米財務省がトルネードキャッシュ創設者らを起訴、米司法省は逮捕へ、マネロンなど共謀の罪で

両機関が併せて起訴へ

米財務省外国資産管理局(OFAC)と米司法省(DOJ)が、トルネードキャッシュ(Tornado Cash)の共同創設者2名を起訴したと8月23日発表した。

発表によればOFACが、トルネードキャッシュ(Tornado Cash)の共同創設者の1人であるロマン・セメノフ(Roman Semenov)氏を北朝鮮に関連するハッカー集団「ラザルス(Lazarus)」に物質的支援を提供する役割を果たしたとして起訴。

またODJは、セメノフ氏及び同社の2人目の共同創設者であるローマン・ストーム(Roman Storm)氏をマネーロンダリングの共謀、無認可送金業の共謀、制裁違反の共謀で起訴している。

OFACはセメノフ氏に制裁処分課す

発表にて、ウォーリー・アデイモ(Wally Adeyemo)財務副長官は、「ラザルスが金正恩政権の利益のために数億ドル相当の盗んだ暗号資産をミキシング・サービスを通じ資金洗浄していることを知っていたにもかかわらず、トルネードキャッシュの創設者たちはサービスの開発と宣伝を続け、不正な目的での使用を減らすための有意義な措置を取らなかった」と指摘した。

またOFACはセメノフ氏を特別指定国民(SDN)リストに追加。セメノフ氏の複数のメールアドレスとイーサリアムウォレットアドレスを開示した。

なおSDNリストは、米国の安全保障を脅かすこと等を理由にOFACにより規制対象として指定された個人・団体(および財産)を掲載したリストだ。

このリストにより、該当する資産は確実にブロックされることになる。米国人はそれら対象者との取引やビジネスは禁じられており、もし取引を行う者は、自らも指定の対象となる可能性があるとOFACは付け加えている。

ODJはストーム氏を逮捕

ODJの発表によれば、トルネードキャッシュは10億ドル以上の犯罪収益の資金洗浄を行い、その中には「ラザルス」による犯罪収益も含まれるという。これらのことからトルネードキャッシュは米国の制裁に違反したとのことだ。なおストーム氏は同日、連邦捜査局(FBI)と内国歳入庁犯罪捜査部(IRS)によりワシントンにて逮捕されたが、セメノフ氏はいまだ逃走中だという。

ニューヨーク州南部地区連邦検事のダミアン・ウィリアムズ(Damian Williams)氏は「ストーム氏とセメノフ氏は技術的に洗練されたプライバシー・サービスを提供していると公言しながら、実際にはハッカーや詐欺師による犯罪の実益隠蔽の手助けをしていることを知っていた」と述べ、「このようなマネーロンダリングに関与した者は訴追の対象となる」と続けた。

また司法長官のメリック・B・ガーランド(Merrick B. Garland)氏は「これらの告発は、暗号資産ミキサーを含め、犯罪の隠蔽や、身元を隠すために暗号資産に頼ることができると考えている人々に対する新たな警告となるはずだ。それらのスキームがどれほど洗練されていようと、自身を匿名化するためにどれほど試行錯誤していようと、司法省は必ずそれらを見つけ出し、犯罪の責任を追及するだろう」と強調した。

トルネードキャッシュについて

トルネードキャッシュは、複数ユーザーの暗号資産(仮想通貨)の取引をミキシングすることで、その取引履歴を匿名化できるサービスだ。

その特性をサイバー犯罪に関与した資産のロンダリングに利用されていることが問題視されていた。昨年3月には、北朝鮮のハッカー集団「ラザルス」がトルネードキャッシュを利用してサイバー攻撃で得た資産をミキシングし、当局の追跡を困難にしていた。

これらの事実から昨年8月にOFACは「財産および財産上の利益がブロックされている人物である北朝鮮政府に対して、実質的に支援を提供した」としてトルネードキャッシュを制裁対象に加えた。

3人目の共同創設者について

なお3人目の共同創設者兼トルネードキャッシュ開発者のアレクセイ・ペルツェフ(Alexey Pertsev)氏は、2022年8月にオランダ警察によって逮捕されている。ペルツェフ氏は逮捕後約90日間の勾留を経て、2022年11月にマネーロンダリングの容疑で起訴された。

同氏は審問のため、オランダに長く勾留されたが、今年4月、帰国が許可され、自宅から裁判を待つことが報じられていた。

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参考:米財務省米司法省
デザイン:一本寿和
images:iStocks/ArtemisDiana

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

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