国内2例目の「デジタル環境債」発行に向け、日立・JPX総研・野村・BOOSTRYが協業

日立が「デジタル環境債」発行に向け、JPX総研・野村・BOOSTRYと協業

日立製作所による「グリーン・デジタル・トラック・ボンド(デジタル環境債)」発行に向け、日立、JPX総研、野村證券、BOOSTRY(ブーストリー)の4社が協業することを11月16日発表した。

「デジタル環境債」は、デジタル技術を活用して、グリーン投資に関連したデータの透明性の向上やデータ収集の効率化をめざす債券だ。この「デジタル環境債」を発行するのは日本取引所グループに続き、国内2例目になるとのこと。今回は日立が前回と同じく公募のSTO(セキュリティトークンオファリング)として発行するという。

なお「デジタル環境債」は、これまでの環境債(グリーンボンド)で発行体・投資家双方で課題とされていた、グリーン投資にかかるデータの不透明性やデータ収集にかかる作業の煩雑性に対し、ブロックチェーンなどのデジタル技術を活用することで、透明性の向上及びデータ収集の効率化を目指すものとなっている。

今回の「デジタル環境債」では、日立とJPX総研が開発した、環境改善効果をタイムリーに参照できる「グリーン・トラッキング・ハブ」に加え、BOOSTRY提供のブロックチェーン基盤を活用した社債型セキュリティトークン(デジタル債)のスキームを活用するとのこと。

従来の証券保管振替機構(ほふり)による管理に代わり、BOOSTRYが主導するコンソーシアム型ブロックチェーンネットワーク「ibet for Fin」を用いてデジタル債の発行・管理を行い、発行から期中管理、償還までの業務プロセスを電子的方法により完結させるという。「ibet for Fin」に係るシステム上で社債原簿の管理を行うとともに、従来型の社債では困難であった発行会社による社債権者の継続的な把握などを可能にしているとのことだ。

日立は「デジタル環境債」により調達した資金を、2030年度までの事業所におけるカーボンニュートラルの実現に向けて、中央研究所「協創棟」(省エネルギービル)に関する、建設費用及び改修費用のリファイナンスに充当する予定としている。なお「協創棟」は2019年3月に竣工し、2021年度にカーボンニュートラルを達成したとのこと。

そして「デジタル環境債」によって調達した資金使途の透明性を高めるため、日立は「グリーン・トラッキング・ハブ」を活用して、資金充当した省エネルギー性能を有する建物(協創棟)のエネルギー消費量を自動的に計測し、ベンチマーク比でのCO2排出削減量、エネルギー削減量に換算、データ開示を行うとのこと。

これにより、投資家がいつでも外部からモニタリングでき、年次のレポーティングだけではない高い透明性をめざすという。またBOOSTRYへのデータ連携を行い、ibet for Fin上にエネルギー削減量やCO2排出削減量を記録することで、データの透明性・適時性を高めることが可能とのことだ。

なお「ibet for Fin」にはエンタープライズ向けブロックチェーン基盤「クオーラム(Quorum)」が採用されている。

また「グリーン・トラッキング・ ハブ」には、エンタープライズ向けブロックチェーン基盤「Hyperledger Fabric(ハイパーレジャーファブリック)」が採用されている。

昨年4月、日本取引所グループ(JPX)が国内初のブロックチェーンを用いた「デジタル環境債」の発行に向け、日立製作所・野村證券・BOOSTRYと協業を開始。同年6月に発行していた。なおJPXが発行した同「デジタル環境債」の発行総額は5億円、償還年限は1年、クーポン利率は0.05%となっている。

STOとは

STOとは、発行会社が従来の株式や社債等に代わり、ブロックチェーン等の電子的手段を用いて発行するトークンに株式や社債等を表示する「セキュリティ・トークン」により資金を調達するスキームだ。2020年5月1日の金融商品取引法改正及び関連する政省令の改正施行により「電子記録移転有価証券表示権利等」として規定され、法令に準拠した取扱いが可能となっている。

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参考:野村ホールディングス
画像:iStocks/metamorworks

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この記事の著者・インタビューイ

大津賀新也

「あたらしい経済」編集部
記者・編集者
ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

「あたらしい経済」編集部
記者・編集者
ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

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