米上院、気候変動規制と暗号資産監督体制についてSECのゲンスラー氏を追及
米証券取引委員会(SEC)のゲイリー・ゲンスラー(Gary Gensler)委員長は、上場企業の気候変動リスク情報開示の義務化と、暗号資産に関するSECの立場について9月15日に米上院銀行委員会(U.S. Senate Banking Committee)で意見を述べた。
通常の監督業務のために同委員会に出席したゲンスラー氏に対し、共和党はゲンスラー氏の政策に対する不満をぶつけた。共和党は、ゲンスラー氏が米国資本市場に対する攻撃的な政策を展開し、金融業界に対して敵対的な姿勢をとっていると主張している。
しかし、公聴会に先立って発表された事前声明の中で、ゲンスラー氏は、米国の資本市場が世界の「ゴールドスタンダード」であり続けるために、新しいルールが不可欠であると主張した。
民主党のシェロッド・ブラウン(Sherrod Brown)上院議員は、ゲンスラー氏の野心的な政策を称賛し、「ウォール街とその周辺が文句を言うということは、あなたが自分の仕事を遂行できているということです」と述べた。
共和党が特に懸念しているのは、上場企業に温室効果ガス排出量などの気候関連リスクの開示を義務付けるSEC規則の草案である。企業団体によると、これは負担が大きく、当局の権限を超えているとのことだ。
共和党のパット・トゥーミー(Pat Toomey)上院議員は、冒頭の発言で「投資家にとっては、情報そのものよりも、情報開示にかかるコストの方が重要だろう」と述べた。
また同氏は、環境保護庁の権限を抑制した最近の最高裁判決を踏まえ、SECは法的な問題に「神経質」になるべきだと警告し、一部の法律専門家は、気候変動規制に関するSECの権限が弱まっていると指摘した。
モンタナ州選出の民主党上院議員ジョン・テスター(Jon Tester)氏も、気候変動規制が農家などの中小企業に与える影響について懸念を示した。これは上場企業が気候変動リスク情報の開示を義務付けられることによって、そのサプライチェーンを構成する中小企業も巻き込まれる可能性があるためだ。
しかしゲンスラー氏は証言の中で、このルールは投資家にとって重要な問題でありながら、各企業がバラバラの枠組みの下で開示している情報に必要な明確性と一貫性を提供すると述べ、その後、当局がすべてのフィードバックを検討していることを付け加えた。
暗号資産にまつわる批判
共和党は、ゲンスラー氏が暗号資産の監視にタカ派的な姿勢を強めていると見て、同氏の監督体制に懸念を示している。
ゲンスラー氏は先週、暗号資産を扱う企業は複数のSEC登録が必要で、事業を別々の法人に分割する必要があるかもしれないと発言し、大きな話題となった。
このような「分割」は投資家保護を強化し、利益相反を防ぐことができるとゲンスラー氏は述べた。また、SECのスタッフは暗号資産市場への参入に関心を持つ従来の市場仲介者と協力しているとし、暗号資産の法案を作成する際に、既存の投資家保護を不用意に損なわないよう議会に促した。
一方でトゥーミー氏は、SECが暗号資産市場の規制の明確化に失敗したと主張した。暗号資産レンディングプラットフォームのセルシウス・ネットワーク(Celsius Network)とボイジャー・デジタル(Voyager Digital)が今夏に破綻し、数千人の個人顧客が資産にアクセスできなくなったことについて、SECは何も行動を起こさなかったと非難した。
ゲンスラー氏はまた、米国に上場する中国企業の監査に関する米中当局の最近の合意についても慎重な姿勢を示し、この合意は米国当局が実際に中国の監査人を完全に調査することが許される場合にのみ意味があると指摘した。
もしそうでないのならば、約200社が米国での取引制限に直面することになると警告している。
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※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
U.S. Senate grills SEC’s Gensler over climate rule, crypto stance; By Pete Schroeder and Michelle Price
翻訳:小俣淳平(あたらしい経済)
images:Reuters