フィンテック革新には業界連携が重要
シンガポール金融管理局(MAS)が、「金融セクター技術イノベーション・スキーム3.0(FSTI3.0)」に基づき、3年間で最大1億5,000万シンガポールドル(約159.3億円)を拠出すると8月7日発表した。
「金融セクター技術イノベーション・スキーム」とは、金融機関のイノベーション活動を支援するためにMASが2015年6月に導入した計画だ。FSTI1.0と2.0では、新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)のパンデミックを通じて金融機関と顧客にサービスを提供した金融機関のデジタル能力強化に貢献した実績を持つという。
FSTI3.0では、最先端技術の利用や地域的な結びつきを伴うプロジェクトを支援し、イノベーションを加速・強化することを目指すという。
web3を含む新興技術から生まれる革新的なフィンテックソリューション支援には、業界と提携することが重要だと認識するMASは、「業界のユースケースにおける革新的な技術の使用について公募を行い」、助成金を提供すると述べている。
FSTI3.0について
なおFSTI3.0は次の3つのコースで構成されるとのことだ。
1つ目の「強化されたセンター・オブ・エクセレンス・トラック(Enhanced Centre of Excellence track)」では、前身のコースから助成金の対象範囲を拡大し、コーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)事業体までをカバーするという。この助成金によりCVCは、新興企業が規模を拡大し、弾力的で実行可能なビジネスモデルを開発できるよう、強力な指導と支援を提供できるようになるとのこと。
2つ目は「イノベーション・アクセラレーション・トラック(Innovation Acceleration track)」だ。同コースでは業界のユースケースにおける革新的な技術の利用について公募を行うという。なお助成金は、実際の試験と商業化を支援するために提供される予定だ。
そして3つ目は「環境・社会・ガバナンス(ESG)フィンテックトラック(Environmental, Social and Governance (ESG) FinTech track )」である。このコースでは、ESGフィンテック・ソリューションの採用を促進するため、金融セクターのESGデータ、報告、分析のニーズに対応するプロジェクトの開発と展開を支援することを目的とし、1プロジェクトあたり50万シンガポールドル(約5,311万円)を上限として、適格経費の最大50%を資金援助するという。
FSTI3.0では、人工知能とデータ分析(AIDA)、規制技術(RegTech)などの主要分野における高度な能力開発と採用を引き続き支援していくという。具体的には、中小金融機関におけるAIDAの採用促進やRegTechソリューションの取得を検討しているデジタル成熟度の低い企業の支援に重点を置くとのことだ。
またFSTI3.0は、シンガポール国内のフィンテック人材プールを強化するため、各コースを通じ、申請者に人材育成にリソースを割くことを求めるとのことだ。
関連ニュース
- シンガポール金融管理局、デジタル資産の保管分離義務化へ
- シンガポール金融管理局、暗号資産取引業者への規制強化案発表
- 金融庁、シンガポール金融管理局の「プロジェクト・ガーディアン」にオブザーバーとして参加
- シンガポールDBS銀、中銀デジタル通貨を政府補助金に活用する運用試験開始
- グーグルクラウド、「Google for Startups Cloud Program」にweb3プログラム追加
参考:MAS
デザイン:一本寿和
images:iStocks/efired