指揮の罪で提訴している。
前述のとおり韓国及び米国当局は、クオン氏と同氏の側近ホン・チャンジュン(Hon Chang Joon)氏の身柄とコンピュータの引き渡しを要請している。
逮捕の経緯
クオン氏とチャンジュン氏は3月、モンテネグロの首都ポドゴリツァの空港にてドバイ行きの飛行機に乗ろうとしたところ、フライトのパスポート審査で偽造パスポートを使用したとして、文書偽造の犯罪容疑がかけられ拘束された。ポドゴリツァの裁判所は2人に30日間の公判前勾留を命じていた。
その後5月12日に下級裁判所は、クオン氏とチャンジュン氏をそれぞれ40万ユーロ(約5901.4万円)で、監督付き保釈することに合意した。しかし同月24日にモンテネグロ最高裁判所は、この保釈裁定を却下。
裁判所は6月19日、両氏に懲役4カ月の実刑判決を下している。
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参考:WSJ
images:Reuters