岐阜県恵那市で「脱炭素・経済循環システム」実証事業
岐阜県恵那市、日本ガイシ、リコー、IHIの4社が、ブロックチェーン活用の「脱炭素・経済循環システム」の実証事業を開始することを9月20日発表した。同実証事業は10月より開始するとのこと。
このシステムは、地域新電力会社の恵那電力の再生可能エネルギー(再エネ)による発電および売電事業を通じて恵那市が得た「環境価値」を「経済的に有償な価値(クレジット)」に変換し利用するという。
またこのシステムにより創出されたクレジットを恵那市内で活用し、市外からの資金還流を生み出す仕組みも構築し、地域経済の活性化、さらなる再エネ導入拡大のサイクルを回し、恵那市のゼロカーボンシティ実現への貢献を目指すとのことだ。
なお再エネの自家消費によるCO2削減などの「環境価値」を生成し取引する仕組みはこれまでもあったというが、データ収集や各種書類による申請など、アナログで煩雑な作業が発生し、手続きに時間がかかるという課題があったとのこと。今回の事業では、リコーとIHIのデジタル技術やIoT技術により、クレジット化までの手続きの効率化を図るとしている。
ちなみに「環境価値」とは、再エネ活用や省エネ化により、地球温暖化の原因の一つであるCO2排出量の削減に寄与することで与えられる付加価値のことだ。
なお今回の実証事業では「環境価値」を「クレジット」に変換することになるが、「環境価値」としてみなすためには、リコー開発のブロックチェーンを活用した「再エネ流通記録プラットフォーム」が用いられている。
日本ガイシとリコーは2022年4月から、恵那電力の再エネの発電から消費、そして余剰発電の電力貯蔵用NAS電池への充放電も含めたすべてのプロセスのトラッキング(追跡)を前述した「再エネ流通記録プラットフォーム」で行う実証事業に取り組んでいる。このプラットフォームにより、恵那市の公共施設で発電され自家消費された再エネ電力の消費はトラッキングされ、二酸化炭素(CO2)削減量として市が保有する「環境価値」としてみなされるというわけだ。
今回の実証ではこの「環境価値」を、IHI開発の「環境価値管理プラットフォーム」により「J-クレジット制度」を通して「クレジット化」するという流れになっている。
今回実証事業を行う4社は将来的に、この事業を通じて得た市外からの資金還流を原資として、さらなる再エネ導入や省エネ化の促進につなげ、環境価値を最大限活用した環境・経済の好循環スキームの確立を目指すとしている。
「あたらしい経済」編集部はIHIに対し、今回の実証事業に利用する2つのプラットフォームに採用されているブロックチェーン基盤について問い合わせを行っている。返答が得られ次第、この記事に追記させていただく予定だ。
以下2022.10.4追記
「あたらしい経済」編集部がIHIコーポレートコミュニケーション部に各プラットフォームで採用されているブロックチェーン基盤について確認を取ったところ、IHIの「環境価値管理プラットフォーム」ではエンタープライズ向けブロックチェーン基盤である「クーラム(Quorum)」を採用しているとのこと。
またリコーの「再エネ流通記録プラットフォーム」では、エンタープライズ向けブロックチェーン基盤の「ハイパーレジャーファブリック(Hyperledger Fabric)」が採用されているとのことだ。
なお両プラットフォームを用いた今回の「脱炭素・経済循環システム」で「環境価値」を「クレジット」化するにあたり、異なるブロックチェーンにおける相互運用性(インターオペラビリティ)について聞いたところ、「あくまで各社が担当する範囲のなかで証跡を残すための手段に過ぎず、今回の事において異なるブロックチェーン用いていることは、環境価値をクレジット化することに関係はありません」との回答を得た。
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参考:リコー
デザイン:一本寿和
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