米中間選挙、暗号資産業界関係者が数百万ドル投じる

米中間選挙、暗号資産業界関係者が数百万ドル投じる

暗号資産(仮想通貨)業界は、米国中間選挙に数百万ドルを投じた。この1年間、暗号資産業界は大きな損失を出し、激変している。議会が暗号資産に対する規制強化を議論する中で、議員に影響力を与えたいと考えているからだ。

暗号資産業界のエバンジェリストたちは、2023年を規制の重要な年と見ており、議会は暗号資産関連商品と米ドルに固定された暗号資産の一種であるステーブルコインに関する立法を進展させると予想している。ゆえに暗号資産企業は業界に友好的な政治家候補の支援に意欲的だ。

今回の選挙は、暗号資産業界にとって混乱の時期に来ている。ビットコインの価格はピークから約70%急落し、投資家は暗号資産のリスクについて、より心配しており、11月8日には暗号資産大手のバイナンス(Binance)が、ライバル取引所のFTXの流動性をカバーするためにFTX US以外の組織を買うことに仮合意した。

中間選挙に資金を投入しているのは暗号資産関係者は誰か?

FTXのCEOであるサム・バンクマン・フリード(Sam Bankman-Fried)氏は、暗号資産業界の他のすべての人をはるかに凌駕して資金を投入している。政治系NPO団体のオープンシークレッツ(OpenSecrets)の最大個人献金者リストによると、彼の選挙運動への約4000万ドル(約58億円)の献金は、米国で6番目に大きな個人献金となっている。 政治系NPO団体オープンシークレッツによると、彼の支出の大部分は民主党の支援に使われたという。 なお11月8日にサム・バンクマン・フリード氏が発表したバイナンスとの取引は、暗号資産起業家にとって突然の運命の変化となった。

FTXの子会社のCEOであるライアン・サラメ(Ryan Salame)氏は、リストの中で14番目に大きな個人献金者であり、2360万ドル(約34億円)以上をすべて共和党に寄付している。その中にはウェストバージニア州の共和党議員アレックス・ムーネイ(Alex Mooney)氏のキャンペーンを支援する11,600ドルが含まれている。

FTXはロイター通信の取材に応じなかった為、これらの数字の正確性は確認できなかった。 トランプ大統領の元ホワイトハウス広報部長アンソニー・スカラムッチ(Anthony Scaramucci)氏が設立した暗号資産投資管理会社スカイブリッジ・キャピタル(Skybridge Capital)は今年、暗号資産関連のイノベーションを進めている米国の政治資金管理団体「スーパーパックス(Super PACs)」に10万ドルを寄付し、スカラムッチ氏本人も寄付している。

スカイブリッジの広報担当者は「人々はブロックチェーン技術の可能性を信じ、より多くの金融包摂を望んでおり、政策立案者に耳を傾けることを要求しています。だからこそ、スカイブリッジは暗号資産に、そしてそれと同じくらい重要な基盤となるブロックチェーン技術に大きな賭けをしたのです」と述べている。

どの候補者が暗号資産からお金を得ているのか?

暗号資産関連法の立法に関心を持った議員や、影響力のある委員会のリーダーは、暗号資産関連の団体「PAC」から現金を受け取っている。 米国最大の暗号資産関連の上場企業であるコインベース(Coinbase)とロビンフッド(Robinhood)の2社も「PAC」を持っており、連邦選挙委員会(FEC)のデータによると、中間選挙に向けてそれぞれ1万1000ドル以上、4万4000ドル以上を支出し、各社確認されている。

コインベース、ロビンフッド、業界団体Chamber of Digital Commerce(デジタル商工会議所)はいずれも、「PAC」がパトリック・マクヘンリー(Patrick McHenry)議員に寄付していたことが、FECの記録で明らかになった。共和党が下院の支配権を獲得した場合、下院金融委員会に所属する共和党のトップであるマクヘンリー氏が委員長に就任する可能性が高い。

デジタル商工会議所は、寄付についての確認の要請に応じなかった。 政治団体のCrypto Innovation Super PACは、広告やダイレクトメールキャンペーンの費用を負担して、マクヘンリー氏の再選キャンペーンを支援するために少なくとも16万7000ドルを費やした。同団体は、寄付の確認依頼に応じなかった。 連邦選挙委員会(FEC)の記録によると、コインベース、Chamber of Digital Commerce、暗号資産に特化したHODLpacは、上院財政委員会の民主党議長であるロン・ワイデン(Ron Wyden)上院議員に寄付をした。Crypto Innovation PACは、上院農業委員会の共和党トップであるジョン・ブーズマン(John Boozman)上院議員を支援するため356,000ドル以上を支出した

暗号資産業界は何を見返りに求めているのか?

暗号資産企業は、政策立案者が今後数カ月の間に暗号資産に関する法律を推進する中で、法律に影響を与えることを望んでいるかもしれない。 マクヘンリー氏と、現在下院金融サービス委員会の議長を務める民主党のマキシン・ウォーターズ(Maxine Waters)議員は、超党派のステーブルコイン法案をめぐって協議中だ。詳細はまだ決まっていないが、多くのアナリストはステーブルコインは議員にとって最も取り組みやすい暗号資産の問題であると考えているようだ。

サークルなどの暗号資産関連企業は、業界の成熟と消費者保護を成文化するために、議員にステーブルコインの枠組みを作ることを望んでいる。現在、ステーブルコインを監督する連邦規制当局は存在しない。 ブーズマン氏とスタベナウ(Stabenow)氏は、コリー・ブーカー(Cory Booker)上院議員、ジョン・ツーン(John Thune)上院議員とともに、暗号資産を規制する権限をCFTCに強化する超党派法案「2022年デジタル商品消費者保護法」を提出している。

暗号資産市場の情報プロバイダーのメサーリ(Messari)の創設者兼CEOであるライアン・セルキス(Ryan Selkis)氏のような暗号資産関係者は、分散型暗号取引所(DEX)に商品先物取引委員会(CFTC)への登録を義務付け、法案が分散型金融(DeFi)に存在意義をもたらすという懸念を表明している。

特にDeFi推進派、そしてより広範な暗号資産企業は、選挙寄付によって選挙の勝者に自分たちの主張を伝えることを期待していると思われる。

※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
(Reporting by Hannah Lang in Washington; Editing by Lananh Nguyen and Megan Davies and David Gregorio)
翻訳:竹田匡宏(あたらしい経済)
images:Reuters

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竹田匡宏

兵庫県西宮市出身、早稲田大学人間科学部卒業。
「あたらしい経済」の編集者・記者。

兵庫県西宮市出身、早稲田大学人間科学部卒業。
「あたらしい経済」の編集者・記者。

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