三井住友信託銀とソニー銀がローン債権をデジタル証券化
三井住友信託銀行が、ローン債権等を裏付資産とするセキュリティトークン(デジタル証券/ST)を発行することを7月4日発表した。
このSTの公募は、ソニー銀行が担当するとのこと。なおSecuritize Japan(セキュリタイズジャパン)提供のSTプラットフォームを活用して発行および公募が行われるという。
なお今回のST発行にあたり同プラットフォームでは、エンタープライズ向けのプライベート/コンソーシアム型ブロックチェーン基盤「クオーラム(Quorum)」を採用していることが、セキュリタイズジャパン担当者より確認が取れている。
なおセキュリタイズのプラットフォームでは、イーサリアム(Ethereum)やポリゴン(Polygon)、アバランチ(Avalanche)などのパブリックブロックチェーンにも対応しているが、今回は「クオーラム」が選択されたとのことだ。
発表によると今回のSTは、ソニー銀行が保有する投資用マンションローン債権などを裏付けとした信託受益権を運用資産とする「合同運用指定金銭信託」を組成し、その信託を裏付資産にして発行をしているとのこと。
このような合同運用指定金銭信託受益権のST化および銀行によるSTの販売は、本邦初の取り組みとなると説明されている。
2020年5月金融商品取引法改正以降、国内におけるSTは、新しい資金調達方法として主に「社債」や「不動産」を裏付けとした投資商品として、「証券会社による公募」または「発行会社による自己募集」の形で販売されてきた。
これまでとは異なり今回の取り組みでは、ソニー銀行が保有するローン債権等の信託受益権を運用資産とする「合同運用指定金銭信託」を裏付けとしたSTを、三井住友信託銀行が組成・発行し、それをソニー銀行が有価証券関連業務の一部を行うことができる「登録金融機関」として、同STの販売を担当する形になっている。
本デジタル証券の概要
前述したとおり、今回のSTの投資対象資産は「ソニー銀行が保有する投資用マンションローン債権などを裏付けとした信託受益権」となっている。発行価格総額は1億円で、発行価格は1口10万円。申込単位は1口以上1口単位で、1名あたり最大10口まで申し込みが可能である。
また運用期間は1年で予定配当率は税引き前で0.3%。申込対象は、ソニー銀行に預金口座を保有する20歳以上75歳未満の同行顧客とのこと。
なお同STの公募開始日については、現状では未公開のようだ。
三井住友信託銀行の過去のSTへの取り組み
三井住友信託銀行は2021年3月、セキュリタイズのプラットフォームを利用した日本国内初の証券化商品を裏付けとするセキュリティトークンを発行する試験的取組を行っていた。
昨年9月に同行は、三井物産デジタル・アセットマネジメント(MDM)、野村證券、BOOSTRY(ブーストリー)と共に、不動産を裏付け資産とするセキュリティ・トークン(ST)の発行および公募に関して協業。同4社は「不動産のデジタル証券~ALTERNAレジデンス 銀座・代官山~(譲渡制限付)」の発行と公募を行った。
なお、このSTの証券情報・取引情報は、BOOSTRYが開発を主導するコンソーシアム型ブロックチェーン基盤「ibet for Fin」を用いて管理を行うとしていた。
また昨年12月に三井住友信託銀行は、三菱UFJ信託銀行、みずほ信託銀行、三井住友フィナンシャルグループ、SBI PTSホールディングス、JPX総研、エヌ・ティ・ティ・デーと共に、デジタルアセット全般の発行・管理基盤「Progmat(プログマ)」の開発・提供と、「デジタルアセット共創コンソーシアム」の運営を担う、合弁会社の設立に向けた共同検討を開始している。
この合弁会社は同7社により「株式会社Progmat」として今年の9月以降に設立が予定されている。
STOとは
STOとは、発行会社が従来の株式や社債等に代わり、ブロックチェーン等の電子的手段を用いて発行するトークンに株式や社債等を表示する「セキュリティトークン(ST)」で資金を調達するスキームだ。2020年5月1日の金融商品取引法改正及び関連する政省令の改正施行により「電子記録移転有価証券表示権利等」として規定され、法令に準拠した取扱いが可能となっている。
これによりセキュリティトークンは「電子記録移転権利」と規定され(金商法2条3項)、金融機関での取り扱いが可能になっている。
ただし金商法に該当しないセキュリティトークンとして、「不動産特定共同事業法に基づく出資持分をトークン化したもの」や会員権などの「アセットの権利をトークン化したもの」も定義されている。
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参考:三井住友信託銀行
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