MetaのCPOと『スノウ・クラッシュ』作家、メタバース語る
30年前に小説「スノウ・クラッシュ(Snowcrash)」でメタバースという言葉をはじめて使った作家ニール・スティーブンソン(Neal Stephenson)氏が、1月19日にメタバース構築に数十億ドルを投資している企業メタ(Meta)のCPOと会談した。
そしてメタバースが多くの人に普及するには、大きなハードルがあると同じ考えを示した。
ニール・スティーブンソンとメタの最高プロダクト責任者(CPO)であるクリス・コックス(Chris Cox)氏は、ヘッドマウント・デバイスに表示される没入型のメタバースを何百万人もの人々がシームレスに移動できるようにするために必要な、数々の工学的ブレークスルーを提示した。
コックス氏は世界経済フォーラムのパネルディスカッションで、50年前にマウスやその他のコンピュータの基本技術を開発したゼロックス・パルク社を例にあげて「私たちは、まさに初期バージョン、ゼロックス・パルク時代にいます」と伝えた。
SF小説を書くだけでなく、ロケットメーカーのブルーオリジンなどのテクノロジー企業でも働いてきたスティーブンソン氏は、「メタバースはまだ道半ばです。ここ2、3年の間に、すべてが一つになってきたんです」と話した。
コックス氏は「数十億ドルかけてメタバース用のソフトウェアとハードウェアを開発していますが、最大の問題の1つは、スピードとグラフィックスの質のトレードオフです」と伝えた。
そしてコックス氏は「例えば、コメディクラブのような仮想環境では、現実世界のおしゃべりや笑いの雰囲気を再現するために、多数のユーザーアバターをサポートする必要があります。しかし、アバターを操作する人の動きに合わせて更新していくには、高画質なグラフィックスを実現するための処理能力には限界があります」と述べた。
同氏はまさに今、メタバース上でコメディを表現できるかに挑戦しているところだという。
メタバースへの投資回収は10年
メタの最高経営責任者マーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)氏は、メタバースへの投資が回収されるまでには10年程度かかると予想しているという。
その頃には、現在ビデオ通話や音声通話をするのと同じように、メタバースでの友人や家族と気軽に散歩できるようになるだろうとコックス氏は言った。
メタは2022年1月から9月までにメタバース部門であるリアリティラボ(Reality Labs)で94億4000万ドルの損失を積み上げ、2023年にはその数字が大きく膨らむと予想されている。
その結果メタの株価は下落し、11,000人の雇用削減を決定する一因となった。
アバターに関連する服やその他のアイテムを保持したまま、異なるメタバースでの体験を流動的に移動できることは、スティーブンソン氏が設立したブロックチェーンアプリケーションの開発会社を通じて解決しようとしている課題である。
スティーブンソン氏は「メタバースは、ボトムアップで作られる分散型技術なのか、それとも一企業がトップダウンで作る技術なのかが重要な問題です」と伝えた。
そしてHPのCEOであるエンリケ・ロレス(Enrique Lores)氏は「よりオープンなメタバースが良いでしょう。もし誰かがメタバース全体をコントロールしたら、他の人が価値を加える能力はずっと小さくなってしまいます」と話した。
※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
(Reporting by Richard Baum; Editing by Alex Richardson)
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