Facebookの仮想通貨/ブロックチェーンプロジェクト「Libra」の詳細とその可能性の考察

Facebookの仮想通貨(暗号資産)/ブロックチェーンプロジェクト「Libra」発表

昨年の同社によるブロックチェーンエンジニアの採用あたりからいろいろな憶測やリーク情報が報道されていたFacebookの仮想通貨(暗号資産)/ブロックチェーンプロジェクトである「Libra」の詳細が、いよいよ明らかになった。

昨日このプロジェクトの詳細をまとめた公式サイトやホワイトペーパー、開発者向けのドキュメントが公開された。これを受けて世界中の大手メディアを始め、専門メディアや業界の識者たちが様々な記事やコメントを発表している。

それらの傾向として一般メディアはブロック技術の詳細などには触れず、業界のジャイアントであるフェイスブックが仮想通貨業界に参入した影響、今回が複数の大手企業と連携であること、メッセンジャーなどで支払いができるようになる、といったことが中心に取り上げられている。

一方ブロックチェーンの専門メディアや業界内の事業者などは、ホワイトペーパーの内容や技術的な詳細について解説している。また業界の識者などはfecebookの参入については好意的な印象ではあるものの、システムの内容や戦略方針に関して賛否両論のコメントが飛び交っている印象がある。

「あたらしい経済」としては、まずはこの「多くの人びとに力を与える、シンプルでグローバルな通貨と金融インフラになる」というミッションを掲げた「Libra」プロジェクトの詳細について記事とラジオ(音声)で解説し、編集部としてこのプロジェクトに感じる可能性についてお伝えしたい。

ステーブルコインを発行

まず「Libra」が発行する仮想通貨は通貨単位が「Libra」でボラティリティの低いステーブルコインとなる。

その価格はは実在する複数の法定通貨や国債などの資産のリザーブによる確実な裏付けされる。なおこのLibraリザーブは、長期的にLibraの価値を維持することを目的に運用されるとのことだ。

どのようにユーザーは使えるのか

Facebookは子会社のCalibraを設立し、同社が開発するデジタルウォレット「Calibra」でこの「Libra」を「WhatsApp」や「Messenger」を通して送金ができるようなるとのことだ。

独自チェーン「Libraブロックチェーン」

仮想通貨「Libra」の基盤として、そしてエコシステム実現のためスケーラビリティ、セキュリティ、ストレージとスループットの効率性、将来の適応性を優先しては独自ブロックチェーン「Libraブロックチェーン」を開発。

Libraブロックチェーンを実装するソフトウェアはオープンソースで誰もが開発を行うことができ、多くの人びとがこれを利用して金融ニーズを満たせるようになっている。なお「Libraブロックチェーン」にスマートコントラクトを実装するための新しいプログラミング言語「Move」が利用される。

またコンセンサスアルゴリズムにはLibraオリジナルのビザンチン・フォールト・トレランス(BFT)合意アプローチを使用される。これにより一部のバリデータノード(最大でネットワークの3分の1)で不正や不具合が起きても正常に機能するようにデザインされている。Libraブロックチェーンには匿名性があり、ユーザーは実世界の本人とリンクされていない1つ以上のアドレスを保有することができるとのこと。

運営主体である「Libra協会」

この「Libra」はスイスのジュネーブに独立したメンバー制の非営利団体「Libra協会」を設立して管理される。この協会の目的は、Libraネットワークとリザーブのガバナンスの枠組みを提供し調整すること、および金融包摂を促す社会的事業の助成金活動を支援すること。なおメンバーは、Libraブロックチェーンを運用するバリデータノードのネットワークから形成される。

初期メンバーは業界別に以下の通り。

・決済
Mastercard, PayPal, PayU (Naspers’ fintech arm), Stripe, Visa

・テクノロジー・マーケットプレイス
Booking Holdings, eBay, Facebook/Calibra, Farfetch, Lyft,Mercado Pago, Spotify AB, Uber Technologies, Inc.

・電気通信
Iliad, Vodafone Group

・ブロックチェーン
Anchorage, Bison Trails, Coinbase, Inc., Xapo Holdings Limited

・ベンチャーキャピタル
Andreessen Horowitz, Breakthrough Initiatives, Ribbit Capital,Thrive Capital, Union Square Ventures

・非営利組織、多国間組織、学術機関
Creative Destruction Lab, Kiva, Mercy Corps,Women’s World Banking

なおLibra協会のメンバーは、2020年前半に予定されている運用開始により、およそ100に増える見込みおtのこと。またFacebookは規制の関係で子会社Calibraを設立しこの協会の一員として参加する。なおこの協会の運営はLibraリザーブによる配当で賄われる。

分散化について

Facebookは、ソーシャルデータと財務データの分離を保証することと、Facebookの代わりにLibraネットワークをベースにしたサービスを開発・運営することを目的として、「Calibra」という規制対象子会社を設立し、Calibraとして協会のメンバーとなる。Libraネットワークの運用開始後は、Facebookとその関連会社の責任や、特権、財務上の義務は他の創立者と同等で、協会のガバナンスにおけるFacebookの役割も、協会のいちメンバーとして、他の多くのメンバーの役割と等しくしていくとのこと。

またLibraブロックチェーンは、バリデータノードを当初は「許可型」ブロックチェーンとしてスタートするが、Libraがオープンで常にユーザーの利益のために運用されることを保証するため、エコシステムの公開から5年以内にLibraネットワークを完全に「非許可型」にするという目標を掲げている。

Libraの今後

Libraは2020年前半に運用開始することを目標にしている。今後もlibra.orgを通じて情報公開をしていき、コードやLibraの初期テストネットを公開して、開発者が試用や開発を行えるようにしていく。またリザーブのグローバル管理機関の設立や、リザーブバスケットの構成を変更する方法に関するポリシーと手順決定、Libra協会のメンバーを世界中で拡大していくとのことだ。

今回の発表の要旨は以上だ(より詳しい情報は以下公式情報を参照ください)。

→Libra公式サイト / →ホワイトペーパー / →開発者向け情報

「Libra」がもたらす可能性

まだ私も「Libra」に関して深く技術的な部分を読み込めていないが、 第一印象として今回のFacebookのこの一手に関しては、非常に業界に与えるポジテ ィブなインパクトが大きいと感じている。

この仕組みに関して分散化されていないなどの意見も聞くが 、私としては既存のビジネスの巨人であるFacebookが、よくここまで中央集権性を緩める設計ができたと感じている。

そして何より期待したいのはFacebookと、このコンソーシアムに参加する企業の抱えるアカウントだ。ブロックチェーンがこの世界で動き出してから、ここまで巨大なユーザーにアプローチできる可能性を秘めたプロジェクトはなかったはずだ。

もちろんサービスとしては本当に利用されるのか、 ということは始まってみないと分からない。しかし、ブロックチェーンがマスアダプションする大きな一歩となる可能性を秘めた、「Libra」プロジェクトについては今後も目が離せないだろう。

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(images:iStock / artsstock)

この記事の著者・インタビューイ

設楽悠介

「あたらしい経済」編集長/幻冬舎コンテンツビジネス局局長
幻冬舎でブロックチェーン/暗号資産専門メディア「あたらしい経済」を創刊。同社コンテンツビジネス局で電子書籍事業や新規事業を担当。幻冬舎コミックスの取締役兼務。「Fukuoka Blockchain Alliance」ボードメンバー。福岡県飯塚市新産業創出産学官連携協議会委員。ポッドキャスターとして、Amazon Audible original番組「みんなのメンタールーム」や、SpotifyやAppleにてweb3専門番組「EXODUS」や「あたらしい経済ニュース、ビジネス系番組「二番経営」等を配信中。著書『畳み人という選択』(プレジデント社)。

「あたらしい経済」編集長/幻冬舎コンテンツビジネス局局長
幻冬舎でブロックチェーン/暗号資産専門メディア「あたらしい経済」を創刊。同社コンテンツビジネス局で電子書籍事業や新規事業を担当。幻冬舎コミックスの取締役兼務。「Fukuoka Blockchain Alliance」ボードメンバー。福岡県飯塚市新産業創出産学官連携協議会委員。ポッドキャスターとして、Amazon Audible original番組「みんなのメンタールーム」や、SpotifyやAppleにてweb3専門番組「EXODUS」や「あたらしい経済ニュース、ビジネス系番組「二番経営」等を配信中。著書『畳み人という選択』(プレジデント社)。

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