GenesisやCoindeskの親会社DCGの創業者、バリー・シルバート氏は何者か?

DCGの創業者、バリー・シルバート氏は何者か?

バリー・シルバート(Barry Silbert)氏は投資銀行家として、有名な企業のいくつもの倒産に携わった人物だ。現在はベンチャーキャピタル企業デジタルカレンシーグループ(Digital Currency Group)の創業者として、問題を抱えた暗号資産(仮想通貨)レンディング企業ジェネシス(Genesis)の親会社で、彼の原点となる倒産問題に関わっている。

シルバート氏はカリフォルニアの投資銀行フーリハン・ローキー(Houlihan Lokey)で、エンロン(Enron)やワールドコム(Worldcom)などの破綻処理に携わったという。同氏は、2011年の米上院銀行委員会で「複雑で問題の多いリストラクチャリングに取り組んだ経験は、非常に貴重なものだった」と語っている。

世界最大の暗号資産レンディング起業の一つであるジェネシス・グローバル・キャピタルは、1月20日に債権者から少なくとも34億ドルの負債を負った状態で、米国破産法を申請した。

これは暗号資産業界の主要企業の一連の倒産の最新事例となる。同社の破産手続きは今年の5月19日までに終了することを計画している。破産の申請は1月20日に行われた。

ヘッジファンドや資産運用会社などの金融機関に対して暗号資産仲介業務を行うジェネシスは、大手暗号資産取引所FTXの破綻を受けて「極端な市場の混乱と業界の信頼喪失」を理由に、昨年11月に融資部門の顧客出金を凍結していた。

ジェネシスにとって最大の顧客は、昨年7月に破産したシンガポールのヘッジファンド、スリー・アローズ・キャピタル(アルファベット表記)と、同じく破産手続き中のFTX創業者SBFのヘッジファンドであるアラメダ・リサーチ(アルファベット表記)だったと今月ロイターが報じている。

ジェネシスのトラブルは、シルバート氏とDCGがいつかウォーレン・バフェット(Warrent Buffett)氏のバークシャー・ハサウェイ(Berkshire Hathaway)のような金融コングロマリット企業になるという、2017年のインタビューでロイターに語った彼の野望にとって打撃となった。

DCGはコメントの要請にすぐには応じなかった。

アーリーアダプター

米国メリーランド州で育ったシルバート氏は、ビットコインのアーリーアダプターだった。

彼は2017年のインタビューでロイターに対し、ビットコインがニッチなインターネットブログ以外にはほとんど知られていなかった当時、1BTC=11ドルを支払って2012年に約17万5000ドル相当のBTCを購入したと語っている。

シルバート氏はその後、2015年にニューヨークでデジタル・カレンシー・グループ(DCG)を立ち上げ、後に会社をコネチカット州に移した。 

暗号資産の価格が高騰する中、DCGはベインキャピタル(Bain Capital)のベンチャーキャピタル部門、マスターカード(MasterCard)、ニューヨーク・ライフ・インシュアランス・カンパニー(New York Life Insurance Company)、カナダの銀行CIBCから資金調達した。

ベイン・キャピタルはコメントを拒否し、他の会社はコメントの要請に応じなかった。

DCGは、ジェネシスや暗号資産関連のニュースサイトであるコインデスク(Coindesk)から、ニューヨークに拠点を置く大手暗号資産管理会社グレースケール(Grayscale)まで35カ国以上で200社以上という圧倒的なポートフォリオを構築したと、今月株主に対してシルバートは伝えている。

また50以上の暗号資産ファンドやその他の関連プロジェクトに投資しているという。

他の著名な暗号資産長者とは異なり、シルバート氏は同業者に好まれる通常のツイートを避け、比較的目立たないようにしていた。また暗号資産が登場する以前から、金融取引の世界に深く入り込んでいた。

2004年、同氏は企業が私的取引の一環として発行する制限付き証券の取引プラットフォームであるリストリクティッドストックパートナーズ(Restricted Stock Partners)を設立している。フォーブス(Forbes)によれば、同社は拡大して2008年にセカンドマーケット(SecondMarket)に社名を変更し、2011年までに数十億ドルの私的市場取引を促進したという。

ナスダックは2015年にセカンドマーケットを非公開の金額で買収し、シルバート氏は同年、セカンドマーケットの暗号資産取引部門をジェネシストレーディングとして再スタートさせ、彼の成長中の暗号資産コングロマリットに組み入れた。

シルバートの現在の資産は不明だが、フォーブスは昨年、32億ドルと発表している。

シルバート氏は、ジェネシスが出金を停止して以来、暗号資産取引所ジェミナイの共同創設者が、投資家を誤解させ、悪意のある時間稼ぎ戦術に従事していると非難し、炎上している。ジェミナイはジェネシスと提携して暗号資産の利回り商品を提供し、ジェネシスは同社に9億ドルの債務があると述べている。

それについてジェネシスはコメントを控えた。今月初め、ジェネシスの広報担当者は、ジェミナイが当事者間で問題を議論している最中にもかかわらず、公のメディアキャンペーンを展開している ことに失望を表明していた。

ジェミナイのキャメロン・ウィンクルボス(Cameron Winklevoss )氏は、1月10日にツイッターに投稿した公開書簡で、DCGの取締役会がシルバート氏をCEOから解任し、新しいリーダーを据えるよう要求している。

この書簡には、「彼はDCGの経営にふさわしくない人物であり、債権者との間で公正かつ合理的な解決策を見出そうともせず、見出すこともできないことが証明された」とある。

シルバート氏も1月10日付の株主宛ての手紙の中で、「この1年は人生の中で最も困難な年であった」と伝えている。

またシルバート氏は「10年間、正しい方法で物事を行うことにこだわり、この会社とこの分野にすべてを注いできた私の誠実さと善意を疑われることは、大変辛かった」とも述べている。

※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
(Reporting by Tom Wilson in London and Hannah Lang in Washington; editing by Megan Davies, Kirsten Donovan)
images:Reuters

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竹田匡宏

兵庫県西宮市出身、早稲田大学人間科学部卒業。
「あたらしい経済」の編集者・記者。

兵庫県西宮市出身、早稲田大学人間科学部卒業。
「あたらしい経済」の編集者・記者。

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