複数の資産運用会社がファンド持分トークン化推進、暗号資産低迷の中で

複数の資産運用会社がファンド持分トークン化推進

暗号資産(仮想通貨)投資家は、ここ数カ月間、激しい暗号資産の値動きに耐えてきた。一方で、その基盤技術であるブロックチェーン技術を利用し、ファンドを一口サイズのユニット(トークン)に分割し、少額預金者に販売する準備を進めている資産運用会社は、この動きに動揺していない。

なおビットコインは、主要各国の中央銀行による積極的な利上げと超高インフレにより、投資家がハイリスク資産を手放したため、6月は1日で15%下落したのに続き、先週1日で数分の間に7.7%下落した。

暗号資産セクターは他の問題にも直面しており、レンディング企業セルシウス(Celsius)は今週、同社が先月倒産する前に数千万ドルの資産を失ったか、もしくは盗んだとして元投資マネージャーを訴えた。

一方でプライベートマーケットの投資企業であるハミルトン・レーン(Hamilton Lane)とパートナーズ・グループ(Partners Group)は、過去1年間にファンドをトークン化し、さらなる商品を検討していると伝えた。

この状況に詳しい関係者によると、主流の資産運用会社であるabrdnは今年中にトークン化したファンドを立ち上げることを希望しており、ライバルのSchrodersもこの分野に投資しているとのことだ。

このようなファンドでは、投資家に資金調達に参加する権利を与える証券の募集を通じてトークンが発行される。

ブロックチェーンを使えば、トークン(ファンドの端数)を安全に管理することができ、小口投資家がプライベートエクイティのような流動性の低い資産を購入するのに役立つと、支持者らは説明している。

コンサルタント会社オリバー・ワイマン(Oliver Wyman)のプリンシパルであるマグヌス・バークル(Magnus Burkl)氏は「プライベートマーケットで商品を顧客に提供し、その分野のリーダーとなる野心を持つすべての資産運用会社は、ブロックチェーン技術に注目するでしょう」と伝えている。

しかし潜在的な投資家の中には、ブロックチェーン技術と暗号資産との密接な関連性を警戒している人もいる。

ハミルトン・レーン(Hamilton Lane)のグローバル責任者であるフレッド・ショー(Fred Shaw)氏は「暗号資産とブロックチェーン技術は同じものではないことを投資家が理解できるよう支援してきた」と説明した。

同氏は「ブロックチェーンは基盤技術だが、暗号資産はブロックチェーンのユースケースの一つに過ぎません」と説明を加えた。

パートナーズグループの広報担当者は、トークン化と暗号資産の違いに対する理解が「徐々に向上している」と述べてる。

関連したリスク

昨年末に2つのS&Pインデックスに連動するトークン化ファンドを発売した投資プラットフォームのセキュリタイズ(Securitize)のCEOカルロス・ドミンゴ(Carlos Domingo)氏は「暗号資産市場の低迷により、米国のプライベートマーケット運用会社の顧客が今年初めに風評リスクを理由にトークン化ファンドの発売を見送ったが、現在は近々発売する予定だ」と伝えた。

流動性の低い資産にはリスクが伴うため、そのような資産に投資するファンドの多くはプロの投資家にのみ公開されており、最低投資額は1,000万ドル(約13.8億円)である。

なおブロックチェーン技術を利用することで、ファンドマネージャーは、初期費用の何分の一かの負担で、これらの資産の端数を提供することができるようになる。

しかし金融安定化理事会(FSB)は、これでは個人投資家が依然として流動性の低い資産に関連するリスクにさらされており、価格が下落した場合に迅速に撤退することが困難であると警告している。

またブロックチェーン技術は、資産運用会社と投資家の双方にとってコスト削減につながると専門家は伝えている。

ファンド管理者や証券取引所は、トークン化されたファンドの提供を容易にするために、市場インフラの改善を試みている。

ユーロネクストはルクセンブルクのトークン化プラットフォームであるトークニー(Tokeny)の株式を保有し、シンガポール取引所はパートナーズグループ(Partners Group)とハミルトン・レーン(Hamilton Lane)がトークンオファリングを開始したADDXの株式を保有している。

ロンドン証券取引所は、ファンドテクノロジー企業のファンドアドミンチェーン(FundAdminChain)と共同で、いくつかのトークン化されたファンドの試験運用を行っている。

ただ乗り越えなければならないハードルは残っており、法律事務所ポール・ハスティングス(Paul Hastings)のパートナーであるアルン・スリバスタバ(Arun Srivastava)氏は「規制当局は、トークン化されているかどうかにかかわらず、個人投資家が流動性の低い資産に投資することを認めない姿勢を続けるかもしれない」と述べている。

なお「ブロックチェーンプロダクトを開発しました」とファンドが言えば、暗号資産のトレンドに追いついているように聞こえるが、果たしていったいどうなのだろうか。

※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
(Reporting by Carolyn Cohn; Editing by Emelia Sithole-Matarise)
翻訳:竹田匡宏(あたらしい経済)

images:Reuters

関連するキーワード

この記事の著者・インタビューイ

竹田匡宏

兵庫県西宮市出身、早稲田大学人間科学部卒業。
「あたらしい経済」の編集者・記者。

兵庫県西宮市出身、早稲田大学人間科学部卒業。
「あたらしい経済」の編集者・記者。

合わせて読みたい記事

【12/18話題】メルカリがイーサリアム保有者に毎月ポイント付与、メタプラネットがビットコイン購入資金調達など(音声ニュース)

ブロックチェーン・仮想通貨(暗号資産)・フィンテックについてのニュース解説を「あたらしい経済」編集部が、平日毎日ポッドキャストでお届けします。Apple Podcast、Spotify、Voicyなどで配信中。ぜひとも各サービスでチャンネルをフォロー(購読登録)して、日々の情報収集にお役立てください。

Sponsored

米財務省、北朝鮮の暗号資産マネーロンダリングネットワークに制裁

米国財務省外国資産管理局(OFAC)が、北朝鮮に送金されたデジタル資産のマネーロンダリングに関わったとして、ルー・フアイン(Lu Huaying)氏とチャン・ジエン(Zhang Jian)氏、およびUAE拠点のグリーン・アルパイン・トレーディング社(Green Alpine Trading)に制裁を科したと12月17日に発表した

バイナンスのHODLer Airdropsで「1000CAT」と「PENGU」取り扱い開始、シードタグ銘柄として上場も

大手海外暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンス(Binance)が、エアドロップサービス「ホドラー・エアドロップ(HODLer Airdrops)」において、暗号資産(仮想通貨)「シモンズ・キャット:Simon's Cat(1000CAT)」および「プディー・ペンギンズ:Pudgy Penguins(PENGU)」を取り扱うことを12月16日に発表した