日立がブロックチェーン活用でJクレジットのデジタル化
日立製作所が、J-クレジットの認証・発行プロセスのデジタル化に向けた、11月からの本格実証の開始予定を10月30日発表した。
この実証では、太陽光発電を対象に、日立の「サステナブルファイナンスプラットフォーム」の一部を適用し、IoTセンサーなどを使ったデータ収集から、ブロックチェーンを使ったデータの検証、J-クレジットの認証・発行まで、一連のプロセスのデジタル化に関する効果検証を行うという。11月から実機システムを使って本格的な実証を行い、2024年3月までに実証効果の整理と実運用に向けた計画の検討を行う予定とのことだ。
J-クレジットは、再生可能エネルギーの活用などによる温室効果ガスの排出削減・吸収量をカーボン・クレジットとして国が認証するもの。市場での取引や報告書への活用が可能である。
日立によると、J-クレジットの認証・発行に必要となる温室効果ガスの排出削減・吸収量の計測や算定、検証は人手で行っており、膨大な時間と手間がかかるため、特に中小企業や一般家庭での活用に伸び悩んでいるという課題があったとのこと。そのためIoTやブロックチェーンなどデジタル技術を活用した、J-クレジットの認証・発行の簡易化が求められているとのことだ。
なお同実証は、環境省の「令和5年度 J-クレジット制度に係るデジタル技術活用に向けた調査検討委託業務」の委託事業者であるデロイトトーマツコンサルティングの協力事業者に日立が採択され、取り組むとのことだ。
日立は、今年6月に日本取引所グループ(JPX)が国内初のブロックチェーンを用いて発行した「デジタル環境債」のシステムの一部を開発しており、日立の「サステナブルファイナンスプラットフォーム」の「グリーン・トラッキング・ハブ」を適用することで、投資家のグリーン投資をもとに建設した再生可能エネルギー発電設備のCO2削減に関するデータを記録・管理している。
今回日立は、このような稼働実績のある「グリーン・トラッキング・ハブ」をもとに、J-クレジットの認証・発行のデジタル化に向けて、対象設備のデータ収集・検証・報告を簡易化する基盤(簡易創出基盤)を構築したとのこと。
具体的に同基盤は、IoTセンサーで計測した発電量をもとにCO2削減量の測定・算定するほか、ブロックチェーン上への記録や、J-クレジット登録簿システムへのデータ連携まで、自動的に行うという。
また日立は昨年9月~今年1月にて、東京証券取引所が実施したカーボン・クレジット市場の実証事業(試行取引)における取引システムを、日本取引所グループ傘下のJPX総研とともに共同開発。今月10月より東京証券取引所は常設のカーボン・クレジット市場を開設しており、引き続き同取引システムを利用している。
日立はこのカーボン・クレジット市場のシステム開発を通じて把握した供給者・需要者のニーズをもとに、今後、太陽光発電以外の再生エネルギー設備・森林など連携することで対象とする方法論を拡大していくという。
またその他にも日立は、プロジェクトの実施場所・温室効果ガスの排出削減・吸収量のモニタリング情報など、さまざまな属性情報を需要者が確認できるようにし、カーボン・クレジットの透明性をさらに向上させることで、利便性の向上に貢献していくと述べている。
なお「あたらしい経済」編集部は、日立製作所へ今回の取り組みにて採用しているブロックチェーン基盤について問い合わせをしている。これについて回答が得られ次第、この記事に追記する予定だ。
以下、2023.10.30 17:00追記
「あたらしい経済」編集部が日立製作所へ取材したところ「グリーン・トラッキング・ ハブ」には、エンタープライズ向けブロックチェーンである「Hyperledger Fabric(ハイパーレジャーファブリック)」を採用しているとの回答を得た。
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参考:日立製作所
デザイン:一本寿和
images:iStocks/FeelPic