プロジェクト・ガーディアンの一環で
シンガポール金融管理局(MAS)が、資産トークン化に関する様々なユースケースを探るため、5つの業界でのパイロットテストを開始したと11月15日発表した。
発表によれば、同テストはシンガポール金融管理局(MAS)の官民連携イニシアチブ「プロジェクト・ガーディアン(Project Guardian)」の下、上場・流通・取引・決済・資産の5つの分野のサービスに関して行われるという。
なお「プロジェクト・ガーディアン」とは、MASが昨年5月より推進するプロジェクトだ。ホールセール(金融機関などの大口業務)の資金調達市場の効率化と流動性向上を目的とした、トークン化債券・預金の機関投資家間での取引可能性などを検討している。
同テストには、「プロジェクト・ガーディアン」に参加する17の金融機関から、複数の大手金融サービス企業らが協力するという。
具体的な取り組みとして、シティ(Citi)、T.ロウ・プライス・アソシエーツ(T. Rowe Price Associates, Inc.)、フィデリティ・インターナショナル(Fidelity International)は、二国間のデジタル資産取引の仕組みをテストしており、デジタル資産取引のリアルタイムの取引後報告と分析を模索しているという。
またBNYメロン(BNY Mellon)とOCBCは、異種ネットワーク間で安全かつ相互運用可能な決済ソリューション実現のため、クロスボーダーFX決済ソリューションのテストを行っている。
アント・グループ(Ant Group)は、トレジャリー・マネジメント・ソリューションをテストしている。同ソリューションは、シンガポールにおけるリアルタイムの多通貨清算・決済を叶えるという。
またフランクリン・テンプルトン(Franklin Templeton)は、デジタル資産ネットワークを活用してファンドの株式記録を管理するVCC(Variable Capital Company)構造によるトークン化されたマネー・マーケット・ファンドの発行をテストしている。
そしてJ.P.モルガン(J.P. Morgan)とアポロ(Apollo)は、デジタル資産を利用した資産サービシングのための時間のかかる手作業プロセス削減の実現に取り組むために協力している。
MASはこれらの取り組みについて、「プロジェクト・ガーディアンの下でのこれらの開発は、流動性を解放し、投資機会を解き放ち、金融市場の効率性を高めることを目的として、デジタル資産の制度的導入を促進するだろう」と述べている。
またMASは、トークン化された金融資産やアプリケーションをホストするオープンなデジタル・インフラの設計を模索するため、新たなイニシアチブ「グローバル・レイヤー・ワン(GL1)」を立ち上げた。
さらにMASは、金融業界と協力し、金融機関間で独立したネットワークを介してデジタル資産を交換するための共通のフレームワークとして機能する「相互リンク・ネットワーク・モデル(Interlinked Network Model:INM)」を開発。金融機関、FinTech、業界団体と共同で作成された、INMのホワイトペーパー「Interlinking Networks」もすでに公開されているという。
MASはまた、国際通貨基金(IMF)をプロジェクト・ガーディアンの政策立案者に加えたことも併せて発表している。
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参考:MAS
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