IOSCOが国際的な取り組みを提案
証券監督者国際機構(IOSCO:イオスコ)が、暗号資産(仮想通貨)とデジタル市場の規制に関する初となる世界的なアプローチを5月23日発表した。
IOSCOのこの取り組みは、昨年の大手暗号資産取引所FTXの破綻の教訓を生かし、消費者保護に対する懸念が高まったためだ。
通常、マネーロンダリング防止検査にのみ準拠する必要がある業界は、様々な管轄区域が独自ルールに従っているため、規制へのグローバルなアプローチ(取り組み)を求めている。
この動きは暗号資産取引所FTXが昨年11月、流動性危機を受け米国で破産手続きを開始したことを受けてのものだ。
IOSCOは、FTXのような、多くの活動をまとめ、顧客資産に対する保護措置がほとんどない暗号資産に関連する「コングロマリット(企業体)」には、利益相反を阻止するための規制が必要だと、世界中の規制当局の介入を促した。
IOSCOの議長を務めるジャン=ポール・セルヴェ(Jean-Paul Servais)氏は、「この計画は、ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産によるリスクに取り組む上で転機となるものだ」と述べている。
また同氏は記者会見にて、「暗号資産ビジネスは欠陥のある土台の上で成長することが許されており、それを修正する必要がある」とも述べている。
IOSCOが提案した基準は、利益相反への対処、市場操作、国境を越えた規制協力、カストディ、運用リスク、リテール(小売)顧客への扱いをカバーしている。
英国の金融行動監視機構(FAC)のデジタル資産担当ディレクターであるマシュー・ロング(Matthew Long)氏は、「昨今の世界的な出来事から、なぜこの取り組みが必要なのかが明らかになった。これは、暗号資産が市場にとって安全であることを確かめるためのものだ」と述べている。
クロール(Kroll)社のブロックチェーン・暗号資産ソリューションのグローバルリーダーを務めるハイドン・ジョーンズ(Haydn Jones)氏は、IOSCOのような枠組みは犯罪行為を防止し、誰もが暗号資産の基盤となるテクノロジー(ブロックチェーン)から利益を得ることができると述べた。
計画されている18の措置は、暗号資産取引の様々なパートで利益相反を排除するために、主流市場で長年にわたって確立されたセーフガードを適用するものだ。
IOSCOは、年末までに基準を確定することを目標としている。またこの基準により、世界130カ国の加盟企業がこの基準を用いて各自のルールブックの隙間を埋めることで、規制の断片化や企業が規制当局と駆け引きしあうことを排除したいと考えている。
IOSCOは、米国証券取引委員会、日本の金融庁、英国の金融行動監視機構、ドイツ連邦金融監督庁(BaFin)などの規制当局の傘下団体で、規制に関する世論調査を行っている。
この措置は、欧州連合(EU)が今月、世界初の包括的なルールを決定したことに続くもので、英国や米国、その他の国々が独自の規範を打ち出すよう圧力をかけている。
夏の終わりには、IOSCOが分散型金融を規制するための勧告を発表する予定だ。
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※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
Watchdog proposes first set of global rules for crypto sector By Huw Jones
Reporting by Huw Jones; Editing by Clarence Fernandez
翻訳:髙橋知里(あたらしい経済)
images:Reuters