【取材】ゴム先物取引の受渡決済にブロックチェーン、日本証券クリアリング機構

JSCCがゴム先物取引の受渡決済にブロックチェーン実装

日本取引所グループ(JPX)の清算機関である日本証券クリアリング機構(JSCC)が、大阪取引所におけるゴム先物取引の受渡決済にブロックチェーン技術を実装したことを1月30日発表した。

この取り組みはJSCCによるブロックチェーン技術の活用第一弾として実施されたもの。なおこのゴム先物取引は、国際機関や生産国の公的機関により格付けされた最も標準的なRSS(くん煙シート)3号に該当する天然ゴムを対象とした先物取引とのことだ。

今回のブロックチェーン実装により、現状のゴム先物取引の受渡決済にて行われている、ゴムの引渡しを受けられる荷渡指図書と呼ばれる書面を授受する方式を、荷渡指図書の情報を記録したトークンをオンラインで授受して行う方式に移行したとのこと。

これにより、これまでゴムの受渡決済が行われる都度、売方・買方・倉庫会社の間で行われていた荷渡指図書の作成・輸送等が不要となり、オンラインで受渡決済が完了するため、受渡決済の効率化が進むとのことだ。

この取り組みは1月限月受渡分から開始するとのことで(受渡決済期日1月31日)、ゴムの受渡決済の売方・買方となる清算参加者、顧客、受渡対象のゴムを保管する倉庫業者ら計13社が利用するという。

また今後については、貴金属の先物取引の受渡決済に利用を拡大する見通しとのこと。JSCCによるとゴムよりも流動性の高い金・銀・白金などの貴金属の先物取引の受渡決済は、倉荷証券と呼ばれる有価証券を授受する方式で行われているとのこと。倉荷証券は荷渡指図書と異なり、有価証券として各種取引の担保にも利用されており、その電子化については、法制審議会において議論が行われる見込みであることから、状況を注視しつつ、次なるトークン化の対象として検討を行うとのことだ。

今回は取引所取引分野における本邦初の試みとしてトークンを活用することとなったというが、日本証券クリアリング機構では、今後より流動性の高い取引所取引や店頭取引の清算・決済分野においてもこうした新技術の活用が拡大していく可能性を視野に入れ、新技術の実用化を通じ決済効率の向上と将来への対応力強化を進めていくとのことだ。

日本取引所グループは昨年6月、ブロックチェーン基盤を活用した社債型セキュリティ・トークン「グリーン・デジタル・トラック・ボンド」を発行している。このデジタル債は日本取引所グループと日立製作所、野村證券、BOOSTRY(ブーストリー)の4社が開発を進めた、国内初のデジタルな仕組みを用いた環境債だ。

発行と管理のプラットフォームにはBOOSTRY開発のブロックチェーン基盤「ibet for Fin」が用いられた。なお「ibet for Fin」にはエンタープライズ向けブロックチェーン基盤「クオーラム(Quorum)」が採用されている。

「あたらしい経済」編集部は今回のJSCCによるゴム先物取引の受渡決済のブロックチェーン実装について、上記と同じく「ibet for Fin」が用いられたのかをJSCCに確認している。返答が得られ次第、この記事に追記させていただく予定だ。

以下2023.2.1 12:30追記

「あたらしい経済」編集部がJSCC担当者に取材したところ、今回の取り組みにて採用したブロックチェーンはエンタープライズ向けブロックチェーン「Hyperledger Besu(ハイパーレジャーベイス)」とのこと。

なお「Hyperledger Besu」は、Javaで記述されたオープンソースのイーサリアム(Ethereum)クライアントだ。イーサリアムのパブリックネットワークまたはプライベートの許可されたネットワーク、およびテストネットワークで実行が可能だ。

JSCC担当者によると、今回はERC-1400のトークン規格を利用しているとのこと。また「Hyperledger Besu」を選定した理由については、同クライアントがOSSであることからライセンスなしでシステム構築できるというコスト面とグローバル展開を見越した際の汎用性の高さなどからとのことだ。

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参考:JSCC
デザイン:一本寿和
images:iStock/sumkinna・TTStock

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大津賀新也

「あたらしい経済」編集部
記者・編集者
ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

「あたらしい経済」編集部
記者・編集者
ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

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