米インサイダー取引事件で禁固2年の判決
米コインベース・グローバル(Coinbase Global)の元プロダクトマネージャーのイシャン・ワヒ(Ishan Wahi)氏が、2年間の禁固刑を5月9日下された。その罪状は、米国検察当局が「暗号資産(仮想通貨)に関わる初のインサイダー取引事件」と呼ぶ出来事についてだ。
今回の判決は、ロレッタ・プレスカ(Loretta Preska)連邦地裁判事によってマンハッタン連邦裁判所にて下された。なおイシャン・ワヒ氏は2月8日に電子詐欺の共謀罪2件を認めている。
プレスカ判事は判決公判にて、この計画はコインベースの信頼に対する「大規模な乱用」であると述べ、それを隠蔽しようとしたことは、ワヒ氏と共謀者らが、自らの行為が間違ったものであることを知っていたことを示していると付け加えた。
この事件は、ニューヨークの米検察当局が提起した「話題の暗号資産関連事件」の1つだ。「話題の暗号資産関連事件」にはFTXの創設者サム・バンクマン・フリード(Samuel Bankman-Fried:SBF)が関わった事件も含まれる。なおSBFは無罪を主張している。
検察によれば、イシャン・ワヒ氏は弟のニキル・ワヒ受刑者及びその友人のサミール・ラマニ(Sameer Ramani)氏とともに、コインベースの機密情報をもとに暗号資産の取引を行ったとされている。
イシャン・ワヒ氏ら3名は2021年6月から2022年4月にかけて、上場発表に先立ち55のデジタル資産を取引し、150万ドル(約2.2億円)を得たとされている。
ニキル・ワヒ受刑囚は昨年9月に電信送金詐欺の共謀罪を認め、今年1月に懲役10カ月を言い渡されている。なおラマニ氏はいまだ逃走中だ。
イシャン・ワヒ氏は5月9日の公聴会で、自身の行動と法廷にいた数名の友人、家族への影響について自責の念を示し、「私は生涯ついて回るような大きな過ちを犯してしまった」と述べたという。
連邦判事補のノア・ソロヴィエチク(Noah Solowiejczyk)氏は公聴会にて、イシャン・ワヒ氏の行為は「1回限りの過ち」ではなく、10カ月間にわたる一連の犯行であったと述べている。
イシャン・ワヒ氏は法廷文書にて、懲役刑がなかった他のインサイダー取引事件の例を引き合いに出し、弟の刑期より長くならないよう求めていた。
一方検察は、企業情報を悪用する他の暗号通貨インサイダーを抑止するため、イシャン・ワヒ氏に3年以上の懲役を課すよう求めていた。
検察は、関係する資産の種類に関係なく、金銭的な利益を求めるために欺瞞が用いられた場合、詐欺を告発する権利を有している。このため米国司法省は、証券市場の取り締まりに限定される民事部門の米証券取引委員会(SEC)よりも、暗号資産関連の不正行為を追及する幅が大きい。
なおこのインサイダー取引事件は、SECも同3名に対し起訴している。法廷文書では、イシャン・ワヒ氏とSECは、SECの起訴内容について解決することで基本合意に達した。またニキル・ワヒ受刑囚もSECと和解交渉中であることが明らかとなっている。
なおSECは同裁判をはじめとした訴訟等で、多くのデジタル資産が証券であることを主張。コインベースは、有価証券を上場していないと表明している。
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※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
Coinbase ex-manager sentenced to 2 years in prison in US insider trading case By Jody Godoy
Reporting by Jody Godoy and Luc Cohen in New York; Editing by Will Dunham
翻訳:髙橋知里(あたらしい経済)
images:Reuters