事前設定条件に従った自動支払い可能に
金融大手JPモルガン(JPMorgan)が、ブロックチェーンベースの独自デジタル通貨「JPMコイン」のプログラマブル決済(決済の自動実行)を開始した。JPモルガンのマネージングディレクターであるナヴィーン・マレラ(Naveen Mallela)氏が、リンクトイン(LinkedIn)にて11月11日報告している。
マレラ氏は、JPモルガンのブロックチェーン事業部門のオニキス(Onyx)が同決済機能の提供を開始したと報告。
この機能により、リアルタイムでプログラム可能なトレジャリー機能と新しいデジタル・ビジネスモデル実現を目指すとのことだ。
「JPMコイン」のプログラマブル決済では、事前にプログラムされた設定条件に基づいて自動的に取引できるようになるという。いつでも瞬時に送金可能な点や手作業によるチェックや特定の時間や金額に対する常備注文の設定等が不要になるため、迅速な取引及び業務効率化が実現されるとのこと。また同機能は、延滞した支払いへの対応やマージンコールへの対応にも役立つとのことだ。
なおマレラ氏によれば、プログラマブル決済は現在の金利環境において企業の財務担当者にとってはメリットが多いと指摘。金利が増えればより多くの預金収入を得ることができる可能性があることを示唆した。
マレラ氏は、今回のサービス開始がJPMコインの進化における重要なマイルストーンになるとし、新たに導入されたプログラマビリティ(資金や証券が流通する際の挙動をコンピュータプログラムで制御し自動化できる性質)を同社のブロックチェーンプラットフォームの「聖杯」と表現している。
またマレラ氏はブルームバーグでのインタビューにて、ドイツの大手テクノロジー企業のシーメンス(Siemens)が、同システムを活用し、口座に不足分を送金するよう設定したことを明かした。
また、今後数週間のうちに、国際総合貨物輸送会社フェデックス(FedEx)と米穀物商社カーギル(Cargill)の2社がこの機能を利用する予定とのことだ。
JPMコインについて
「JPMコイン」はJPモルガンのブロックチェーンプラットフォームである「オニキス(Onyx)」の「Coin Systems(コインシステム)」の一部で、2019年立ち上げの企業間決済に特化したデジタル通貨だ。
「JPMコイン」により大手多国籍企業などのホールセール(金融機関などの大口業務)顧客は、世界中のJPモルガンの様々な口座間でドルやユーロの送金実施や、ブロックチェーンを使って同行の他の顧客に支払いが行える。また「JPMコイン」での決済は、常時稼働しており、迅速な支払いが可能であるという。
JPモルガンのペイメント・グローバル責任者であるタキス・ゲオルガコプロス(Takis Georgakopoulos)氏は10月、ブルームバーグTVのインタビューにて「JPMコイン」が、毎日10億ドル(約1,502億円)相当の取引を処理していることを明かしている。
なおJPモルガンでは日々、約10兆ドル(約1510兆円)もの決済が行われていると報じられているため、JPMコインの拡大の余地はまだまだありそうだ。
オニキスについて
「オニキス」はJPモルガンが2020年に設立した銀行主導型ブロックチェーン・プラットフォームだ。
「オニキス」の基盤技術には、イーサリアムのエンタープライズ向けブロックチェーン「クオーラム(Quorum)」が採用されている。ちなみに「クオーラム」は元々JPモルガンが開発していたブロックチェーンだが、2020年8月に米ブロックチェーンソフトウェア会社のコンセンシス(ConsenSys)が買収し、現在は同社が「クオーラム」のサービス提供を行っている。
JPモルガンは6月、インドの銀行6行と提携し、同国の国際金融ハブ「ギフトシティー」にて銀行間ドル取引を決済する為のブロックチェーンプラットフォームを導入したと発表。
この取り組みは、「オニキス」を使用して試験プロジェクトが実施されるとのことであった。
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参考:リンクトイン・ブルームバーグ
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