2030年までに24の中央銀行がデジタル通貨を導入=BIS調査
国際決済銀行(BIS)が7月10日に発表した調査結果によると、新興国および先進国の中央銀行20数行は、10年後までにデジタル通貨を流通させる見込みだという。
現金離れが加速する中、世界各国の中央銀行はデジタル決済を民間部門に委ねることを避けるため、自国通貨のリテール(小売)向けデジタル版を研究・開発している。また金融機関同士の取引のためのホールセール(金融機関などの大口業務)版のデジタル通貨を検討している中央銀行もある。
BISが2022年後半に実施した86の中央銀行を対象とした調査では、新しい中央銀行デジタル通貨(CBDC)のほとんどがリテール分野で登場し、バハマ・東カリブ海諸国・ジャマイカ・ナイジェリアなど、すでに稼働しているデジタル・リテール通貨に11の中央銀行が加わる可能性があると報告されている。
またトークン化によって金融機関が新たな機能を利用できるようになるホールセール版では、9つの中央銀行がCBDCを立ち上げる可能性があるとBISは述べている。
「クロスボーダー(国際間)決済の強化は、中央銀行がホールセールCBDCに取り組む重要な原動力の一つである」と報告書には記載されている。
スイス国立銀行は6月下旬、試験的な取り組みの一環として、スイスのデジタル取引所でホールセールCBDCを発行すると発表した。その一方で欧州中央銀行は2028年の開始を目指し、デジタル・ユーロの試験運用を開始する予定だ。
また中国でのデジタル通貨の試験運用の対象は現在2億6000万人に達しており、インドとブラジルの2つの新興国も来年デジタル通貨を開始する予定だ。
またBISは、調査対象の中央銀行のうち、何らかの形でCBDCに携わっている銀行の割合は93%に上昇しているとし、60%がステーブルコインやその他の暗号資産(仮想通貨)の出現がその業務を加速させたと回答していると述べた。
この1年半の間に暗号資産市場では混乱が見られた。昨年5月には、資産裏付けのないステーブルコイン「TerraUSD」の破綻、11月には大手暗号資産取引所のFTXが破綻。続けて暗号資産プロバイダーにサービスを提供していたシリコンバレー銀行やシグネチャー銀行といった銀行の倒産があった。
こうした動きは伝統的な金融市場には大きな影響を与えなかったが、複数の暗号資産には売却をもたらす結果となった。 BISの調査結果によれば、回答者の管轄地域の中央銀行やその他機関が最近、消費者・企業におけるステーブルコイン及びその他の暗号資産の利用状況について調査を行ったという。なお同報告は、回答者の約40%によって報告された。
「決済に広く使用されれば、ステーブルコインを含む暗号資産は金融の安定性に対する脅威となる可能性がある」とBISの報告書は述べている。
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※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
Twenty-four central banks will have digital currencies by 2030 – BIS survey
Reporting by Karin Strohecker; Editing by Mark Potter
翻訳:大津賀新也(あたらしい経済)
images:Reuters